ベクトル化(ベクトルか、: vectorize

  • ベクトル命令化 - コンパイル時にループをベクトル演算命令に変換すること。この項目で説明。
  • ベクトル(1次元配列)の演算をサポートするプログラミング環境で、ループをベクトルに書き換えること
  • 行列(多次元配列)を同じ要素を持つベクトル(1次元配列)に変換すること→行列の一列化
  • 他の形式のデータをベクタ形式データに変換すること

ベクトル化とは、コンピュータプログラムにおいて、繰り返し処理で配列(ベクトル)の要素をひとつひとつ計算しているような部分を、手動あるいはコンパイラで(自動ベクトル化)、ベクトル計算機で高速に演算できるよう変形すること。近年のSIMD演算のための並列化スーパースカラ機でのソフトウェアパイプラインに応用できる内容もある。

High Performance Fortranはこれらの高速化を意識したプログラミング言語である。

ベクトル化の手法 編集

以下ではFortranのコードを例にとって説明する。基本的に、ループ演算を1つのベクトル演算命令にするので、doループがベクトル化対象となる。なお、ベクトル命令に出来るパターンは各機種毎、コンパイラ毎に多少異なる。

単純doループ 編集

たとえば以下のようなdoループは1つのベクトル命令に出来る。

do i = 1, 100
    a(i) = a(i) * b(i)
end do

if文を含むdoループ 編集

以下のような、if文を含むdoループは、それをサポートするハードウェアがあればベクトル化が可能である。

do i = 1, 100
    if (a(i) > 0.0) then
        a(i) = a(i) * 2.0
    end if
end do

この場合、たとえばSXシリーズでは、

  • 配列aの各要素について、if文を満たすか満たさないかを判断するマスクベクトルを作成。
  • マスクが真の部分だけを演算する、ベクトル命令を生成。

という方法でベクトル化を行なう。

多重ループ 編集

多重ループは、全部まとめて1つのベクトル命令を生成することもある。また、効率化をはかるために、内側のループと外側のループを入れ替える場合もある。これは、ベクトル化を行なうためには、データがメモリ上で連続している必要があるからである。 たとえば、二次元配列を演算する場合、内側のループが連続したメモリをアクセスするようになっていない場合には、演算する順番を入れ替えて(すなわちdoループの内側と外側を入れ替えて)ベクトル化が容易になるようにする。

関連項目 編集

参考文献 編集

  • 近藤良三「SXシステムの言語処理系」『NEC技報』第39巻第1号、1986年、NAID 40004407108