ラリンジアルマスク英語: Laryngeal mask airway:LMA)とは、気道確保に用いられる換気チューブの一つ。ラリンゲルマスクとも呼ばれる。

概要 編集

 
ラリンジアルマスク。食道に開口するドレーンチューブが組み込まれている。

1983年英国麻酔科医Archie Brainによって開発された。1988年には日本で臨床利用が可能となった。

チューブ先端に換気マスクのような形状のカフが付いており、口から挿入する。カフが喉頭を覆い隠すように接着し、換気路を確保する。換気の確実性や患者への侵襲といった点で、フェイスマスクと気管内チューブの中間の特性を持つ。

気管挿管による気道確保と比較して、操作が簡単で、喉頭鏡により喉頭を展開することなく使用できることや、気道への刺激が少なく、チューブを入れることによる血圧の変化が抑えられること等の利点があり、気道確保が困難な場合や短時間の手術に利用される。

一方でカフによる封鎖が完全でない可能性があり、胃内容物等が気管に入ってしまう誤嚥の危険がある。これに対し、ドレーンチューブを組み込むことで誤嚥のリスクを軽減した製品もある。

筋弛緩薬を用いずに留置可能な盲目的挿入気道デバイスの一種であり、麻酔維持中は人工呼吸器による機械換気に頼らずに自発呼吸で管理することも出来るが、2023年の小児におけるランダム化比較試験においては、自発呼吸群では91.3%、機械換気群では39.13%と自発呼吸管理では無気肺発生率が上昇することが示された[1]。ただし、この研究では肺リクルートメント手技(肺を加圧して無気肺を治療する)が行われていない[1]

i-gel 編集

上記の他に、喉頭に当てて換気を行う器具としてi-gelがある。2005年に麻酔科医Muhammed Aslam Nasirによって開発された。チューブの先端に柔らかいゴム様のマスクが付いたという構造のもので、ラリンジアルマスクが喉頭の周囲をカフで覆うのに対し、こちらはカフを持たず、柔らかいマスクが喉頭や咽頭の構造に合わせて密着する。また、必要に応じてマスク内にドレーンチューブを通すことができる。ラリンジアルマスクと同様に操作が容易であり気道への刺激が少ない。

脚注 編集

  1. ^ a b Cai, Weiwei; Gu, Wei; Ni, Huanhuan; Zhao, Longde; Zhong, Shan; Wang, Wei (2023-11-06). “Effects of laryngeal mask ventilation on postoperative atelectasis in children undergoing day surgery: a randomized controlled trial”. BMC Anesthesiology 23 (1): 362. doi:10.1186/s12871-023-02327-2. ISSN 1471-2253. https://doi.org/10.1186/s12871-023-02327-2.