ベンジャミン・カードーゾ

ベンジャミン・ネイサン・カードーゾ(Benjamin Nathan Cardozo、1870年5月24日1938年7月9日)は、アメリカ裁判官弁護士

ベンジャミン・N・カードーゾ
Benjamin N. Cardozo
アメリカ合衆国連邦最高裁判所陪席判事
任期
1932年3月14日 – 1938年7月9日[1]
ノミネート者ハーバート・フーヴァー
前任者オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア
後任者フェリックス・フランクファーター
ニューヨーク州控訴裁判所首席判事英語版
任期
1927年1月1日 – 1932年3月7日
前任者フランク・ヒスコック英語版
後任者カスバート・パウンド英語版
ニューヨーク州控訴裁判所陪席判事
任期
1917年1月15日 – 1926年12月31日
前任者サミュエル・シーベリー英語版
後任者ジョン・F・オブライエン英語版
ニューヨーク州最高裁判所英語版第一司法部判事
任期
1914年1月5日 – 1917年1月15日
前任者バートウ・S・ウィークス英語版
後任者サミュエル・H・オードウェイ
個人情報
生誕Benjamin Nathan Cardozo
(1870-05-24) 1870年5月24日
アメリカ合衆国 ニューヨーク州ニューヨーク
死没 (1938-07-09) 1938年7月9日(68歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州ポート・チェスター英語版
政党民主党
アルバート・カードーゾ英語版
教育コロンビア大学 (BAMA英語版)

人物 編集

1870年、ニューヨークで生まれる。父親アルバートはニューヨーク州の高位裁判所の判事を務めた人物。また、詩人エマ・ラザラスはいとこ。祖父母は両方ともポルトガル系のユダヤ教徒(セファルディム)であった。1879年に母レベッカを亡くし、主に11歳年上の姉ネルに育てられる。当時の彼の家庭教師の一人に、小説家のホレイショ・アルジャーがいた[2]。15歳でコロンビア大学に入学し、成績優秀者の友愛会であるファイ・ベータ・カッパに選ばれた[3]。その後、コロンビア大学法科大学院に進み、1891年に弁護士試験に合格して、ニューヨークで開業した[4]

1914年、ニューヨーク州高位裁判所の判事に選ばれ、同年にはユダヤ系で初めて、同州上訴裁判所の判事に抜擢される。1932年、ハーバート・フーヴァー大統領によって、オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニアの後任として合衆国最高裁判所陪席判事に指名された。共和党のフーヴァーが民主党系のカードーゾを指名したことは、最高裁人事の中でも、政治的動機からではなく純粋に司法への貢献を讃えて行われた数少ない例とされ[5]、当時の民主党上院議員クラレンス・クリーヴランド・ディルは「彼(フーヴァー)の大統領としての経歴の中で最高の振る舞い」と称した[6]。1937年に心臓発作を起こし、1938年死去。

思想 編集

ホームズ判事の経験主義的・プラグマティズム的側面を継承し、ハーバード・ロー・スクールロスコー・パウンドルイス・ブランダイス判事と共に、20世紀前半の社会学的法学(Sociological Jurisprudence)の潮流を牽引した[7]。彼は長年の実務経験に基づき、裁判官が立法者に準ずる法創造的任務を持っていることを明らかにした上で、その裁判方法を哲学的、歴史的、伝統的およびこれら3つの選択基準たる社会学的方法に分類し、司法過程の経験的研究のさきがけとなった[8]

主な著書 編集

  • 『司法過程の性質』1921年
  • 『法の成長』1924年
  • 『法律学上の矛盾対立』1928年

邦訳 編集

  • (守屋善輝)『司法過程の性質』(中央大学出版部,1966年)
  • (守屋善輝)『法律学上の矛盾対立』(中央大学出版部,1968年)

脚注 編集

  1. ^ Justices 1789 to Present”. Washington, D.C.: Supreme Court of the United States. 2022年2月15日閲覧。
  2. ^ Christopher L. Tomlins"The United States Supreme Court"(Houghton Mifflin, 2005年)467頁
  3. ^ "Supreme Court Justices Who Are Phi Beta Kappa Members" Phi Beta Kappa website
  4. ^ "The United States Supreme Court"(前掲注1)同頁
  5. ^ James Taranto, Leonard Leo"Presidential Leadership"(Wall Street Journal Books,2004年)
  6. ^ ニューヨーク・タイムズ1932年3月2日、13頁
  7. ^ 中山竜一『二十世紀の法思想』(岩波書店,2000年)65頁
  8. ^ 田中成明『現代法理学』(有斐閣,2011年)452頁