プロコンスル学名Proconsul)とは、霊長目ドリオピテクス科(プロコンスル科とも)に属するアフリカヌス(P. africanus)、ギトンガイ(P. gitongai)、マジョール(P. major)、メスワエ(P. meswae)の3種の総称であり、絶滅した化石霊長類とされる。いずれも東アフリカ中新世中期初頭の地層から化石が発見されており、4種とも外見上の尾を持たないという共通点が見られ、現在では人類チンパンジーの共通の祖先と考えられている。なお、以前プロコンスル属とされていたヘセロニ(P. heseloni)とニャンザエ(P. nyanzae)は、エケンボ英語版属に移された。

プロコンスル
プロコンスル
プロコンスル。
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
中新世
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
: 霊長目 Primate
亜目 : 直鼻猿亜目 Haplorhini
下目 : 狭鼻下目 Catarrhini
上科 : ヒト上科 Hominoidea
: プロコンスル科 Proconsulidae
: プロコンスル属 Proconsul
学名
Proconsul
  • Proconsul africanus
  • Proconsul gitongai
  • Proconsul major
  • Proconsul meswae

発見 編集

1948年古人類学者のリーキー夫妻によって東アフリカ、ビクトリア湖に浮かぶルシンガ島の中新世の地層から化石が発見された。その後、湖岸地帯からも多くの獣骨に混じって化石骨が見つかり、詳しく研究された結果、チンパンジーの祖先と考えられるようになった。形態学的に見てP. majorからゴリラが、P. africanusからチンパンジーが派生したとされている。学名の由来は、ロンドン動物園にいた“コンスル”と呼ばれていたチンパンジーの名に、「先祖」という意味をこめてラテン語の 「pro」(それ以前の)という接頭辞を付けたとされる。

なお、“コンスル”とは、古代ローマの最高公職「執政官」をあらわす役職名であるが、これに前記接頭辞「pro」を付した「プロコンスル」(前執政官)も、執政官経験者等に対し、執政官相当の軍事指揮権等を付与する場合の役職名である。

特徴 編集

アフリカヌスの身長は70cm程度、体重10Kg程度で、チンパンジーよりやや小さい。樹上生活をしていたとされる。現生及び化石の類人猿や古人類に特徴的な形質である眼窩上隆起は無く、また下顎骨の内側(舌側面)には、やはり類人猿や初期人類では普通に見られる隆起(「サルの棚」と呼ばれるもの)が無い。しかし犬歯は鋭く、下顎の第1小臼歯の咬頭は1個しかない(人類は2個)。一方、大臼歯咬頭は5個あるが、これは化石・現生を問わず類人猿の特徴で、他のサル類には見られない(人類は、下顎の第1大臼歯のみ5咬頭、他は4咬頭)。

評価の変遷 編集

発見された化石の研究の結果、プロコンスルは小型(P. africanus)・中型(P. nyanzae)・大型(P. major)の3型に分けられ、小型のものはチンパンジーの祖先とされる。20世紀後半までは、プロコンスルは人類とは無関係(人類はラマピテクスなどを祖先とし、現生類人猿とは早くから分岐したとされていた)と考えられていたが、分子時計の解析により、人類とチンパンジーが中新世末から鮮新世初期という、地質年代としてはかなり新しい時代に共通の祖先から分かれたらしいことが明らかとなったことから、プロコンスルは人類の祖先であると言われるようになった。