ポリュペーモスのいる風景

ポリュペーモスのいる風景』(ポリュペーモスのいるふうけい、: Paysage avec Polyphème: Landscape with Polyphemus)は、1649年にフランスの巨匠ニコラ・プッサンによって描かれた後期の代表的な風景画で、画家の友人のポワンテルのために描かれた[1]。1722年にイタリアの画家アンドレア・プロカッチーニ英語版によりスペインフェリペ5世のために購入されたが[2]、後にフランスに渡った。プッサンを賞揚したディドロが推薦した結果、1772年にロシアエカチェリーナ2世に購入され、現在はサンクトペテルブルクエルミタージュ美術館の所蔵となっている[3]

『ポリュペーモスのいる風景』
フランス語: Paysage avec Polyphème
英語: Landscape with Polyphemus
作者ニコラ・プッサン
製作年1649年
種類キャンバス油彩
寸法150 cm × 198 cm
所蔵エルミタージュ美術館サンクトペテルブルク

概要 編集

主題はオウィディウスの『転身物語』から取られている。一つ目の巨人 (キュクロプス) のポリュペーモスが美しいニンフガラテイア (乳白のように白い女の意) に恋をする物語である[1]。ガラテイアは前景中央の右寄りにいる女性で、長い髪に手をやり、背を向けている恋人のアキスにもたれかかっている。ガラテイアに恋をしたポリュペーモスは遠景中央のアイトナー山の上に腰かけている。こちらに背を向けて牧羊神パンが作ったとされる葦笛を吹き、ガラテイアを探しているのである[3]。その音楽に魅せられて、泉の水を汲みにきたニンフたちは仕事の手を休めている。半獣のサテュロスたちは木立から出てきている[4]

まもなく、ポリュペーモスはアキスとガラテイアを見つけ、アキスを岩で打ち殺すことになる。死んだアキスは「河」の神となって生まれ変わるが、アキスが左手に持っているのが、やがて転身しようとする「河」の神のアトリビュートの「壺」である[2]

プッサンは、愛と音楽を自然と人間関係における調和の源として提示している。そして、描かれている風景の峻厳な断崖、堅固な木々の幹、生い茂る葉は自然の荘厳な美を印象づける[4]

脚注 編集

  1. ^ a b NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ 日本放送出版協会、1989年刊行、155頁 ISBN 4-14-008624-6
  2. ^ a b Miguel Morán Turina. "Colección de Felipe V" (in Spanish). www.museodelprado.es. Retrieved 2020-05-25 2022年11月14日閲覧
  3. ^ a b カンヴァス世界の大画家 14 プッサン、1984年刊行、77頁、ISBN 4-12-401904-1
  4. ^ a b エルミタージュ美術館の本作のサイト [1] 2022年11月14日閲覧

外部リンク 編集