世自在王仏(せじざいおうぶつ)は、大乗仏教の信仰対象である如来の一尊。法蔵菩薩阿弥陀如来)の師仏とされる[3]。梵名は「ローケーシュヴァラ・ラージャ」(Lokeśvararāja)。その意は「世間において自在である王[4][1]」、「世間の中の自在者の王[5]」であり、「世自在王」と訳される。別名は、音写された「楼夷亘羅」と、意訳された「世饒王仏」(せにょうおうぶつ)がある[3]

世自在王仏

世自在王仏
梵名 「ローケーシュヴァラ・ラージャ」[1][2]
Lokeśvararāja
別名 楼夷亘羅
世饒王仏
経典無量寿経
信仰 浄土教
関連項目 阿弥陀如来
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法蔵菩薩が「嘆仏偈」(「讃仏偈」)[6][7][8]で讃嘆し、「四十八願[9][10][11]・「四誓偈」(「重誓偈・三誓偈」)[12][13][14]で誓いを述べた相手である。ローケーシュヴァラ(Lokeśvara)という語はシヴァ神や観世音菩薩に対しても用いられている[1]。また『ローケーシュヴァラ讃』(Lokeśvararāja-stava)という書物が存在している[1]

今をさかのぼること無数劫という遥か過去の時代の仏で、『無量寿経』のサンスクリット本『スカーヴァティー・ヴィユーハ』では「ディーパンカラ」から過去にさかのぼること81番目にローケーシュヴァラ・ラージャという名の如来(世自在王仏)が世に出られた[15][16][17]と説かれ、康僧鎧による漢訳『仏説無量寿経』では「錠光如来」より54番目に世自在王仏が興出されたと説かれ[18][19]。世自在王仏より前に興出された仏たちを「五十三仏」という。

脚注 編集

  1. ^ a b c d 『浄土三部経』上、岩波書店、P.252。
  2. ^ 『新訂 梵文和訳 無量寿経・阿弥陀経』、P.204。
  3. ^ a b 『浄土三部経』上、岩波書店、P.297。
  4. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.26。
  5. ^ 『浄土三部経』、中央公論新社、P.19。
  6. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.26 -30
  7. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.150 -152
  8. ^ 『浄土三部経』、中央公論新社、P.19 - 21。
  9. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.32 -49
  10. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.154 - 164
  11. ^ 『浄土三部経』、中央公論新社、P.25 - 37。
  12. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.49 - 53
  13. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.165 -166
  14. ^ 『浄土三部経』、中央公論新社、P.37 - 40。
  15. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.22 - 26
  16. ^ 『浄土三部経』、中央公論新社、P.15 - 19。
  17. ^ 『新訂 梵文和訳 無量寿経・阿弥陀経』、P.61 - 66。
  18. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.148 - 149
  19. ^ 『浄土三部経』上、岩波書店、P.296。

参考文献 編集

  • 中村 元、早島鏡正・紀野一義 訳注『浄土三部経』 上、岩波書店〈岩波文庫 青306-1〉、1990年8月。ISBN 4-00-333061-7 
  • 山口 益、桜部 建、森三樹三郎 訳『浄土三部経』(再版)中央公論新社〈大乗仏典6〉、2010年4月。ISBN 4-12-203993-2 
  • 藤田宏達 訳『新訂 梵文和訳 無量寿経・阿弥陀経』法藏館、2015年5月。ISBN 978-4-8318-7077-3 

関連項目 編集