三河大野駅

愛知県新城市富栄にある東海旅客鉄道の駅

三河大野駅(みかわおおのえき)は、愛知県新城市富栄外具津にある、東海旅客鉄道(JR東海)飯田線である。

三河大野駅
駅舎(2022年10月)
みかわおおの
Mikawa-ōno
本長篠 (3.5 km)
(2.4 km) 湯谷温泉
地図
所在地 愛知県新城市富栄外具津4
北緯34度57分5.01秒 東経137度36分10.45秒 / 北緯34.9513917度 東経137.6029028度 / 34.9513917; 137.6029028座標: 北緯34度57分5.01秒 東経137度36分10.45秒 / 北緯34.9513917度 東経137.6029028度 / 34.9513917; 137.6029028
所属事業者 東海旅客鉄道(JR東海)
所属路線 CD 飯田線
キロ程 35.6 km(豊橋起点)
電報略号 ワオ←ワヲ
駅構造 地上駅
ホーム 1面2線
乗車人員
-統計年度-
108人/日(降車客含まず)
-2019年-
開業年月日 1923年大正12年)2月1日
備考 無人駅
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概要 編集

豊橋駅(愛知県)と辰野駅長野県)を結ぶJR飯田線の途中駅中間駅)の一つである。所在地は新城市北東の長篠地区だが、駅名にある「大野」は駅東側を流れる宇連川の対岸にある地名である。

当駅は1923年(大正12年)、鳳来寺鉄道により開設され、1943年(昭和18年)の国有化を経て、1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化でJR東海に移管されて現在に至っている。国鉄時代は国鉄バスとの接続駅であったが、これは民営化前に廃止された。

歴史 編集

 
1977年の三河大野駅とその周囲。駅は写真中央のやや左上。川を渡った対岸が大野の町。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成

駅名となっている大野地域は、江戸期には鳳来寺秋葉山静岡県)を通る参詣路(秋葉街道)の宿場町として栄えた場所である。明治に入っても、豊橋から豊川左岸を経由して本郷(現・東栄町本郷)方面へ至る別所街道が改修され、それに伴い工業が発達し町が発展する等、宇連川流域の中心地であり、静岡県側からも買物客が来る程の賑やかな街であった。1892年(明治25年)には八名郡で初めて町制をしき、大野町となった[1]

この地方初めての鉄道は、現在の飯田線南部に当たる豊川鉄道である。豊橋駅を起点に、1900年(明治33年)に大海駅まで開通した。この時はまだ大野まで鉄道は延びなかったが、乗合馬車人力車が大海駅と大野の間で営業を始めた[2]1919年(大正8年)7月には東三自動車運輸株式会社が設立され、同社によって8月から、大海から大野・川合(現・新城市川合)を経て本郷へと至る路線バスの運転が開始された[3]。これらが三河大野駅開設前の交通事情である。

三河大野駅を開設した鳳来寺鉄道は豊川鉄道の姉妹会社であり、1923年2月1日、大海駅を起点に三河川合駅へと至る、現在のJR飯田線中南部に当たる路線を開通させた[4][5]。当駅はこの区間開通に伴い開設した[6]。同線は全線にわたって宇連川右岸に敷設されており、三河大野駅もまた宇連川右岸の南設楽郡長篠村(当時)[6]に置かれた。対岸の大野町へは1910年(明治43年)に竣工した橋爪橋(初代大野橋)という吊橋が駅開設時から存在していたが、駅の開設により車の通行できる橋が必要となったため幅員を拡大した新たな吊橋(2代目大野橋)が1924年(大正13年)12月に完成した[注釈 1][7]

鉄道開通は、町の人口減少を招いた。鉄道が開通すると大野の町は中心地としての役割が薄れて人々が都会へと出て行くことが多くなり、加えて大正に入って町にあった製糸工場が閉鎖されたこともあって、人口が減少したのである。人口の減少は周囲の町村でも見られたが、大野町の減少率はそれらよりも高かった[8]

1943年昭和18年)8月1日、鳳来寺鉄道は豊川鉄道等と共に買収・国有化されて国鉄飯田線が成立、それに伴い当駅も国鉄の駅となった[4][6]

1955年(昭和30年)12月15日国鉄バス遠三線が開通した。遠三線は、静岡県にある国鉄二俣線(現・天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線)の宮口駅との間を結んだ路線バスである[9]。ただし開通当初は大野町止まりで、大野橋改築後に当駅に乗入れた[10]。このバス路線は、1922年(大正11年)公布の改正鉄道敷設法別表に盛込まれたが実現しなかった「遠美鉄道」と呼ばれる鉄道路線ルートを先取りしていた[注釈 2][11]

1971年(昭和46年)12月1日貨物取扱を廃止した。当駅の貨物取扱は開設時から行われており、クレーンを備える木材の積出し駅として機能していた時期もあった[12]。以降旅客専用駅のまま推移する。

1987年(昭和62年)4月1日国鉄分割民営化に伴い飯田線と共に駅はJR東海に継承された[6]。一方国鉄バス遠三線は民営化を前に廃止され、鳳来町営バス(現・新城市営バス)に移管されている[11]

年表 編集

駅構造 編集

島式ホーム1面2線を有する地上駅である。ホーム番線は南側が1番線、北側が2番線である[15]

駅舎は上りホーム(1番線)側に存在する。1996年に完成[14]したこの駅舎は、山小屋風のデザインである[15]。旧駅舎は木造駅舎で、鳳来寺鉄道時代には当時静岡県側(遠州地方)からの利用が多かったことから直営の宿泊施設が併設されていた[5][16]

かつては駅員配置があったが、1991年以降[13]無人駅(駅員無配置駅)であり、管理駅駅長配置駅)である豊川駅の管理下に置かれている[17]

のりば 編集

番線 路線 方向 行先
1 CD 飯田線 上り 豊橋方面[18]
2 下り 中部天竜飯田方面[18]

利用状況 編集

2002年(平成14年)の乗車人員は、年間8万4328人(1日平均231人)で、そのうち84%に当たる7万1178人が定期券利用である[19]

その他の年の乗車人員は以下の通り[19]

  • 1998年 - 年間10万4796人・1日平均287人
  • 2000年 - 年間8万8763人・1日平均243人

停車列車 編集

2011年3月改正時点で、下り(中部天竜方面行)は1日12本(ほぼ1 - 3時間毎に1本)、上り(豊橋方面行)は13本(1 - 2時間に1本、最大1時間に2本)の列車が設定されている。種別は普通列車が主だが、上り1本のみ快速列車がある。特急伊那路」は停車しない。

駅周辺 編集

 
大野宿鳳来館

当駅の所在地は新城市富栄であり、富栄では唯一の鉄道駅である。この富栄は鳳来寺山南麓、宇連川右岸に位置する農山村である[20]。駅の場所は江戸期の旧・大峠村の地区である。同じ宇連川右岸を南西へ行くと旧・寺林村の地区へ出、反対に北東へ向かうと旧・引地村の地区へと出る。引地は大野から出る鳳来寺への参詣道が通っていた場所で、現在その道は東海自然歩道となっている[21]

新城市大野へは、駅前にある大野橋で宇連川を渡った先にある。大野には、三河大野郵便局や新城市立東陽小学校等の施設がある。駅前通り沿いにある「大野宿鳳来館」(旧・大野銀行本館)は登録有形文化財(建造物)[22]

駅前には「三河大野駅前」バス停があり、新城市Sバス秋葉七滝線湯谷温泉もっくる新城線が発着する。

隣の駅 編集

東海旅客鉄道(JR東海)
CD 飯田線
快速(上りのみ運転)・普通
本長篠駅 - 三河大野駅 - 湯谷温泉駅

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 現在ある大野橋は3代目で、1956年(昭和31年)2月に竣工した。
  2. ^ 「遠美鉄道」は、同法第63項にあった、静岡県掛川から二俣(現・浜松市)、愛知県大野、静岡県浦川(現・浜松市)、愛知県武節(現・豊田市)を経て岐阜県大井(現・恵那市)に至る鉄道を指す。『鳳来町誌』交通史編、追補 pp37-38・43-44。

出典 編集

  1. ^ 『鳳来町誌』歴史編、pp814-816
  2. ^ 『鳳来町誌』歴史編、p817
  3. ^ 『鳳来町誌』交通史編、p242
  4. ^ a b 『停車場変遷大事典』1、p156
  5. ^ a b 『鳳来町誌』交通史編、追補 pp16-20
  6. ^ a b c d e f g h 『停車場変遷大辞典』2、p100
  7. ^ 『鳳来町誌』交通史編、pp196-198,362-363
  8. ^ 『鳳来町誌』歴史編、p816
  9. ^ 『鉄道辞典』下巻、p1298
  10. ^ 『長篠村誌』、p350
  11. ^ a b 『鳳来町誌』交通史編、追補 pp167-168
  12. ^ 『鳳来町誌』交通史編、追補 pp154-155
  13. ^ a b 『飯田線百年ものがたり』、p125
  14. ^ a b 『飯田線百年ものがたり』、p144
  15. ^ a b 『中部ライン全線・全駅・全配線』第4巻、p35(配線図)・p74。方角は配線図と実際の地図との対照から補記。
  16. ^ 『タイムスリップ飯田線』、p99
  17. ^ 『東海旅客鉄道20年史』、pp732-733
  18. ^ a b 駅構内の案内表記。これらはJR東海公式サイト各駅の時刻表で参照可能(駅掲示用時刻表のPDFが使われているため。2015年1月現在)。
  19. ^ a b 『新城まちづくり計画』、p30
  20. ^ 『角川日本地名大事典』23、p896・2030
  21. ^ 『日本歴史地名大系』23、pp960・962-963
  22. ^ 文化遺産オンライン、2012年7月11日閲覧

参考文献 編集

  • 石野哲(編)『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』 1・2、JTB、1998年。ISBN 978-4-533-02980-6 
  • 笠原香・塚本雅啓『タイムスリップ飯田線』大正出版、2007年。ISBN 978-4-8117-0657-3 
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編)『角川日本地名大辞典』 23 愛知県、角川書店、1989年。ISBN 978-4-04-001230-8 
  • 川島令三『中部ライン全線・全駅・全配線』 第4巻 塩尻駅-名古屋東部、講談社、2010年。ISBN 978-4-06-270064-1 
  • 新城市・鳳来町・作手村合併協議会 『新市まちづくり計画』 (PDF) 、2004年。2012年7月9日閲覧。
  • 東海旅客鉄道(編)『東海旅客鉄道20年史』東海旅客鉄道、2007年。 
  • 東海旅客鉄道飯田支店(監修)『飯田線百年ものがたり』新葉社、2005年。 
  • 日本国有鉄道『鉄道辞典』 下巻、日本国有鉄道、1958年。 
  • 平凡社『日本歴史地名体系』 23 愛知県の地名、平凡社、1981年。ISBN 4-582-49023-9 
  • 鳳来町教育委員会(編)『鳳来町誌』 歴史編、鳳来町、1994年。 
  • 鳳来町教育委員会(編)『鳳来町誌』 交通史編、鳳来町、2003年。 

関連項目 編集