ロックフェラー・リパブリカン

ロックフェラー・リパブリカン(Rockefeller Republican)は、アメリカの政治において共和党の穏健派について言及するときに使われる用語。

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国の政党派閥
ロックフェラー・リパブリカン
Rockefeller Republicans
ネルソン・ロックフェラー
ロックフェラー・リパブリカンの語源となった
代表的人物 トマス・E・デューイ
ドワイト・アイゼンハワー
ネルソン・ロックフェラー
成立年月日 1930年代から1940年代にかけて
政治的思想・立場 中道 - 中道右派
穏健共和主義[1]
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第41代副大統領ネルソン・ロックフェラーの名に由来し、ロックフェラーのように共和党の中でも比較的リベラルな党員をさす。

モデレイト・リパブリカン(Moderate Republican)または共和党穏健派(きょうわとうおんけんは)、リベラル・リパブリカン(Liberal Republican)または共和党リベラル派(きょうわとうリベラルは)とも呼ばれる。

定義 編集

「ロックフェラー・リパブリカン」の定義については様々なものがあるが、一般的には次の二つが代表的な定義として挙げられる。

  • 国内政策については穏健、若しくはリベラルである一方で、外交外交政策)・安全保障政策では保守的、つまり国益バランス・オブ・パワーを重視し、バランス・オブ・パワーを破壊しようとする勢力に対する攻撃も辞さないとする立場をとる。
  • 国内政策のうち、主に社会政策について穏健、若しくはリベラルである一方で、経済政策および外交・安全保障政策の双方に関しては保守的な立場をとる。

この語の由来となったネルソン・ロックフェラー自身は、「人間に関する問題では私はリベラルだ。一方、経済財政政策に関する問題では保守主義者だ」と述べている。また現在では、元連邦上院議員で前ロードアイランド州知事リンカーン・チェイフィーのように社会政策、外交・安全保障政策の分野でリベラルで、経済政策については親ビジネスの保守派という人々も「ロックフェラー・リパブリカン」と呼ばれる。

地盤・党内勢力 編集

「ロックフェラー・リパブリカン」と総称されるこれら穏健派は、地域的には北東部を地盤とし、特にニューイングランド地方で支配的であった。このため共和党1980年代までニューイングランドで強く、例えば1988年大統領選挙において、共和党指名候補ジョージ・H・W・ブッシュ(後にこの選挙で当選し、第41代大統領に就任)はニューイングランド6州のうち4州(メインバーモントニューハンプシャーコネチカット)で勝利している。

またこれら穏健派は、いわゆる「東部エスタブリッシュメント」と呼ばれ、東部の金融界・ビジネス界と密接に結びつき、1960年代まで共和党を支配していた。しかし、西部、やがて南部の保守派が台頭し、次第に勢力を失った。現在、共和党は社会政策において保守的な様相を強め、宗教右派などの社会政策面での保守主義者が台頭しつつある。こうした中で、これら宗教左派の人々の中には共和党を離れるものも存在する。2001年に上院議員ジェイムズ・ジェフォーズが離党したのは、その一例である。

「ロックフェラー・リパブリカン」という言葉は、彼らを批判する共和党内の急進派から否定的に使われることが多い。また彼らは穏健派を「Republican In Name OnlyRINO名ばかりの共和党員(なばかりのきょうわとういん)」と呼ぶこともある。さらにロックフェラーが死去した現在、このような呼び方はいささか時代遅れになった。こうした経緯から穏健派に属する人々は、「モデレイト・リパブリカン」と自称する。

例えばジョージ・W・ブッシュ政権下においては、彼ら「モデレイト・リパブリカン」の多数はブッシュ政権の減税を支持し、その外交政策にも部分的には批判するが概ね支持を表明した。一方で、彼らは合法的な人工妊娠中絶を容認、幹細胞研究を支持する立場に立ち、同性愛者といった性的少数者LGBTの権利英語版を擁護するなど、社会政策で政権や共和党の指導部と食い違った。

共和党は結党以来、様々な異なる政策を支持する党員により基盤が構築されてきた。特に、20世紀の初頭には党内の左右対立が激化した。当時進歩主義者(Progressive Republican)と呼ばれた党内の勢力は、主に中西部農村部出身の政治家が多く、大都市圏が集中する北東部の親ビジネス的な保守派の政治家(上院議員ヘンリー・カボット・ロッジや上院議員ネルソン・アルドリッチが代表的)に対抗した。従って彼らを「ロックフェラー・リパブリカン」や今日的な意味での穏健派と分類できないが、以下の一覧には、彼らも含まれている。

共和党穏健・リベラル派、「ロックフェラー・リパブリカン」と看做される人物の一覧 編集

共和党を離党して活動した人物の一覧 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

  1. ^ Kabaservice 2012, p. xvii; Libby 2013, p. 77; Stebenne 2006, p. 38.