リジェネラティブ・トラベル

リジェネラティブ・トラベル(英語:Regenerative Travel)は、2020年新型コロナウイルス感染症の流行で壊滅的な打撃をうけた観光業にあって、COVID-19による影響を受けての新しい生活様式に沿った観光地の在り方を模索し、旅行の形態や意識の変革(チェンジマネジメント)を促すものである[1]

「コロナに負けるな」を掲げたアマビエ神社。意気込みは同じだが、リジェネラティブ・トラベルは神頼みではなく、現実的に立ち向かう方策を考え実行する。

リジェネラティブとは 編集

語源となる「ジェネラティブ(ジェネレーティブとも)(Generative)」には「生成」「創生」「原動力」といった意味があり、これに「」を表す冠詞Re-が付くことで、リジェネラティブ(リ-ジェネラティブ)は「再生」「再始動」を意味する。

使用例としては、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)やリジェネラティブ・オーガニック認証(RO認証)といった有機農産物など、環境を意識したものを対象に用いられている。

つまりリジェネラティブ・トラベルとは「(諸般に配慮した)再生可能な旅行」ということになる。

類似提唱 編集

リジェネラティブ・トラベルとほぼ同義の言葉にはレジリエント・ツーリズムがある。レジリエント・ツーリズムが国際機関政府などの国家次元で行われる政策であるのに対し、リジェネラティブ・トラベルは旅行会社やその業界団体地方自治体NPODMO、そして観光関連に従事する個人個人事業者)や中小企業などが自主的自発的に取り組む行為であるという違いがある。

また、ツーリズムという概念的な指向ではなく、トラベルという言葉を用いることでより現実的で現場に近い旅行である違いがあることを主張する。

理念 編集

観光公害による弊害が深刻化し、環境負荷が増していることから、究極的には旅行者自身が「次世代のためにより良い状況の旅先を残そう(現状を改善し再生させる)」と意識した旅を行うことを目標とし、観光地・観光産業従事者に利益が還元され、旅行者も満足できるWin-Winの状況になることを目指す[2]

また、「再生可能な旅行」には再生産つまりリピーターの意味もあり、新型コロナウイルスパンデミックで旅行から遠ざかった人の再誘致を目的とする側面もある。

具体的取り組み 編集

リジェネラティブ・トラベル実現のためには、実施・実行しなければならない行動がある[1]

 
民間活力でアフターコロナのインバウンドを見据えたイベント
リジェネラティブ・トラベルがキーワードになった

この他、日本であれば国際観光旅客税の有効な活用と配分なども望まれる。

始動実例 編集

産油国およびメッカなどのイスラム教聖地の守護者としての地位から、観光立国へと移行しつつあるサウジアラビアで、紅海に面したレッドシープロジェクト英語版を推進するTRSDC社(サウジ政府系企業)がアフターコロナを見据えて自然環境を活かした人工島の整備計画を発表し、リジェネラティブ・トラベルのモデルケースとするとした。ただ、大規模開発はリジェネラティブ・トラベルの主旨にそぐわないとする意見もある[3]

一方日本では、日本観光振興協会はコロナ禍からの「観光回復宣言」を発表し、Go To キャンペーンに頼らない長期戦略の新たな観光需要の創出に取り組むことを表明した[4]

懸案事項 編集

リジェネラティブ・トラベルは場合によっては旅行者にとってお仕着せがましさを無理強いすることになりかねず、不自由な旅はツーリストトラップとなり、結果として旅先の印象を悪いものとしてしまう恐れがある[2]

脚注 編集

  1. ^ a b 村山慶輔『観光再生』プレジデント社、2020年、288頁。ISBN 978-4-8334-2385-4 
  2. ^ a b 【始動】観光の未来を変える「再生型トラベル」って何だ ニューヨークタイムス 2020年9月8日(NewsPicks翻訳・配信)
  3. ^ サウジアラビア、自然を生かしたリジェネラティブ・ツーリズム (再生型観光)プロジェクト 、「コーラル・ブルーム」のコンセプトを発表 トラベルビジョン 2021年2月17日
  4. ^ 「日本の観光再生宣言」を発表しました PR TIMES 2021年3月1日

関連項目 編集