マット・ハービー

アメリカの野球選手 (1989 - )

マシュー・エドワード・ハービーMatthew Edward Harvey,[注釈 1] 1989年3月27日 - )は、アメリカ合衆国コネチカット州ニューロンドン出身の元プロ野球選手投手)。右投右打。

マット・ハービー
Matt Harvey
ロサンゼルス・エンゼルスでの現役時代
(2019年5月11日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 コネチカット州ニューロンドン
生年月日 (1989-03-27) 1989年3月27日(35歳)
身長
体重
6' 4" =約193 cm
225 lb =約102.1 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 投手
プロ入り 2010年 MLBドラフト1巡目
初出場 2012年7月26日
最終出場 2021年9月9日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム イタリアの旗 イタリア
WBC 2023年

愛称はリアル・ディール (Real Deal)ザ・ダークナイト・オブ・ゴッサム (The Dark Knight of Gotham)

経歴 編集

プロ入り前 編集

2007年MLBドラフト3巡目(全体118位)でロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムから指名を受けるが契約せず、ノースカロライナ大学チャペルヒル校に進学した。

プロ入りとメッツ時代 編集

2010年MLBドラフト1巡目(全体7位)でニューヨーク・メッツから指名され、プロ入り。

2011年にA+級セントルーシー・メッツでプロデビュー。AA級ビンガムトン・メッツでもプレーし、2球団合計で26試合に登板して13勝5敗、防御率3.32、156奪三振を記録[2]する。

 
ニューヨーク・メッツ時代
(2012年9月19日)

2012年7月26日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦でメジャーデビュー。5.1イニングを11奪三振無失点の好投で初勝利を挙げる。打撃でも2安打を記録し、デビュー戦で二桁奪三振と複数安打を同時に記録したのは史上初だった[3]。同年は10試合に先発し、3勝5敗ながら防御率2.73、奪三振率10.62という成績を残した。

2013年は開幕から先発ローテーションに定着。4月は6試合に登板して4勝0敗、40.2回、防御率1.56、46奪三振などの好成績でピッチャー・オブ・ザ・マンスを初受賞した。5月7日のシカゴ・ホワイトソックス戦で7回2死までパーフェクトに抑え、9回まで1安打無四球12奪三振と好投したが、援護がなく勝利は付かなかった[4]。7月16日にメッツの本拠地シティ・フィールドで行われたオールスターゲームでは先発投手を務め、2イニングを無失点に抑えた。8月7日のコロラド・ロッキーズ戦で、4安打、無四球、6奪三振、106球で初の完投完封勝利を記録した。8月24日の登板の後、右尺側側副靱帯英語版の部分断裂が発覚し、シーズンを終えた。この年は26試合、9勝、178.1回、防御率2.27(リーグ3位)、WHIP0.931(同2位)、被打率.206(同5位)、K/BB 6.16(同3位)と大活躍し、サイ・ヤング賞の投票では3位に入った。オフの10月4日に右肘の手術を行うことを発表し[5]、10月22日にトミー・ジョン手術を受けた[6]

2014年は前年の手術の影響で、マイナーを含めても実戦復帰することはなかった。

2015年4月9日、開幕3試合目で1年7ヶ月ぶりに復帰し、6回無失点で勝利投手となった。この年は29試合、13勝、189.1回、防御率2.71(リーグ6位)、WHIP1.019(同7位)、被打率.219(同6位)、K/BB 5.08(同6位)、最速99.4mph(約160.0km/h)を記録するなど手術前と変わらぬ活躍で、チームにとって9年ぶりの地区優勝に貢献した。手術明けのシーズンのため、代理人スコット・ボラスや執刀医のジェームズ・アンドリュース英語版などが登板イニング制限を提言したものの[要出典]ポストシーズンでも4試合に登板し、26.2回、防御率3.04と安定した投球でリーグ優勝に貢献した。オフにはカムバック賞を受賞した。

2016年は、開幕から調子の上がらないピッチングが続き、7月6日に肩の不調で故障者リスト入りすると[7]、手術を受け、このままシーズン終了となった。この年は17試合に先発登板して防御率4.86、4勝10敗、WHIP1.47に終わった。

2017年はさらに調子を落とし、19試合登板で防御率6.70、5勝7敗、WHIP1.69に終わった。

2018年5月5日にDFAとなった[8]

レッズ時代 編集

 
シンシナティ・レッズ時代
(2018年8月11日)

2018年5月8日にデビン・メソラコとのトレードで、シンシナティ・レッズへ移籍した[9]。移籍後は24試合に先発し7勝7敗、防御率4.50とやや持ち直した。オフの10月29日にフリーエージェント(FA)となった。

エンゼルス時代 編集

2018年12月21日にエンゼルスと1年1100万ドル+出来高300万ドルで契約を結んだ[10]

2019年は12先発で3勝5敗、防御率7.09という自己ワーストの成績に終わった。7月19日にDFAとなり[11]、21日にFAとなった[12]

アスレチックス傘下時代 編集

2019年8月15日にオークランド・アスレチックスとマイナー契約を結んだ[13]。オフにFAとなった。

ロイヤルズ時代 編集

2020年7月28日にカンザスシティ・ロイヤルズとマイナー契約を結んだ[14]。8月18日、翌19日付けでメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りすると報じられた[15]。オフの10月28日にFAとなった[16]

オリオールズ時代 編集

2021年2月17日にボルチモア・オリオールズとマイナー契約を結んだ[17]。メジャーに昇格した場合は給与として100万ドルが支払われる。3月25日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りし[18]、開幕をMLBで迎えた。4月3日のレッドソックス戦でオリオールズ移籍後初登板を果たした[19]。5月11日にシティ・フィールドで行われた古巣のメッツ戦では、現地のメッツファンからスタンディングオーべションを受けた[20]。オフの11月3日にFAとなった[21]

2022年2月15日、2019年7月にタイラー・スカッグスが急死した原因となった薬物を提供したとして、元エンゼルス球団職員のエリック・ケイがテキサス州連邦当局から2つの容疑で起訴された裁判で、ハービーはコカインを使用した事を認めた[22]。4月8日にオリオールズとマイナー契約で再契約を結んだ[23]。5月17日にMLBから禁止薬物の提供に関わったとして60試合の出場停止処分が下された[24]。11月10日にFAとなった[25]

オリオールズ退団後 編集

2023年3月に行われた第5回WBCではイタリア代表に選出され[26]、2試合に先発し防御率1.29を記録した。同年5月5日、自身のSNS上にて現役引退を発表した[27]

投球スタイル 編集

2019年の投球データ[29]
球種 配分
%
平均球速
mph (km/h)
水平運動
in
鉛直運動
in
フォーシーム 45 94 (151) -7 8
スライダー 27 88 (141) 2 3
カーブ 15 82 (132) 2 -5
チェンジアップ 10 86 (139) -8 6
シンカー 3 94 (152) -6 6

スリークォーターから繰り出す手元で浮き上がるようなフォーシーム、鋭く曲がり落ちるスライダーカーブチェンジアップを武器とする。フォーシームは常時90mph中盤、最速100.1mph(約161.0km/h、2013年6月18日計測)[30]、スライダーは常時90mph前後を計時する[31]

人物 編集

ニューヨーク・メッツ時代は、高級スポーツカーのマセラティを所有するなど、派手な生活を送ることで知られていた[32]

数々のファッションモデルとの交際を目撃されたことから、ニューヨーク・メディアのゴシップ欄では”ロサリオ(女たらし)”と称されていた[33]。2017年5月、当時交際していたスーパーモデルアドリアナ・リマと、彼女の元恋人でNFLワイドレシーバーであるジュリアン・エデルマンが、一緒にパーティーに参加している写真を見たことで精神的に落ち込み、所属していたメッツの試合を休んだ。その後、メッツはハービーに対し、3日間の出場停止処分を科した[34]

2013年5月に、米誌「スポーツ・イラストレイテッド」の表紙を飾り、”ゴッサム(ニューヨークの別称)ダーク・ナイト”と名付けられた。彼は子供時代からバットマンのファンで、自身が使用するバットのグリップエンドに「DARK KNIGHT」の文字を刻んでいる[35]。同年7月には、米誌「ESPNマガジン」の企画ザ・ボディイシューで、ヌードを披露した[36]

詳細情報 編集

年度別投手成績 編集





















































W
H
I
P
2012 NYM 10 10 0 0 0 3 5 0 0 .375 245 59.1 42 5 26 0 3 70 3 0 19 18 2.73 1.15
2013 26 26 1 1 1 9 5 0 0 .643 690 178.1 135 7 31 1 4 191 2 0 46 45 2.27 0.93
2015 29 29 0 0 0 13 8 0 0 .619 755 189.1 156 18 37 2 5 188 4 0 62 57 2.71 1.02
2016 17 17 0 0 0 4 10 0 0 .286 402 92.2 111 8 25 1 1 76 4 0 55 50 4.86 1.47
2017 19 18 0 0 0 5 7 0 0 .417 431 92.2 110 21 47 3 6 67 6 1 70 69 6.70 1.69
2018 8 4 0 0 0 0 2 0 0 .000 123 27.0 33 6 9 0 1 20 1 0 21 21 7.00 1.56
CIN 24 24 0 0 0 7 7 0 0 .500 540 128.0 132 21 28 2 5 111 1 1 66 64 4.50 1.25
'18計 32 28 0 0 0 7 9 0 0 .438 663 155.0 165 27 37 2 6 131 2 1 87 85 4.94 1.30
2019 LAA 12 12 0 0 0 3 5 0 0 .375 266 59.2 63 13 29 0 3 39 3 0 48 47 7.09 1.54
2020 KC 7 4 0 0 0 0 3 0 0 .000 65 11.2 27 6 5 0 0 10 0 0 15 15 11.57 2.74
2021 BAL 28 28 0 0 0 6 14 0 0 .300 582 127.2 160 19 37 1 5 95 3 0 96 89 6.27 1.54
MLB:9年 180 172 1 1 1 50 66 0 0 .431 4099 966.1 969 124 274 10 33 867 27 2 498 475 4.42 1.29

表彰 編集

記録 編集

背番号 編集

  • 33(2012年 - 2018年5月4日、2019年 - 2020年)
  • 32(2018年5月11日 - 2021年)

代表歴 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 英語発音: /ˈmæθju ˈɛdwɚd ˈhɑrvi/[1]

出典 編集

  1. ^ 英語のIPA発音記号変換(アメリカ英語)”. tophonetics.com. 2020年6月10日閲覧。
  2. ^ Matt Harvey Minor League Statistics & History” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年6月16日閲覧。
  3. ^ Harvey strikes out 11 in Mets debut
  4. ^ May 7, 2013, White Sox at Mets Play by Play and Box Score” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年6月16日閲覧。
  5. ^ Medical update on Matt Harvey”. MLB.com Mets Press Release (2013年10月4日). 2014年2月22日閲覧。
  6. ^ Statement from the Mets regarding Matt Harvey”. MLB.com Mets Press Release (2013年10月22日). 2014年2月22日閲覧。
  7. ^ メッツ 先発右腕ハービーが今季絶望の可能性「手術は避けられない」”. Sponichi Annex (2016年7月8日). 2016年11月22日閲覧。
  8. ^ Anthony DiComo (2018年5月5日). “Mets cutting ties with Matt Harvey” (英語). MLB.com. 2018年5月7日閲覧。
  9. ^ Anthony DiComo (2018年5月8日). “Mets deal Harvey to Reds for catcher Mesoraco” (英語). MLB.com. 2018年5月10日閲覧。
  10. ^ Rhett Bollinger (2018年12月21日). “Angels agree to 1-year deal with Harvey” (英語). MLB.com. 2019年2月8日閲覧。
  11. ^ Rhett Bollinger (2019年7月19日). “Angels designate Matt Harvey for assignment” (英語). MLB.com. 2019年7月20日閲覧。
  12. ^ Rhett Bollinger (2019年7月21日). “Angels release former All-Star Harvey” (英語). MLB.com. 2019年7月22日閲覧。
  13. ^ Martin Gallegos (2019年8月15日). “A's make Harvey their latest reclamation project” (英語). MLB.com. 2019年8月21日閲覧。
  14. ^ Steve Adams (2020年7月28日). “Royals Sign Matt Harvey” (英語). MLB Trade Rumors. 2020年8月1日閲覧。
  15. ^ Mark Polishuk (2020年8月19日). “Royals To Promote Matt Harvey” (英語). MLB Trade Rumors. 2020年8月20日閲覧。
  16. ^ Manny Randhawa and Paul Casella (2020年11月11日). “2020-21 free agents, position by position” (英語). MLB.com. 2020年11月16日閲覧。
  17. ^ Orioles To Sign Matt Harvey To Minors Deal” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年2月18日閲覧。
  18. ^ Orioles Select Matt Harvey” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年3月25日閲覧。
  19. ^ Steve Melewski (2021年4月3日). “A look at Matt Harvey’s Orioles debut (O’s are 2-0)” (英語). masn. 2021年4月29日閲覧。
  20. ^ Sterling Bright (2021年5月13日). “O's go quietly, can't bail out Harvey” (英語). MLB.com. 2021年5月16日閲覧。
  21. ^ 160 Players Become XX(B) Free Agents” (英語). mlbplayers.com (2021年11月3日). 2021年11月5日閲覧。
  22. ^ Ex-Mets star Matt Harvey admits to cocaine use, providing drugs to Tyler Skaggs in explosive testimony” (英語). Daily News. 2022年9月2日閲覧。
  23. ^ MLB公式プロフィール参照。2022年5月13日閲覧。
  24. ^ MLB bans Harvey 60 games for oxy distribution” (英語). ESPN.com (2022年5月17日). 2023年3月15日閲覧。
  25. ^ Matt Harvey: Opts for free agency” (英語). CBSスポーツ (2022年11月10日). 2023年3月15日閲覧。
  26. ^ Why Matt Harvey is playing for Italy in the 2023 World Baseball Classic | Sporting News” (英語). www.sportingnews.com (2023年2月27日). 2023年5月6日閲覧。
  27. ^ Anthony DiComo (2023年5月5日). “Matt Harvey, former Mets sensation, announces his retirement”. MLB.com. 2023年5月6日閲覧。
  28. ^ BrooksBaseball.net Player Card: Matt Harvey”. www.brooksbaseball.net. 2020年6月10日閲覧。
  29. ^ RS: 12先発・59.2回。Brooksbaseball.netに基づく。[28]
  30. ^ Future is now for Mets thanks to imposing duo of Matt Harvey, Zack Wheeler” (英語) (2013年6月19日). 2016年1月10日閲覧。
  31. ^ 黒田博樹も認めたメッツの新エース、マット・ハービーに注目!”. Web Sportiva. 2013年6月16日閲覧。
  32. ^ David K. Li (2016年2月16日). “Matt Harvey rolls into spring training in $150K Maserati” (英語). ニューヨーク・ポスト. 2023年3月15日閲覧。
  33. ^ Emily Smith (2015年3月29日). “Matt Harvey dating Polish beauty” (英語). Page Six. 2023年3月15日閲覧。
  34. ^ Emily Smith and Ruth Brown (2017年5月9日). “Matt Harvey sent over the edge by gal pal’s reunion with ex” (英語). Page Six. 2023年3月15日閲覧。
  35. ^ Mike Bertha (2015年4月9日). “Know how we know that Matt Harvey is really 'The Dark Knight'? It says so on his bats” (英語). MLB.com. 2023年3月15日閲覧。
  36. ^ Morty Ain (July 9,2013). “Matt Harvey goes nude” (英語). ESPN. 2023年3月15日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集