ポンペイウの定理(ポンペイウのていり、Pompeiu's theorem)は、ルーマニアのポンペイウ(Dimitrie Pompeiu)が1936年に発表した[1]平面幾何学における定理である。内容は初等的であるが、古くより知られたものではない。

概要 編集

定理の内容は次の通りである。

平面上に正三角形 ABC と任意の点 P が与えられたとき、線分 PA, PB, PC の長さを各辺にもつ三角形が必ず存在する。

ここに、「PA, PB, PC の長さを各辺に持つ三角形が存在する」とは、三角不等式

PA + PB ≥ PC
PB + PC ≥ PA
PC + PA ≥ PB

が成立することを意味する。ただし、どれかの等号が成立する場合、三角形はつぶれているのであり、これを「退化した三角形」と呼ぶことにする。この定理において、三角形が退化するための必要十分条件は、点 P が三角形 ABC の外接円上に位置することである。

証明 編集

この定理は簡潔に証明できる。点 C を中心とした60°の回転によって、A, B, C, P がそれぞれ A', B', C', P' に移るとする。このとき、A' = B, C' = C である。∠PCP' = 60° かつ PC = P' C であるから、∆PCP' は正三角形であり、PC = PP' である。また、PA = P' A' = P' B であるから、∆PBP' の三辺は PA, PB, PC の長さに等しく、これが求める三角形である。P, B, P' が同一直線上に並ぶ場合は三角形が退化するが、そのための条件はトレミーの定理より直ちに求まる。

類似の定理 編集

ポンペイウの定理は、3次元空間内で考えて、P が正三角形 ABC と同一平面上にない場合でも成立する[2]。また、辺を一つ増やしたバージョンもある[3]。すなわち、

平面上に正方形 ABCD と任意の点 P が与えられたとき、線分 PA, PB, PC, PD の長さを各辺にもつ四角形が必ず存在する。

脚注 編集

  1. ^ D. Pompeïu, Une identité entre nombres complexes et un théorème du géometrie élémentaire, Bull. Math. Phys. Éc. Polytech. Bucarest 6 (1936), 6-7
  2. ^ G. R. Veldkamp, A theorem from elementary plane geometry, Nieuw Tijdschr. Wisk. 44 (1956/57), 1-4
  3. ^ D. Pompeïu, La géométrie et les imaginaires: démonstration de quelques théorèmes élémentaires, Bull. Math. Phys. Éc. Polytech. Bucarest 11 (1940), 29-34

外部リンク 編集

  • Floor van Lamoen. "Pompeïu's Theorem". mathworld.wolfram.com (英語).