リンカーン地球近傍小惑星探査

米国空軍、NASA、MITリンカーン研究所の共同プロジェクト

リンカーン地球近傍小惑星探査 (LIncoln Near-Earth Asteroid Research: LINEAR) は、アメリカ空軍アメリカ航空宇宙局 (NASA)、およびマサチューセッツ工科大学リンカーン研究所が共同で運営している、地球近傍小惑星の組織的な発見と追跡のためのプロジェクト。1998年以降に発見された小惑星のほとんどがLINEARによるものである。 2004年10月21日までに、リモートテレスコープによって少なくとも1622個の地球近傍小惑星や142個の彗星を含む21万1849個の新しい天体を検出した。

歴史 編集

最初の試験が行われたのは1972年にまで遡る。 1980年代前半にはニューメキシコ(国際天文学連合天文台コード704)にリンカーン研究所のETS (Experimental Test System) の原型が構築された。 LINEARプロジェクトは、1996年に口径1mのGEODSS(地上設置型電子光学式深宇宙探査)望遠鏡を使用して地球近傍天体 (NEO) を捜索する施設の運営を始めた。 このような視野が広い空軍の望遠鏡は、衛星軌道上の宇宙機の光学的観測のために設計された。 LINEARで用いられるGEODSS望遠鏡は、ニューメキシコ州ソコロ郡ホワイトサンズミサイル射場内にあるリンカーン研究所の実験場に設置され、データはマサチューセッツ州レキシントンハンスコム空軍基地内のリンカーン研究所に送信された。

1997年3月から7月までは、1024×1024ピクセルCCDイメージセンサを用いた実地試験が行われた。このCCDは望遠鏡の視野の約1/5しかカバーできなかったが、それでも4個のNEOが発見された。1997年10月には、さらに大きい1960×2560ピクセルのCCDが使われた。これは望遠鏡の2平方度ある視野をカバーし、9個のNEOを発見することができた。1997年11月から1998年1月までに、あと5個のNEOが加わった(この時は大小両方のCCDが使われた)。

1999年10月から、2基目の1m望遠鏡が探査に用いられるようになった。2002年には、2基の1m望遠鏡で発見された天体の追跡観測のために、口径0.5mの3基目の望遠鏡がオンラインで導入された。 現在、LINEARの望遠鏡は一晩に空の各区画を5回観測する。労力のほとんどは大部分のNEOが存在すると予想される黄道面沿いの探査に費やされている。 CCDの感度、そして特に出力速度が比較的速いことによって、LINEARは毎晩空の広い領域をカバーすることができる。現在、NEO発見のほとんどはLINEARプログラムによるものである。

プロジェクトの主任研究者はグラント・ストークス、共同研究者としてジェニファー・エヴァンスエリック・ピアスが加わっている。

何万もの小惑星(2006年6月13日現在、小惑星番号が登録された小惑星の総数12万9436個のうち6万7820個)を発見したことに加えて、LINEARはいくつもの周期彗星を発見、または共同発見、または再発見している。それには11P/テンペル・スイフト・LINEAR彗星、146P/シューメーカー・LINEAR彗星、148P/アンダーソン・LINEAR彗星、156P/ラッセル・LINEAR彗星、158P/コワル・LINEAR彗星、160P/LINEAR第43彗星、165P/LINEAR第10彗星、および176P/LINEAR第52彗星=(118401) LINEAR彗星・小惑星遷移天体)などが含まれる。

はやぶさ2プロジェクト 編集

2006年10月に「はやぶさ後継機」提案書で、1999年5月10日にLINEARプログラムが発見していた1999 JU3が探査候補天体として選定された。

2013年8月、はやぶさ2プロジェクトからLINEARチームに対し、1999 JU3の名称をはやぶさ2プロジェクトから提案させて欲しいと申し入れをし、了承された。

2015年7月から8月にかけて命名キャンペーンが行われ、名称が公募された。その結果、「リュウグウ」の名称が選定された。

2015年9月、LINEARチームから国際天文学連合に対し、1999 JU3を「リュウグウ」と命名する申請がなされ、9月28日付でRyugu(162173)の名称が発表された。

関連項目 編集

外部リンク 編集