中川颯

日本のプロ野球選手 (1998-)

中川 颯(なかがわ はやて、1998年10月10日 - )は、神奈川県横浜市戸塚区出身のプロ野球選手投手)。右投左打[3]横浜DeNAベイスターズ所属。

中川 颯
横浜DeNAベイスターズ #53
2024年3月6日 横浜スタジアム
基本情報
国籍 日本の旗 日本
出身地 神奈川県横浜市戸塚区小雀町[1]
生年月日 (1998-10-10) 1998年10月10日(25歳)
身長
体重
184 cm
80 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 投手
プロ入り 2020年 ドラフト4位
初出場 2021年7月14日
年俸 650万円(2024年)[2]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

経歴 編集

プロ入り前 編集

横浜市立小雀小学校1年生の時に小雀少年野球部で野球を始める[4]。幼少期から地元球団である横浜ベイスターズに憧れを抱き、グラブ石井琢朗モデルを使用していた。また、小学生時代にベイスターズジュニアの試験を受けたこともあるが、落選している[5]横浜市立大正中学校時代に所属していた横浜泉シニアでは投手遊撃手を務め[4]、投手としてはアンダースローに転向し、全国大会出場に貢献した[1]

中学校卒業後は桐光学園高校に進学[3][6]。高校時代は1年生から主力投手として活躍[7]エースで四番としてチームを牽引し[8]、1年秋、2年秋に関東大会を経験するも[7]、甲子園出場経験はない[8]

立教大学からは投手に専念。1年時に全日本大学野球選手権で最優秀投手賞を受賞[9]。2年の秋季リーグでは3勝を挙げるが、その後は成績が向上せず、4年の秋季リーグではベンチ外も経験した[6][10]。大学時代の通算成績は61試合に登板し10勝8敗、防御率3.42[11]

 
大学時代
(2020年10月24日 明治神宮野球場)

2020年10月26日に行われたドラフト会議では、オリックス・バファローズから4位指名を受け[12][13]、11月26日に契約金5000万円、年俸900万円(金額は推定)で契約合意[14]。12月19日に入団発表会見が行われた[15]。同じ苗字の中川拓真がドラフト5位で入団し、さらには中川圭太もいるため、報道上の表記およびスコアボード上の表記はフルネームの「中川颯」となる。背番号37

オリックス時代 編集

 
オリックス・バファローズ時代
(2021年4月14日、京セラドーム大阪にて)

2021年は、ルーキーながら開幕一軍入りを果たしたが[16]、登板機会のないまま3月30日に登録抹消となった[17]。その後、7月10日に再び一軍昇格し[18]、同14日の北海道日本ハムファイターズ戦(帯広の森野球場)で、7回裏に4番手としてプロ初登板を果たした[19]。一軍での登板はこの1試合のみに終わったが、ウエスタン・リーグでは41試合に登板し、防御率1.13の成績を残した[20]。12月2日、50万円減となる推定年俸850万円で契約を更改した[20]

2022年は春季キャンプから肩の不調を抱え、中川本人は大きな故障ではないと判断して二軍公式戦に登板していたが[21]、ウエスタン・リーグ6試合の登板で防御率5.87に終わり、6月9日以降は公式戦のマウンドに上がることができなかった[22]。一軍での登板機会はなく、10月5日に戦力外通告を受け[23]、12月4日に育成選手として再契約した[24]。背番号は123[24]。推定年俸は、200万円減となる650万円となった[24]

2023年の春季キャンプには参加せず、肩と不調を治すために大阪市内の球団施設「舞洲」に残り、球団スカウトとキャッチボールを行った。3月からリハビリを始め、痛みがなくなった5月には投球を再開した[21]。肩の不安がなくなり、7月29日までに12試合で17回1/3、奪三振21、四死球1、防御率0.51と好成績を残したが、登録期限の31日までに支配下復帰はならなかった[21]。最終的な二軍成績は21試合の登板で32回2/3を投げ、34奪三振、防御率1.38の成績で[25]WHIPは0.67、tRA(守備から独立した投手の失点率を推定、評価する指標)は1.90の数値になるなど、各指標も高数値であったが[26]、10月5日に球団より2度目の戦力外通告を受けた[21][27]

DeNA時代 編集

2023年11月17日、中川の地元球団でもある横浜DeNAベイスターズが支配下選手としての獲得を発表した[28][29]。背番号は53[30]。推定年俸はオリックス時代と同じく650万円[2]。11月29日に行われた入団会見では「地元が横浜ということで、ベイスターズのユニホームを着てプレーすることが幼いときからの夢でした」と地元球団への入団を喜んだ[31]。なお、DeNAには同じ苗字の投手である中川虎大が在籍しているため、スコアボード上の表示および報道上の表記はオリックス時代から引き続きフルネームの「中川颯」を、背ネーム表記は「HAYATE[32]をそれぞれ使用する。また、高校時代にバッテリーを組んだ大坪亮介がブルペン捕手として在籍している[7][33]

2024年は春季キャンプをA班で迎える[34]。先発投手として期待されると、練習試合やオープン戦で好投を見せ[35]、オープン戦には3試合の登板で13回を投げて無失点に抑えた[36]。開幕ローテーション入りをつかみ[36]、4月4日の対阪神タイガース戦(京セラドーム大阪)でプロ入り初先発登板した(5回を投げ切れず、勝ち負けつかず)[37]。その後は、状況や点差に関係なく待機するロングリリーフに配置転換され[38]、10日の対中日ドラゴンズ戦ではリリーフで第二先発の役割を担い、自身最長の5回を1失点で投げ切る力投を見せた[39]。ロングリリーフで存在感を示すと、ローテーションの再編で再度先発に配置転換され[40]、30日の対中日ドラゴンズ戦(バンテリンドーム ナゴヤ)でプロ入り2度目の先発登板をする。6回を被安打2、与四死球0、無失点と好投していたが、7回で無死から2連打を浴びると右腕を気にする様子を見せ、勝利投手の権利を持ったまま緊急降板となった(降板後に1失点)[41]が、リリーフ陣が1点差を死守し、2-1で勝利。プロ4年目にして初勝利を挙げた[42]

選手としての特徴 編集

投球フォームは184cmの長身を折り曲げるアンダースロー[43]、地表約10cmから浮き上がる[21]最速136km/h[44]ストレートに、カーブスライダーシンカー(ツーシームとも[21])などといった変化球を投じる[45]。中川自身は、変化球でかわすイメージより「真っすぐの強さを武器にしていきたい」と語っている[46]。2023年の二軍での投球では、奪三振割合 (K%) が29.1%と高めだが、フライ割合も59.7%と高いフライボールピッチャーでもあり、広い球場と相性が良いと推測される[26]

高校時代の通算本塁打は26本を記録し、長打力だけでなくバットコントロールに優れた野手としてもプロから注目されていた[8]。オリックス時代は二軍含めて打席に立つ機会はなかったが、DeNA移籍後は二軍で打席に立った際に初打席初安打を記録している[47]

DeNAの常務取締役チーム統括本部長の萩原龍大によれば、「プロスカウトの戦力外になる可能性のある選手のリストの中でも上位に入ってくる選手」という評価だったと言い[46]、オリックス戦力外後にはすぐさまDeNAのスカウト部スカウティングディレクター(当時)の河原隆一[5]から連絡が入った[48]

詳細情報 編集

年度別投手成績 編集





















































W
H
I
P
2021 オリックス 1 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 5 1.0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 2.00
通算:1年 1 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 5 1.0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 2.00
  • 2023年度シーズン終了時

年度別守備成績 編集



投手












2021 オリックス 1 0 0 0 0 ----
通算 1 0 0 0 0 ----
  • 2023年度シーズン終了時

記録 編集

初記録
投手記録
打撃記録
  • 初打席:2024年4月4日、対阪神タイガース3回戦(京セラドーム大阪)、2回表に西勇輝から投直
  • 初安打:2024年4月30日、対中日ドラゴンズ4回戦(バンテリンドーム ナゴヤ)、2回表に小笠原慎之介から投手内野安打

背番号 編集

  • 37(2021年 - 2022年)
  • 123(2023年)
  • 53(2024年 - )

脚注 編集

  1. ^ a b プロ野球ドラフト会議 横浜市戸塚区内出身者2人に指名 横浜高校・松本、立教大学・中川両投手 | 戸塚区」『タウンニュース』2020年11月5日。2021年7月11日閲覧
  2. ^ a b 【DeNA】「ハマのサブマリン」中川颯、オリックス戦力外から新天地で再起誓う」スポーツ報知、2023年11月30日。2024年1月9日閲覧
  3. ^ a b 中川颯 « 部員名簿」『立教大学野球部』。2020年10月31日閲覧
  4. ^ a b 中川颯」『週刊ベースボールONLINE』。2024年4月2日閲覧
  5. ^ a b 石塚隆「「もう野球を辞めようかと」オリックス戦力外、中川颯にかかってきた1本の電話…オープン戦8回無失点、“ハマのサブマリン”が誕生するまで」『Number Web』2024年3月11日、2頁。2024年4月2日閲覧
  6. ^ a b 立大・中川 “DIYマウンド”で復活だ!東京六大学野球春季リーグ戦10日開幕」『スポーツニッポン』2020年8月9日。2021年2月22日閲覧
  7. ^ a b c 桐光学園出身のアンダースロー・中川颯がDeNA入団! 2016年の神奈川大会を沸かせた男が再びハマスタに!」『高校野球ドットコム』2023年11月19日。2023年11月22日閲覧
  8. ^ a b c 立教大学【六大学戦力分析企画】二刀流のルーキー・中川颯」『スポーツニッポン』2017年3月27日。2021年2月22日閲覧
  9. ^ 立大が早大に雪辱 中川が救援で5回1失点で今季初勝利 観戦の母にウイニングボール贈る」『スポーツニッポン』2019年5月12日。2021年2月22日閲覧
  10. ^ オリから4位指名 立大・中川、今季初勝利 プロの世界でも「カベを乗り越えていきたい」」『スポーツニッポン』2020年10月31日。2021年2月23日閲覧
  11. ^ リーグ戦・選手個人通算成績」東京六大学野球。2021年2月23日閲覧
  12. ^ 2020年度ドラフト会議 契約交渉権獲得選手」『オリックス・バファローズ オフィシャルサイト』2020年10月26日。2020年10月31日閲覧
  13. ^ 野球部の中川颯さんがプロ野球ドラフト会議でオリックス・バファローズから4位指名」『立教大学』2020年10月27日。2020年10月31日閲覧
  14. ^ オリックス ドラ4中川颯と仮契約「山田久志さんのような偉大な投手に」」『デイリースポーツ』神戸新聞社、2020年11月26日。2021年3月18日閲覧
  15. ^ 2019/12/19(土) チーム 新人選手入団発表記者会見」オリックス・バファローズオフィシャルサイト、2020年12月19日。2021年3月17日閲覧
  16. ^ 2021年3月25日の出場選手登録、登録抹消」『日本野球機構』2021年3月23日。2021年3月24日閲覧
  17. ^ オリックスは安達とヒギンスが一軍合流 30日のプロ野球公示」BASEBALL KING、2021年3月30日。2021年12月4日閲覧
  18. ^ 【10日の公示】中日 松葉登録、小笠原を抹消」『スポーツニッポン』2021年7月10日。2022年12月3日閲覧
  19. ^ オリックス期待のサブマリン ドラ4・中川颯がプロ初登板で1回零封「楽しかったし、勉強になった」」『スポーツニッポン』2021年7月15日。2022年12月3日閲覧
  20. ^ a b オリックスのルーキー中川颯 悔しい50万円減でサイン「1試合しか投げられなかった」」『スポーツニッポン』2021年12月2日。2022年12月3日閲覧
  21. ^ a b c d e f 北野正樹「「つらくて悔しい3年間だったが、後悔なく完全燃焼できた」2度の戦力外通告にも前を向くオリックス・中川颯」『BASEBALL KING』2023年10月6日。2024年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月31日閲覧
  22. ^ 中川 颯 - オリックス・バファローズ - プロ野球」『スポーツナビ』。2023年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月31日閲覧
  23. ^ オリックスが中川颯と海田に戦力外通告 海田は今季プロ初の一軍登板なし」『BASEBALL KING』2022年10月5日。2022年12月3日閲覧
  24. ^ a b c 【オリックス】4選手と育成契約 戦力外通告の中川颯も再契約」『スポーツ報知』2022年12月3日。2022年12月3日閲覧
  25. ^ 2023年度 オリックス・バファローズ 個人投手成績(ウエスタン・リーグ)」NPB.jp 日本野球機構。2023年10月5日閲覧
  26. ^ a b 2度目の戦力外も…他球団なら大活躍? 「0.67」の好投見せた"絶滅危惧種"右腕」『Full-Count』2023年10月6日。2023年11月7日閲覧
  27. ^ 【オリックス】育成含む5選手に戦力外通告 結婚発表したばかりの石岡諒太「まだまだ見せたい」」『スポーツ報知』2023年10月5日。2023年10月5日閲覧
  28. ^ 2024年シーズン 選手契約について」『横浜DeNAベイスターズ オフィシャルサイト』2023年11月17日。2023年11月29日閲覧
  29. ^ 【DeNA】森唯斗&中川颯の獲得を発表、堀岡隼人は育成選手で契約 投手陣の補強に成功」日刊スポーツ、2023年11月17日。2024年1月8日閲覧
  30. ^ 中川颯選手 入団記者会見」『横浜DeNAベイスターズ オフィシャルサイト』2023年11月29日。2023年11月29日閲覧
  31. ^ 前オリックス育成、DeNA入団の中川颯が会見「祖父は泣いていた」」スポーツニッポン、2023年11月29日。2024年1月9日閲覧
  32. ^ 戦力外からの再起へ…25歳は「ロマンの塊」 希少な美フォームが「躍動感溢れてる」」『Full-Count』2024年2月2日。2024年2月19日閲覧
  33. ^ 【DeNA】8年ぶりバッテリー結成…中川颯、桐光学園時代に組んだ大坪亮介ブルペン捕手に投球」『日刊スポーツ』2024年3月4日。2024年3月5日閲覧
  34. ^ DeNA・中川颯、対外試合7イニング無失点!新天地で開幕ローテ入りなるか」『BASEBALL KING』2024年2月26日。2024年4月2日閲覧
  35. ^ DeNA・中川颯、実戦4試合13回0封 サブマリン開幕ローテ大浮上」『サンスポ』2024年3月7日。2024年4月2日閲覧
  36. ^ a b 【DeNA】阪神との開幕2カード目でジャクソン、浜口、中川颯が先発へ 開幕ローテ大筋固まる」『日刊スポーツ』2024年3月25日。2024年4月2日閲覧
  37. ^ DeNAプロ初先発バッテリー 中川颯2失点ガックリ 松尾は左前打に手応え」『Sponichi Annex』2024年4月5日。2024年4月5日閲覧
  38. ^ 大木穂高「DeNA、ここまでの「陰のMVP」は中川颯! 近い将来、再び先発登板のチャンスが訪れる可能性も」『Sponichi Annex』2024年4月23日。2024年4月25日閲覧
  39. ^ DeNA・中川颯、初登板小園の後受け〝第2先発〟で力投5回1失点」『サンスポ』2024年4月5日。2024年4月11日閲覧
  40. ^ 【DeNA】29日からの中日3連戦でローテ再編 中5日ジャクソンがカード頭、中川颯ら先発濃厚」『日刊スポーツ』2024年4月28日。2024年4月30日閲覧
  41. ^ DeNA 好投の中川颯が緊急降板 七回途中トレーナーとベンチへ」『デイリースポーツ online』2024年4月30日。2024年4月30日閲覧
  42. ^ 戦力外経験のDeNA・中川颯がプロ初勝利!3年でオリックス退団 新天地で七回途中1失点の力投「ひとつ恩返しができた」”. デイリースポーツ (2024年4月30日). 2024年4月30日閲覧。
  43. ^ 阪神・大山が意地の先制犠飛 7番で出場」デイリースポーツ online、2022年3月20日。2022年3月20日閲覧
  44. ^ 下手投げオリックス4位中川「七色の変化球」で挑む」『日刊スポーツ』2021年1月16日。2024年2月19日閲覧
  45. ^ オリのドラ4中川颯はミスターをうならせたサブマリン 「進撃の巨人」を武器に進撃や」『スポーツニッポン』2021年1月29日。2021年2月23日閲覧
  46. ^ a b DeNA、"ハマのサブマリン"誕生!ハマっ子・中川颯が会見で感謝「本当にありがたい。その期待に応えたいなと思うのが率直な気持ち」」『BASEBALL KING』2023年11月29日。2024年2月19日閲覧
  47. ^ 2024年3月28日 オイシックス新潟アルビレックスBCvs.横浜DeNAベイスターズ 試合出場成績 - プロ野球」『スポーツナビ』。2024年4月15日閲覧
  48. ^ サブマリンの輝き「地元で」 中川颯(はやて)選手(横浜泉リトルシニア出身)」『タウンニュース 泉区版』2024年1月1日。2024年2月19日閲覧

関連項目 編集

外部リンク 編集