プレイアデス舞曲集(ぷれいあですぶきょくしゅう、英題:Pleiades Dances)は、吉松隆の作曲したピアノ独奏のための小品集。2017年時点で計9巻が書かれている。

概要 編集

第1巻である「I」は1986年に成立し、1987年3月に初演された。以降長期間にわたって断続的に書き継がれ、最新の「IX」は2001年に書かれた。既発表の全曲を田部京子が録音しており、I~Vの録音が行われて以降に書かれたVI~IXは全て田部に献呈されている。

プレアデス星団プレイアデス7姉妹)にちなんで、「虹の7つの色、いろいろな旋法の7つの音、3拍子から9拍子までの7つのリズム、などを素材にした『現代ピアノのための新しい形をした前奏曲集』への試み」として書かれた[1]。それぞれの曲は比較的簡素で薄いテクスチュアで書かれており、各種の教会旋法の利用や、頻繁な拍子の変更、ヨハン・ゼバスティアン・バッハインヴェンションを意識した[2]対位法的な書法が特徴的である。

なお、「V」と「VI」が書かれた中間にあたる1997年にこの連作への「補遺」として、「消えたプレイアードによせて」と副題のある小品「ピアノ・フォリオ」が書かれ、これも田部に献呈されている。

楽曲 編集

各巻は7曲ずつからなり、1曲ごとの演奏時間は1分~3分程度。吉松は「抜粋あるいは自由な組み合わせによる演奏も可能」としている[1]

また、ピアノ独奏以外の編成で演奏される場合もある。IIやIIIには別編成の異稿が作られており、VIIIは二十絃筝のための「すばるの七ツ」Op.78の編曲であるほか、演奏者の自由で打楽器を追加しての演奏も許容されている。

  • プレイアデス舞曲集 I Op.27 (1986)
  1. フローラル・ダンス
  2. ほぼ2声のインヴェンション
  3. アップル・シード・ダンス
  4. 水によせる間奏曲
  5. リーフレット・ダンス
  6. ほぼ3声のインヴェンション
  7. プラタナス・ダンス
  • プレイアデス舞曲集 II Op.28 (1987)
  1. 消極的な前奏曲
  2. 図式的なインヴェンション
  3. 線形のロマンス
  4. 鳥のいる間奏曲
  5. 断片的な舞曲
  6. 小さな乾いたフーガ
  7. 積極的なロンド
  • プレイアデス舞曲集 III Op.35 (1988)
  1. さりげない前奏曲
  2. 左寄りの舞曲
  3. 球形のロマンス
  4. 右寄りの舞曲
  5. 聖歌の聞こえる間奏曲
  6. 過去形のロマンス
  7. 多少華やかな円舞曲
  • プレイアデス舞曲集 IV Op.50 (1992)
  1. 前奏曲の記憶
  2. 静なる雨の雅歌
  3. 西に向かう舞曲
  4. 間奏曲の記憶
  5. 遠く暗い牧歌
  6. 東に向かう舞曲
  7. アレルヤの季節
  • プレイアデス舞曲集 V Op.51 (1992)
  1. 前奏曲の映像
  2. 暗い朝のパヴァーヌ
  3. 午後の舞曲
  4. 傾いた哀歌
  5. 夕暮れのアラベスク
  6. 真夜中のノエル
  7. ロンドの風景
  • プレイアデス舞曲集 VI Op.71 (1998)
  1. 小さな春への前奏曲
  2. 春の終わりのワルツ
  3. 夏のパストラル
  4. けだるい夏へのロマンス
  5. 秋の舟唄
  6. 冬のパストラル
  7. ロンド...春ふたたび
  • プレイアデス舞曲集 VII Op.76 (1999)
  1. 途切れた淡い前奏曲
  2. 静止した夢のパヴァーヌ
  3. 数え直しのワルツ
  4. 流動的なインベンション
  5. 遠い夢のロマンス
  6. 柔らかな時の舞曲
  7. 優しき風のロンド
  • プレイアデス舞曲集 VIII Op.78a (2000)
  1. 月のプレリュード
  2. 火のモデラート
  3. 水のアンダンテ
  4. 木のスケルツォ
  5. 金のアダージョ
  6. 土のアレグロ
  7. 日のポストリュード
  • プレイアデス舞曲集 IX Op.85 (2001)
  1. しなやかな前奏曲
  2. 水晶の小さなロマンス
  3. 穏やかな角度のワルツ
  4. 星降る夜の子守歌
  5. 放物線をしたロマンス
  6. 夢みるアラベスク
  7. フィナーレの風景

出典 編集

  1. ^ a b 吉松隆「序文」、『吉松隆:プレイアデス舞曲集 I II IIa』音楽之友社、2001。
  2. ^ 磯田健一郎 (1996). "プレイアデス舞曲集について". プレイアデス舞曲集 (Media notes). 田部京子. DENON. COCO-80115。

外部リンク 編集