ワチガイソウ属

ナデシコ科の属

ワチガイソウ属(ワチガイソウぞく、学名:Pseudostellaria、和名漢字表記:輪違草属)は、ナデシコ科の1つ[1]

ワチガイソウ属
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ナデシコ科 Caryophyllaceae
: ワチガイソウ属 Pseudostellaria
学名
Pseudostellaria Pax[1][2]
和名
ワチガイソウ属
  • 本文参照
ワチガイソウ
ヒナワチガイソウ
ワダソウ
ナンブワチガイソウ
ヒゲネワチガイソウ
Pseudostellaria jamesiana

特徴 編集

小型の多年草で、は紡錘状または球形に肥厚した肉質の主根とひげ根がある。は直立し、ときに下部は地面をはう。は対生し、種によっては頂部の葉が十字形に隣接して対生するため、見かけ上は輪生状に見える。は茎先か葉腋に単生するか、2個以上が集散花序につく。片はふつう5個あり、種によって6-8個ある。花弁は萼片と同数あり、白色で、全縁か先端が浅く2裂する。雄蕊は8-10個、またはそれより少なく、葯は赤紫色になる。花柱は2-4個。果実は蒴果で2-4裂し、さらに2裂する。下部の葉腋に花弁と雄蕊が退化した雌性の閉鎖花をつける。種子は腎円形になり、円錐状の小さい突起がある[1]

分布 編集

北半球の温帯から亜寒帯に約18種あり、ヨーロッパに1種、北アメリカに2種が分布し、残りはアジア北部および東部に分布する。日本には5種が分布する[1][3]

名前の由来 編集

和名ワチガイソウ属のワチガイソウは、「輪違い草」の意で、牧野富太郎によれば、むかし、この草の名前が判らないので、その盆栽に名前不明の符号である「輪違い」のしるしをしておいたのが、そのまま名前になったという[1][4]

学名 Pseudostellaria は、ラテン語で Pseudo + Stellaria で、「偽の」+「ハコベ属」の意味[4]

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日本に分布する種 編集

和名、学名はYistによる。

  • ワチガイソウ(輪違草) Pseudostellaria heterantha (Maxim.) Pax - 紡錘状に肥厚した根は1-2個。対生する葉は離れてつき、上部のものは長卵形から卵形で、ふつう両面に毛は無い。花弁は4-5個。日本では本州(岩手県以南)、四国、九州に分布し、山地の夏緑林の林内や林縁に生育する。国外では中国大陸に分布する[1][4][5]
    • ヒナワチガイソウ(雛輪違草) Pseudostellaria heterantha (Maxim.) Pax var. linearifolia (Takeda) Nemoto; シノニム Pseudostellaria musashiensis Hiyama - 別名、ムサシワチガイソウ。葉が線形で、花弁の幅が狭く爪部分が長いためすき間が目立つ。ワチガイソウと比べ雄蕊が長い。本州(茨城県、群馬県、千葉県、東京都、三重県)、四国(徳島県、愛媛県、高知県)に分布する[1][5][6]。絶滅危惧II類(VU)(環境省2015年)。
  • ワダソウ(和田草) Pseudostellaria heterophylla (Miq.) Pax - 紡錘状に肥厚した根は1個。上部につく2対の対生する葉が隣接して十字形になり、輪生状に見える。花弁は5個で先端が浅くへこむ。花柄に短毛が密生する。日本では本州(岩手県以南)、九州(北部)に分布し、平野部の丘陵地から山地の夏緑林の林内や林縁に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸(東北部、中部、西南部)に分布する[1][4][5]
  • ナンブワチガイソウ(南部輪違草) Pseudostellaria japonica (Korsh.) Pax - 紡錘状の根は1個。対生する葉は離れてつき、上部のものは卵形で、両面と縁に毛がある。花弁は4-5個で先端が浅くへこむ。日本では本州(岩手県、宮城県、福島県、栃木県、茨城県、長野県)に分布し、山地の夏緑林の林内や林縁に生育する。国外では中国大陸(東北部)、ロシア(極東地方、シベリア)に分布する[1][4]。絶滅危惧II類(VU)(環境省2015年)。
  • ヒゲネワチガイソウ(髭根輪違草) Pseudostellaria palibiniana (Takeda) Ohwi - 紡錘状に肥厚した根は1-4個あり、細いひげ状の根もある。上部につく2対の対生する葉が隣接して十字形になり、輪生状に見えるのでワダソウに似る。花弁は5-7個で先端はへこまない。花柄に毛は無い。日本では本州(東北地方から中部地方)、四国(徳島県、愛媛県、高知県)に分布し、平野部の丘陵地から山地の夏緑林の林内や林縁に生育する。国外では朝鮮半島に分布する[1][4][5]
  • クシロワチガイソウ(釧路輪違草) Pseudostellaria sylvatica (Maxim.) Pax - 紡錘状に肥厚した根はふつう1個。対生する葉は離れてつき、すべて線状披針形で、ふつう両面に毛は無い。花弁は5個で先端が2裂する。日本では北海道、本州(青森県、岩手県、栃木県)に分布し、山地の夏緑林の林内、林縁または湿地に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸、ロシア(極東地方)に分布する[1][4][5]。絶滅危惧II類(VU)(環境省2015年)。

その他の種 編集

学名は Pseudostellaria, The Plant Listから、および分布地[3][7]

  • Pseudostellaria borodinii Pax
  • Pseudostellaria davidii (Franch.) Pax - 朝鮮半島、中国大陸、モンゴル、ロシア
  • Pseudostellaria europaea Schaeftl.
  • Pseudostellaria helanshanensis W.Z.Di & Y.Ren - 中国大陸
  • Pseudostellaria himalaica (Franch.) Pax -アジア
  • Pseudostellaria jamesiana (Torr.) W.A.Weber & R.L.Hartm. - 北アメリカ
  • Pseudostellaria oxyphylla (B.L. Rob.) R.L.Hartm. & Rabeler - 北アメリカ
  • Pseudostellaria rigida Pax
  • Pseudostellaria rupestris (Turcz.) Pax - 中国大陸、モンゴル、ロシア
  • Pseudostellaria sierrae Rabeler & R.L.Hartm. - 北アメリカ
  • Pseudostellaria tibetica Ohwi - 中国大陸
  • Pseudostellaria zhejiangensis X.F.Jin & B.Y.Ding - 中国大陸

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k 『改訂新版 日本の野生植物 4』pp.116-117
  2. ^ Pseudostellaria Pax, Tropicos
  3. ^ a b Pseudostellaria Pax, Flora of China
  4. ^ a b c d e f g 『新牧野日本植物圖鑑』pp.93-94, p.1307
  5. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.260-261
  6. ^ 『日本の固有植物』p.48
  7. ^ Pseudostellaria Pax, ITIS

参考文献 編集