ヘリオトロープ(Heliotrope)は、ムラサキ科キダチルリソウ属 (Heliotropium) の植物の総称。とくにその代表種であるキダチルリソウ(H. arborescens)を指すことが多い。ここでは本種について記述する。

ヘリオトロープ
キダチルリソウ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: ムラサキ目 Boraginales
: ムラサキ科 Boraginaceae
: キダチルリソウ属 Heliotropium
: ヘリオトロープ H. arborescens
学名
Heliotropium arborescens L.
シノニム
  • Heliotropium arborescens var. grisellum I.M. Johnst.
  • Heliotropium corymbosum Ruiz & Pav.
  • Heliotropium grandiflorum Aucher ex DC.
  • Heliotropium odoratum Moench
  • Heliotropium odorum Gürke
  • Heliotropium peruvianum L.
和名
キダチルリソウ、ニオイムラサキ[1]
英名
Cherry-pie , Heliotrope

名前には、ギリシャ語のhelios(太陽)+trope(向く)で、「太陽に向かう」という意味がある [2][3]

特徴 編集

ペルー原産。ジョゼフ・ド・ジュシュー(w:Joseph de Jussieu)によって初めてパリに種子がもたらされた。その後、フィリップ・ミラー1757年の報告に基づき、1759年にリンネが記載[4][5]、ヨーロッパほか世界各国に広まった。日本には明治時代に伝わり、今も栽培されている[6]

日本語で「香水草」「匂ひ紫」、フランス語で「恋の花」などの別名がある[7]

バニラのような甘い香りがするが[8]、その度合いは品種によって異なる。

花の咲き始めの時期に香り、開花後は、香りが薄くなってしまう特徴がある[2]

ドライフラワーポプリにもされる。

香水 編集

ロジェ・ガレ社(フランス)の『Heliotrope Blanc』(フランスでは1892年(明治25年)に発売)は、日本に輸入されて初めて市販された香水といわれている[9][6]

大昔は南フランスなどで栽培されており、天然の精油を採油していた[10]。しかし、収油率の低さ、香りの揮発性の高さというデメリットから、合成香料で代用して香水が作られるようになった(有機化合物であるヘリオトロピンがヘリオトロープの花の香りがすることが1885年(明治18年)に判明し、それを天然香料の代用として普及した[11])。

夏目漱石の小説『三四郎』(1908年(明治41年))や江戸川乱歩の『暗黒星』(1939年(昭和14年))にも、ヘリオトロープの香水が登場する[11]

近縁種 編集

園芸 編集

本来は不耐寒性または半耐寒性の灌木で、実生からだと開花までに数年を要したが、戦後、播種した年に開花する早生品種が作出され、家庭でも鉢植えやプランター植えで楽しむことができる。タネは春の彼岸の頃に室内でまき、霜の心配がなくなってから路地に定植すると、夏から秋にかけて花を楽しむことができる。

関連項目 編集

脚注 編集

外部リンク 編集