ムサカ

ギリシャ風のナスのムサカ
アラビア語 مسقعة (musaqqaʿa)
トルコ語 musakka
南スラヴ語 мусака / musaka
ギリシャ語 μουσακάς
ルーマニア語 musaca
英語 moussaka

ムサカアラビア語:مسقعة musaqqaʿa; ギリシア語:μουσακάς; トルコ語:musakka)は、ギリシャバルカン半島マシュリクエジプトなど東地中海沿岸の伝統的な野菜料理。これらの地域以外ではギリシア料理のムサカが最もよく知られている。

語源 編集

ムサカの起源はアラビア語で「冷やしたもの」を意味する「ムサッカア」で、「サッカア」(سقع / saqqaʿa、「冷たくする」の意)という動詞に由来する。このことから、マシュリクのムサッカアは冷菜として扱われていたことがうかがえる。

各国のムサカ 編集

 
カリフラワーのムサカ、セルビア
 
ジャガイモとホウレンソウのムサカ、セルビア
 
米のムサカ、セルビア
 
ジャガイモとズッキーニのムサカ、ギリシャ

トルコはムサカの中心地であり、オスマントルコ設立とほぼ同時期に宮廷の厨房で作られた。オスマントルコの版図がギリシャを含むバルカン半島、東欧、アフリカ北部に平がるにつれ、各地に伝わった。ムサカ自体は13世紀の文献にアラビア語の文献に現れる(「バグダッド料理本」)[1]。ソテーや素揚げにしたナス、ピーマン、トマト、タマネギ、挽肉を使い、ジャージクCacık)やピラフと一緒に食べる。ズッキーニ、カリフラワーニンジン、ジャガイモを使ったものもある。ナス、羊のひき肉入りトマトソースを何層かに重ねてオーブンで焼く。

 ギリシャで最も一般的なムサカは、耐熱容器にオリーブ・オイルソテー、または揚げたナスのスライス、マッシュポテトまたは火を通したジャガイモと一緒に調理したラム挽肉ベシャメルソースホワイトソース)を順に重ねてオーブンで焼いた、グラタンに似た料理である。このレシピ1920年代にギリシャ料理にフランス料理の要素を取り入れ、東洋的な要素を取り除いてギリシャ料理の「脱亜入欧」を計った料理人ニコラオス・ツェレメンテスNikolaos Tselementes)によって紹介されたものだといわれる。ベシャメルソースにはバターを使わないことがあり、使ってもほんの少しか、オリーブ・オイルを用いたり、クリームで代用することもある。チーズパン粉が上にかかることも多い。基本的なレシピにはいくつものバリエーションがある。ソースを使わない場合もあるし、他の野菜が入る場合もある。ギリシャで一般的なのは、バリエーションとしてナスに加えズッキーニ、ジャガイモ、マッシュルームを使うものである。ツェレメンテスによるギリシャの料理本には、ギリシャ正教会で肉食を禁じられるの日用のムサカさえある。これは肉も肉汁のソースも使わず、挽肉の代わりに細かく切ったナスなど野菜を用い、トマトソース、パン粉だけで作るものである。乳製品を禁じられていない期間中なら、フェタチーズを使ってもよい。

 アラブ人のムサカは主にトマトとナスやズッキーニを使った温サラダのことで、イタリアカポナータフランスラタトゥイユに似ており、メゼの一品としても供される。別名をムナッザラ(منزلة)またはムナッザリともいい、ヒヨコマメを入れたり、鶏卵でとじることもある。

 ブルガリアセルビアボスニアルーマニアで出されるムサカはナスやズッキーニのかわりにジャガイモが使われることが多い。バルカン半島の他の国では一番上の層にはカスタードが使われることが多く、カスタードには牛乳の代わりにヨーグルトを入れることもある。ルーマニアには、キャベツや卵つなぎのムサカもある。

関連事項 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

[1]Muhammad bin al-Hasan bin Muhammad bin al-Karîm, “A Baghdad Cookery Book”, tr, Charles Perry, 2005.https://www.dishesorigins.com/moussaka/