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ミズリー」(Misery)は、ビートルズの楽曲である。1963年に発売された1作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録された。ジョン・レノンポール・マッカートニーの共作(名義はレノン=マッカートニー)で、レノンは「ポールというよりジョンっぽい曲…というところかな。でも一緒に書いたんだ」[2]とし、マッカートニーは「共同作曲。誰かのために曲を作るという、雇われと言っても差し支えないような仕事だった」[3]と語っている。

ミズリー
ビートルズ楽曲
収録アルバムプリーズ・プリーズ・ミー
英語名Misery
リリース1963年3月22日
録音
ジャンルリバプールサウンド[1]
時間1分47秒
レーベルパーロフォン
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
プリーズ・プリーズ・ミー 収録曲
アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア
(A-1)
ミズリー
(A-2)
アンナ
(A-3)

1963年にケニー・リンチ英語版によるカバー・バージョンが発売され、ビートルズの楽曲が初めてカバーされた例となった[1]

背景 編集

1963年2月、ビートルズはヘレン・シャピロと共にツアーを行なっていた。シャピロのマネージャーであるノリー・パラマー英語版は、テネシー州ナッシュビルでレコーディングを予定しているアルバムのための新曲を求め、ビートルズに楽曲提供を依頼した[4]。1963年1月26日にストーク=オン=トレントのキングス・ホールで行なわれた公演の前に楽屋で「ミズリー」の作曲が開始され、その後フォースリン・ロードのマッカートニーの自宅で完成した[3]。マッカートニーは「僕らはこれを『ミズリー』と呼んでいるけど、響きほどスローじゃなく、かなりの勢いで進んでいくし、ヘレンはかなり良い仕事をしてくれると思う」と語っている[5]

しかし、パラマーは本作を却下し[1]、代わりに同じくツアーに同行していたケニー・リンチ英語版が本作を録音することとなった[6]。マッカートニーは、「ヘレン・シャピロのために書いたけど、歌ってもらえなかった。『the world is treating me bad, misery(世界中が私につらくあたるの…みじめだわ)』なんて曲は、彼女には合わなかったのかもしれない。とても悲観的な曲さ。でもケニー・リンチはもらってくれた。ケニーとはよく一緒にツアーで回ってて、その時に歌ってくれた。彼の地味なヒット曲になったよ」と語っている[7]。リンチによる「ミズリー」は、ビートルズの楽曲が初めてカバーされた例となった[1][3][6]が、シングルチャート入りすることはなかった[8]

レコーディング・リリース 編集

ビートルズは、1963年2月11日にアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録の全14曲のうち、既にシングル曲として発売された4曲を除く10曲のレコーディングを10時間のセッションで行なっていた[9]。「ミズリー」は、同日のセッションで11テイクで録音された[9]。その9日後にあたる2月20日、ジョージ・マーティンは、テープを半分のスピードで再生してイントロとブリッジにピアノのパートを加えた[9]

イギリスで1963年3月22日にパーロフォンからアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』が発売され、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」と「アンナ」の間にあたるA面2曲目に収録された[10]。アメリカでは、1963年7月22日にヴィージェイ・レコードから発売された『Introducing... The Beatles』のA面2曲目に収録された後[11]、1964年3月23日に発売されたEP『The Beatles』のA面1曲目[11]に収録された。2013年に発売された『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』には、1963年3月12日にBBCラジオで放送された『Here We Go』での演奏が収録された[12]

音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、「思春期の自己憐憫を描いたおどけた作品」と評している[13]

クレジット 編集

※出典[14]

カバー・バージョン 編集

前述のとおり、1963年にケニー・リンチ英語版によるカバー・バージョンが発売された。

1976年にフレイミン・グルーヴィーズが、アルバム『Shake Some Action』でカバー[15]

2003年にペテル・リパ英語版が、アルバム『Beatles in Blue(s)』でカバー[16]

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d Unterberger, Richie. “Misery - The Beatles | Song Info”. AllMusic. All Media Network. 2021年7月24日閲覧。
  2. ^ Sheff 2000, p. 169.
  3. ^ a b c Miles 1997, p. 94.
  4. ^ Harry 1992, p. 599.
  5. ^ Badman 2000, p. 51.
  6. ^ a b Womack 2014, p. 645.
  7. ^ Lewisohn 1988, p. 8.
  8. ^ Harry 1992, p. 468.
  9. ^ a b c Everett 2001, p. 142.
  10. ^ Russell 2006, p. 40.
  11. ^ a b Womack 2009, p. 290.
  12. ^ Live At The BBC (Vol.2)”. thebeatles.com. 2021年7月26日閲覧。
  13. ^ MacDonald 2005, p. 70-71.
  14. ^ MacDonald 2005, pp. 70–71.
  15. ^ Deming, Mark. Shake Some Action - Flamin' Groovies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2021年7月26日閲覧。
  16. ^ Couture, Francois. Beatles in Blue(s) - Peter Lipa | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2021年7月26日閲覧。

参考文献 編集

  • Badman, Keith (2000). The Beatles Off The Record. London: Omnibus. ISBN 0-7119-7985-5 
  • Everett, Walter (2001) [1999]. The Beatles as Musicians: The Quarry Men Through Rubber Soul. Oxford University Press. ISBN 0-1951-4105-9 
  • Harry, Bill (1992). The Ultimate Beatles Encyclopedia. London: Virgin Books. ISBN 0-8636-9681-3 
  • Lewisohn, Mark (1988). The Complete Beatles Recording Sessions. London: Hamlyn. ISBN 0-6005-5798-7 
  • MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-8441-3828-3 
  • Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6 
  • Russell, Jeff P. (2006) [1982]. The Beatles Complete Discography. Universe. ISBN 0-7893-1373-1 
  • Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-3122-5464-4 
  • Womack, Kenneth (2009). The Cambridge Companion to the Beatles. Cambridge University Press. ISBN 0-5218-6965-X 
  • Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four [2 Volumes]. ABC-CLIO. ISBN 0-3133-9172-6 

外部リンク 編集