マナの収集』 (マナのしゅうしゅう、: La Récolte de la manne: Gathering of Manna) 、または『荒野でマナを集めるイスラエル人たち』(こうやでマナをあつめるイスラエルじんたち、: Les Israélites recueillant la manne dans le désert: The Jews Gathering the Manna in the Desert) は、17世紀のフランスの巨匠ニコラ・プッサンが1638–1639年に制作した油彩画である。画家が手掛けた旧約聖書主題の作品のうちの1点で、1666年にフランス国王ルイ14世の収集に加わった後、1785年にパリルーヴル美術館に収蔵された[1]

『マナの収集』
フランス語: La Récolte de la manne (La Manne)
英語: Gathering of Manna
作者ニコラ・プッサン
製作年1638-39年
種類キャンバス油彩
寸法149 cm × 186 cm (59 in × 73 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ
ルーベンスローマの慈愛』、1612年頃、エルミタージュ美術館サンクトペテルブルク

概要 編集

旧約聖書出エジプト記 (16章14∼17) では、イスラエル人たちがエジプトを出て荒野を越えていく様子が記述されている。本作には、エジプトを出て2か月と15日後、シンの荒野で起きた出来事が描かれている。イスラエル人たちは食べ物がなくなり、飢えに苦しんで、指導者モーセに救いを求める。モーセが神に祈ると神は、イスラエル人たちに朝露とともに蜜のように甘い「種」に似た食物を降らせて与えた。それが「マナ」であった[2][3][4]

中央で鮮やかな赤い衣を纏い、古代ギリシアローマ彫刻のように手を天に上げて立っているのがモーセである。その周囲にいる人々の心理は、プッサンによりさまざまに描き分けられている。画面左側には飢えに苦しんでいる人、そして画面右側ではすでに天から降ってきているマナを夢中になって拾っている人、マナを巡って争っている人、マナをむさぼっている人、喜びに浸る人、神への感謝をささげる人などがいる。左側の群衆の中心にいる女性は幼い自分の息子だけでなく、弱っている老婆にも自分の乳を与えているが、これは「ローマの慈愛」(カリタス・ロマーナ=Caritas Romana) を表現している。画家は、こうしたひとりひとりの心理と感情をそれにふさわしいポーズと雰囲気の中で描き出そうとしているのである[2][3]

プッサンは友人ステラに宛てた手紙の中で、本作の意図について「飢え、その後の喜びと驚き、そして神への尊敬を、女や子どもたちを含むさまざまな年齢と気質の人々によって表したい」と述べ、さらにこのことは「知的に絵を読むことのできる人を喜ばせるだろう」と書いている。実際、「絵を読む」という言葉は、プッサンの作品を理解する鍵となる。画家にとって、絵画は自分が訴えたいと思う思想を語るものであり、鑑賞者に絵画に込められたものを喜びとともに読み取ってもらうことを期待したものであった[2]

なお、1667年に当時のフランスの王立絵画彫刻アカデミーの学長で、プッサンの弟子であったシャルル・ルブランは本作についての分析と講演を行い、後世に強い影響力を持った[4]

『マナの収集』の参考作品 編集

プッサンの『マナの収集』のモデルとなったとシャルル・ルブランが言及した古代彫刻[5]

脚注 編集

  1. ^ ルーヴル美術館の本作のサイト [1] 2022年12月3日閲覧
  2. ^ a b c NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華、1985年刊行、45-46頁 ISBN 4-14-008426-X
  3. ^ a b ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて、2011年発行、507頁 ISBN 978-4-7993-1048-9
  4. ^ a b カンヴァス世界の大画家 14 プッサン、1984年刊行、90頁、ISBN 4-12-401904-1
  5. ^ Charles Clément, « Nicolas Poussin, sa vie et ses œuvres », Revue des Deux Mondes, t. 5, 1850, p. 696-730

外部リンク 編集