ルシン語(ルシンご、ルシーン語русиньскый язык)は、ルシン人によって話される言語であり、東スラヴ語群に分類される。セルビアヴォイヴォディナ自治州の公用語の一つ。ウクライナザカルパッチャ州スロバキア東部、ポーランド南東部、そしてハンガリーなどでも用いられている。

ルシン語
русинськый язык
話される国 ザカルパッチャ州の旗 ザカルパッチャ州ウクライナ
スロバキアの旗 スロバキア東部
ポーランドの旗 ポーランド南部
 ハンガリー
 ルーマニア北部
ヴォイヴォディナの旗 ヴォイヴォディナ自治州セルビア
クロアチアの旗 クロアチア東部
地域 中央ヨーロッパ東ヨーロッパ
話者数 見積もりでは60万[1]
統計上は5万[2]
言語系統
表記体系 キリル文字ラテン文字
公的地位
公用語 ヴォイヴォディナの旗 ヴォイヴォディナ
統制機関 統制なし
言語コード
ISO 639-3 rue
消滅危険度評価
Vulnerable (Moseley 2010)
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ルシン語はウクライナ語との共通点も多く、そのためにウクライナ語の方言としてみなされているが、話者の中にはルシン語がウクライナ語とは別の独立した言語であると考える者もいる。

言語名別称 編集

  • Carpathian
  • カルパティア=ルシン語 Carpatho-Rusyn
  • ルテニア語 Ruthenian

方言 編集

音韻 編集

子音 編集

歯茎 後部歯茎 軟口蓋 声門
m n
破裂 p t k
b d ɡ
破擦 t͡s t͡sʲ t͡ʃ
d͡z d͡zʲ d͡ʒ
摩擦 f s ʃ (ʃʲ) x h
v z ʒ (ʒʲ)
ふるえ r
側面接近 l
接近 (w)[注釈 1] j
  1. ^ [w]は[v]の異音としてのみ存在するが、Lemko方言では、[w]はポーランド語のłと同様に、口蓋化されていないLも表す。

母音 編集

前舌 中舌 後舌
i u
ɪ ɤ
中央 ɛ o
a

アルファベット 編集

ルシン語アルファベットの一覧
大文字 小文字 文字名称 翻字 国際音声記号 備考
А а a a /a/
Б б бы b /b/
В в вы v /v/
Г г гы h /ɣ/
Ґ ґ ґы g /ɡ/
Д д ды d /d/
Е е e e /e/
Є є є je /je/
Ё ё ё jo /ʏ/ パンノニア・ルシン語には存在しない
Ж ж жы ž /ʒ/
З з зы z /z/
И и и y /ɪ/
І і i i /i/ パンノニア・ルシン語には存在しない
Ы ы ы y /ɨ/
Ї ї ї ji /ji/
Й й йы j /j/
К к кы k /k/
Л л лы l /l/
М м мы m /m/
Н н ны n /n/
О о o o /o/
П п пы p /p/
Р р ры r /r/
С с сы s /s/
Т т ты t /t/
У у у u /u/
Ф ф фы f /f/
Х х хы x, ch /x/
Ц ц цы c /ts/
Ч ч чы č /t͡ʃ/
Ш ш шы š /ʃ/
Щ щ щы šč /ʃt͡ʃ/
Ѣ ѣ їть /ji/, /i/ 第二次世界大戦以前に使用されていた
Ю ю ю ju /ju/
Я я я ja /ja/
Ь ь мнягкый знак (ірь) /ʲ/ 軟音記号、口蓋化する。
Ъ ъ твердый знак (ір) パンノニア・ルシン語には存在しない

脚注 編集

  1. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed (2005). “Ethnologue report for language code:rue (Rusyn)”. Ethnologue: Languages of the World (15th ed.). Dallas, TX: SIL International. ISBN 9781556711596. http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=rue 2007年4月27日閲覧。 
  2. ^ 各国の統計局による。
  3. ^ Pugh 2009, p. 24.

関連文献 編集

  • 服部倫卓, 原田義也 編『ウクライナを知るための65章』明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2018年。 
    • 貞包和寛『ウクライナ、ルシン、レムコの多層的な関係』。 

関連項目 編集

外部リンク 編集