一般ディリクレ級数(いっぱんでぃりくれきゅうすう、: general Dirichlet series)とは、

複素数、無限大に発散する狭義の単調増加列 および複素数 s に対して、

で表される級数のことをいう。指数型のディリクレ級数または広義のディリクレ級数ともいう。

特に、 のとき、

であり、(通常)ディリクレ級数となる。

また、 とすると、

と、ベキ級数になる。


s を変数とみなし、一般ディリクレ級数の収束性を問わないとき、形式的一般ディリクレ級数 (formal general Dirichlet series)という。


収束性 編集

収束軸 編集

任意の一般ディリクレ級数に対して、次のいずれかが成り立つ。

  1. 任意の複素数 s に対して、一般ディリクレ級数は収束する。
  2. 任意の複素数 s に対して、一般ディリクレ級数は発散する。
  3. 一般ディリクレ級数が   を満たす複素数 s に対して収束し、  を満たす複素数 s に対して発散する様な実数   が存在する。


この   を一般ディリクレ級数の収束軸 (line of convergence)または収束座標 (abscissa of convergence)という。 収束軸について、一般ディリクレ級数が常に収束するときは  、常に発散する場合は   と定める。


収束軸の値の求め方

一般ディリクレ級数

 

の収束軸   の値は、以下の様に求められる。

  •   が発散する場合
     
  •   が収束する場合
     

また、

 

という式も知られている。


絶対収束性 編集

一般の級数のときと同じく、

 

が収束するとき、一般ディリクレ級数

 

絶対収束するという。

絶対収束する複素数 s に対する、  の下限を絶対収束軸 (line of absolute convergence)または絶対収束座標 (abscissa of absolute convergence)という。 絶対収束軸について、一般ディリクレ級数がすべての点で絶対収束するときは  、常に絶対収束しない場合は   と定める。


ディリクレ級数の場合、ある点で収束すれば絶対収束する点が存在するが(ディリクレ級数の絶対収束性を参照)、ある点で収束しても、すべての点で絶対収束しない一般ディリクレ級数が存在する。

例えば

 

は、すべての複素数 s に対して収束するが、絶対収束することはない。

一般に、収束軸が有限の値   を持ち、

 

が有限の値 α をとるならば、絶対収束軸   は有限の値を持ち、  [1]であることが知られている。


絶対収束軸は、先に述べた収束軸の値を求める公式を用いて、以下の様に与えられる。

一般ディリクレ級数

 

の絶対収束軸   の値は、以下の様に求められる。

  •   が発散する場合
     
  •   が収束する場合
     

また、

 

が成り立つ。

一様収束性 編集

一般ディリクレ級数を

 

として、s を変数とする関数とみなすと、 一様収束性が問題となる。


一般ディリクレ級数の一様収束性について、収束軸   および絶対収束軸   が有限の値であるならば、 このとき、

  [2]

を満たす実数   が存在して、  を満たす複素数 s に対して、  は一様収束するが、  を満たす複素数 s に対して、  は一様収束しない。 

この   を、一様収束軸 (line of uniform convergence)または一様収束座標 (abscissa of uniform convergence)という。 一様収束軸について、一般ディリクレ級数がすべての点で一様収束するときは  、常に一様収束しない場合は   と定める。


一様収束軸の値は、収束軸・絶対収束軸とは異なる方法で求められる。

ディリクレ級数

 

の一様収束軸   の値は、以下の様に求められる。

 

ここで、

 

解析的性質 編集

正則性 編集

一般ディリクレ級数

 

は、  で収束するならば、 正則である。さらに、 微分

 

で与えられる。


  で正則である様な σ の下限を   とおくと。

 

但し、

 


一般ディリクレ級数の一意性 編集

2つのディリクレ級数

 

が、ある開領域内で収束し、そこで、  が成立するならば、すべての n に対して、  である。


一般ディリクレ級数の係数 編集

収束軸   が有限の値もしくは  である、一般ディリクレ級数

 

に対して、ω を   を満たす様にとり、  とする。このとき

 

が成立する。但し、積分路は、すべての   を通らない様にとる。


さらに、  であるならば、

 


一般ディリクレ級数の零点の個数 編集

ε、 δ、T を任意の正数とする。

収束軸   が有限の値である一般ディリクレ級数

 

に対して、  を満たす複素数   のうち、  を満たすものの個数を   とおくと、   は有限の値であり、

 

が成立する。


注釈 編集

  1. ^ α が有限の値でない場合でも、この不等式は成立する。しかし、絶対収束する点が存在するかは、この不等式からでは分からない。
  2. ^   が有限の値でなくても、この不等式は成り立つ。

参考文献 編集

関連項目 編集