不明熱(ふめいねつ、英Fever of Unknown Origin、略称FUO)は、原因不明の発熱性症候群の総称である。 医療機関では総合診療科によって対応されることが多い。

不明熱
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 R50
ICD-9-CM 780.6
MedlinePlus 003090
MeSH D005335

定義 編集

1961年、Petersdorf,Beesonにより「38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、病院での1週間以上の入院精査でも診断がつかないもの」と定義された[1] その後の医療技術進歩に伴い、1991年にDurackとStreetにより再定義された。[2]

分類 編集

  1. 古典的不明熱
    • 38.3度以上の発熱が3週間以上持続
    • 3回の外来あるいは、3日間での入院精査でも原因不明
  2. 院内不明熱
    • 入院時に感染症は存在しない
    • 入院中に38.3℃以上の発熱が数回出現
    • 2日間の培養検査も含め、3日間での入院精査でも原因不明
  3. 好中球減少性不明熱
    • 好中球500/μL未満または一両日中に500/μL未満となる38.3℃以上の発熱が数回出現
    • 2日間の培養検査も含め、3日間での入院精査でも原因不明
  4. HIV関連不明熱
    • HIV患者
    • 38.3℃以上の発熱が数回出現
    • 外来で4週間以上、入院で3日間以上持続
    • 2日間の培養検査も含め、3日間での入院精査でも原因不明

原因 編集

不明熱の原因となる疾患は多岐にわたるが、感染症膠原病悪性腫瘍の三つが代表的であり、それ以外に、アレルギー、薬剤熱、詐熱など多数の疾患がある。[3]

2005年の順天堂大学総合診療科報告によれば感染症47%、膠原病18%、悪性腫瘍6%であるという。[4]また別の他施設研究では感染症 23.1%, 非感染性炎症疾患(膠原病含む) 30.6%, 悪性腫瘍 10.7%, その他 12.4%, 最終的に原因不明 23.1%であった[5]。この研究では、リウマチ性多発筋痛症,悪性リンパ腫,成人Still病,感染性心内膜炎などが症例数上位に位置していた。

感染症において、気道感染や尿路感染は症状が現れやすく、不明熱の原因としては決して多くはない。結核感染性心内膜炎肝膿瘍腸腰筋膿瘍などで、不明熱がみられることがある。

診断に苦慮するまれなものとして血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(IVL, AIVL)があげられる。

脚注 編集

  1. ^ Petersdorf RG, beeson PB : Fever of unknown origin : report on 100 cases. Medicine 40 :1-30, 1961
  2. ^ Durack DT, street AC : fever of unknown origin reexamined and redefined. In Current Clinical Topics in infectious Disease. Remington KS, Swata MN(eds), Boston, Blackwell, 1991
  3. ^ 不明熱診療マニュアル 林田康男監修 医学図書出版株式会社 2009
  4. ^ 大嶋弘子、内藤俊夫:総合診療科における不明熱患者215症例の解析.順天堂医学51:167-173,2005
  5. ^ Naito T, et al. Diagnostic workup for fever of unknown origin: a multicenter collaborative retrospective study. BMJ Open. 2013;3:e003971. doi:10.1136/bmjopen-2013-003971