プロジェクト:酒/酒、アルコール、エタノールの使い分けについて

ここでは主に酒、アルコール、エタノールの使い分けについて解説します。百科事典の編集をするなら、アルコールエタノールは正確に使い分けてください。

なぜ使い分けが必要か? 編集

ここはSakepediaではなく、Wikipediaです。つまり、酒だけについて書かれた事典であれば、アルコールと言えば、エタノールのことであり、酒の意味で使用していると判ります。しかし、百科事典は酒だけを主題としているものではありません。また、1つの主題に対して、様々な分野からの記述が書かれることも起こります。今、自分が読んでいる記事に登場した「アルコール」という語が、「アルコール」の意味なのか、「エタノール」の意味なのか、「酒」の意味なのかなどなど、いちいち考える必要があることは非生産的でしょう。

例えば、科学一般、特に化学生化学などの分野でアルコールと言うと、それは水酸基を持った有機化合物の総称です。これらが生体に吸収されて代謝を受ける時は、それぞれのアルコールによって結果が違います。有名な例は、ヒトがエタノールを飲んでも失明するようなことはありませんけれども、メタノールを飲んだ場合はしばしば失明に至ります。そして、エタノールもメタノールも共に、アルコールなのです。また、現在の飲用の酒に含まれるアルコールはエタノールが主成分ですけれども、歴史的に密造酒の中にはメタノールが混入されていたことがありました。そして、例えば衛生の分野などで用いられるエタノールを主成分とした消毒薬の中には、イソプロパノールが混ぜられていたりします。また、燃料用のエタノールは、例えばエチレンなどを原料にして合成しても構わないのに対して、飲用の酒に含まれるエタノールは基本的に醸造によって生合成されたエタノールでなければならないのです。

何よりも、用語を正確に用いていない百科事典など、果たして信頼できるでしょうか。酒とアルコールとエタノールは、百科事典においては、必ずしもイコールにならないため、正確に使い分けることが必要なのです。

実際の使い分けについて 編集

アルコール 編集

まずはアルコールの記事を御覧ください。このようにWikipediaでアルコールに内部リンクすると、科学一般の分野で言う物質、すなわち、水酸基を持った有機化合物の記事にリンクされます。したがって、の意味で「アルコール」と書くのは、Wikipediaにおいては基本的に不適切でしょう。英語版の記事を翻訳していると、英語の語順のまま「アルコール飲料」と翻訳しがちですけれども、これは「酒」と翻訳すれば問題は解決します。他に、「アルコールを多飲する」ならば「過度の飲酒」、「眠るためにアルコールを摂取する」ならば「寝酒」などと、適切な日本語がある場合は、それを用いるのが良いでしょう。

ただし、酒の分野で用いられる専門用語の中にはアルコール度数のように「アルコール」と付く言葉もあります。「アルコール度数」から「アルコール」を外して「酒度数」などとすることは、逆に不適切です。同じく、充分に認知されている病名、例えば「アルコール性肝疾患」や「アルコール依存症」なども、そのまま用いることが基本的には適切です [注釈 1] 。 このように、酒に関する記事で「アルコール」という文言を見ても機械的に他の用語に置換するわけにはゆきません。

基本的な考え方としては、以下の通りです。

  • 専門用語はそのままにして内部リンクを作成する。(良い例:アルコール度数
逆に、専門用語の一部から内部リンクを作成するのはいけません。(悪い例:アルコール度数、アルコール依存症
  • 「アルコール」が「飲料」を指している場合は、「酒」や「酒類」という言葉に書き換えましょう。同様に、酒を飲むことは「飲酒」という言葉があります。
  • 「アルコール」が物質そのものを指している場合は、正確な物質名に、例えば「エタノール」や「メタノール」などと書き換えましょう。

エタノールと酒 編集

化学や生化学などでは、物質名を正確に書く必要があるので、基本的にエタノールのままにします。ただし、例えば「エタノールを飲むこと」などとなってくると、「飲酒」という言葉を用いた方がスマートなことが多いでしょう。また、エタノールは、慣用的にエチルアルコールと呼ばれる場合もありますけれども、規則的に付けられたIUPAC名である「エタノール」を優先した方が良いでしょう。つまり、エチルアルコールについては、「エタノール」に置換することを推奨します。なお、酒の中にはエタノール以外の成分も含有されていますので、酒を機械的にエタノールに変換するのはいけません。

補記 編集

以下では、アルコール以外で、特に日本語において、飲食関係の用語と、科学一般の用語に、ある種のミスマッチがある例を挙げます。

まずは、塩 (化学)塩化ナトリウムの記事を御覧ください。飲食関係において「塩(しお)」と言えば、基本的には塩化ナトリウム(食塩)を指します。しかし、化学一般において「塩(えん)」と言えば、陽イオンと陰イオンとが結合した物質全体を指します。
これについては解決は容易で、酒の分野では単に「食塩」という用語を使えば良いのです。転送ページはあるものの、食塩の意味で「塩」と略するのはやめましょう。
なお、例えば、テキーラを飲む時に「岩塩」を舐めながら飲むスタイルも見られますけれども、この場合は「食塩」に内部リンクするよりも「岩塩」に内部リンクした方がふさわしいでしょう。このように、より適切な記事が存在する場合は、そちらに内部リンクすることも心がけてください。

注釈 編集

  1. ^ もっとも、アルコール依存症は、酒に依存している状態などと説明しても正しいので、書き換えは可能ではあります。他にも急性アルコール中毒を、短時間にエタノールを過量摂取したことによって発生した中毒などと説明しても正しいので、こちらも書き換えは一応可能ではあります。しかし、適切な日本語があるわけですから、特に言い換える必要はないでしょう。