マジックカーペット (路面電車車両)

マジックカーペット(Magic Carpet)は、サンフランシスコ市営鉄道(San Francisco Municipal Railway)が1939年に導入した路面電車車両の愛称である[1][2][3]

"マジックカーペット"
Magic Carpet
動態保存されている1003(2006年撮影)
基本情報
運用者 サンフランシスコ市営鉄道(Muni)
製造所 セントルイス・カー・カンパニー
製造年 1939年
製造数 5両(1001 - 1005)
引退 1957年
主要諸元
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
車両定員 着席50人
編成重量 17.78 t(39,200 lbs)
全長 15,494 mm(51 ft 10 in)
車体幅 2,743 mm(9 ft)
車体高 3,073 mm(10 ft 1 in)
床面高さ 875 mm
台車 ブリル 97ER-1
車輪径 635 mm(25 in)
主電動機 GE 1198G1
主電動機出力 33.6 kw(45 HP)
出力 134.2 kw(180 HP)
制動装置 空気ブレーキ
保安装置 デッドマン装置
備考 主要数値は[1][2]に基づく。
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概要 編集

1936年以降、アメリカカナダ各地の路面電車にはPCCカーと呼ばれる高性能の電車が多数導入され好評を博していた。だが1930年代のサンフランシスコ都市憲章では、PCCカーの展開を実施していたTRC(Transit Research Corporation)へのライセンス料を含む特許権使用料の支払いが禁じられていたため、PCCカーに類似した車両を導入する事となった。これが"マジックカーペット"と呼ばれる一連の車両である[1][2]

PCCカーの中でもバス窓と呼ばれる小窓を有さない戦前型(Pre war)に類似した両運転台式の車体を有し、集電装置となるポールは車体屋根上の左右に、乗降扉も車体両端・両側面に設置されていた。PCCカーと異なるのは速度制御をPCCカーが足踏みペダルで行う一方、"マジックカーペット"は従来の路面電車車両と同様に主幹制御器を用いて行う点である。主電動機を含む電気機器はゼネラル・エレクトリックが製造を手掛けた。

1939年に5両(1001-1005)が導入され、当初開催されていたニューヨーク万国博覧会を記念し車体下部が青色、上部が金色と言う特別塗装で登場した。高性能で騒音も少ない車両は高い人気を博し、魔法の絨毯を意味する"マジックカーペット"と言う愛称の由来となった。第二次世界大戦後は緑色やクリーム色を主体とした塗装に変更され、前述した禁止規制が解除された事で1948年から導入が開始された本物のPCCカーと共に使用されたが、1954年に市内電車が全列車ワンマン運転に切り替えられた際、手動レバーを用いて速度を制御するこれらの車両は運転士の業務が煩雑になる事が問題視された。その結果、同年以降"マジックカーペット"はラッシュ時のみの運転となり、1957年セントルイス公共事業会社英語版から譲渡された片運転台式のPCCカーに置き換えられる形で全車廃車された[1][2][4]

2019年現在、1003が製造当時の塗装に復元された上でアメリカカリフォルニア州ウェスタン鉄道博物館で動態保存されている他、サンフランシスコ市営鉄道・Fライン英語版[注釈 1]で動態保存されている両運転台式のPCCカー(1010)は"マジックカーペット"登場当時の塗装を纏っている[1][2]

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d e San Francisco Municipal Railway 1003”. Western Railway Museum. 2019年10月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e 1010 - San Francisco Municipal Railway (1940s)”. Market Street Railway. 2019年10月20日閲覧。
  3. ^ Emiliano Echeverria, Walter Rice (2015-10-30) (英語). San Francisco's Powell Street Cable Cars. Images of Rail. Arcadia Pub. pp. 70. ISBN 978-0738530475 
  4. ^ The Streetcar Fleet”. Market Street Railway. 2019年10月20日閲覧。

関連項目 編集