ムーニコス古希: Μούνιχος, Mounichos)は、ギリシア神話の人物である。長音を省略してムニコスとも表記される。主に、

が知られている。以下に説明する。

ドリュアースの子 編集

このムーニコスは、ドリュアースの子でエーペイロス地方のモロッシア英語版の王、予言者である。レーランテーと結婚し、予言者アルカンドロス、メガレートール、ピライオス、娘ヒュペリッペーをもうけた[1][注釈 1]

アントーニーヌス・リーベラーリスによると、ムーニコスとその家族はみな正しい心の持ち主であり、神々への信仰心が篤かったので、神々も彼らを愛していた。ある夜、ムーニコスたちは盗賊の襲撃を受けた。彼らは塔にこもって戦ったが、盗賊たちは館に火を放った。ゼウスは彼らが死ぬのを見るに堪えず、鳥に変えることにした。火を避けるため水の中に飛び込んだヒュペリッペーはミズナギドリ(Aithyia)に、ムーニコスとアルカンドロスはノスリ(Triorches)とミソサザイ(Orchilos)に変わって火の中から飛んで逃げた。溝に入って火から逃れたメガレートールとピライオスは小型の鳥ヒメバチドリ(Ichneumon)とイヌドリ(Kyon)に変わった[注釈 2]。妻レーランテーはアカゲラ(Pipo)になった[1]

オウィディウスも『変身物語』の中で、モロッシアの王ムーニコスの息子たちが鳥に変身し、賊の放った火から逃れたと語っている[4]

アテーナイの王 編集

このムーニコスは、アッティカ地方の都市アテーナイの王である。ムーニコスはトラーキア人に追われたミニュアース人を港の周囲に移住させたので、ミニュアース人は王にちなんだ名前ムーニュコスを港につけた[5]ピレウスで発見された碑文からムーニコスへの英雄崇拝が存在したことが明らかになっている[6]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 父の名前ドリュアースは樹木ないしの木と関係があり、ムーニコスがモロッシアの王であると同時に予言者であることから、神託所として有名なドードーナとの関連性が指摘されている[2]
  2. ^ Triorches と Orchilos はアリストパネース喜劇』に見られ、それぞれノスリ、ミソサザイとされる。Ichneumon と Kyon は不明だが、前者は「追跡する者」、後者は「」の意[3]

出典 編集

  1. ^ a b アントーニーヌス・リーベラーリス、14話。
  2. ^ 安村典子訳注、p.78。
  3. ^ 安村典子訳注、p.78-79。
  4. ^ オウィディウス『変身物語』13巻716行-718行。
  5. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.265b。
  6. ^ Corpus Inscriptionum Atticarum, 2.1541b。

参考文献 編集