主人と奴隷(しゅじんとどれい, : master & slave)とは、ゲーム理論におけるゲームの1つ「囚人のジレンマ」(プレイヤー=囚人が、ゲームの繰り返し回数を知らされない無期限繰り返しゲーム)での戦略の1つ。

2004年に開催された「囚人のジレンマ」誕生20周年記念大会において、それまで最強とされていたしっぺ返し戦略とその亜種を破り、優勝を果たした[1][2]

主人と奴隷戦略主人-奴隷戦略と表記されることもある[2]

この戦略は、イギリスサウサンプトン大学ニック・ジェニングズ英語版教授と同大学の博士課程に在籍しているゴーパル・ラムチャーンが率いたチームによるものである[1]。サウサンプトン大学チームは60のプログラムを大会に参加させている[2][3]

戦略の概要 編集

主人と奴隷戦略の概要は以下のようになる[1][2][3]

  • あらかじめ決めた順序パターンで協調裏切りを5回から10回出し、相手が自分のチームの仲間か否かを判断する。
    相手が仲間ではないと判断された場合
    • 常に裏切りを出すことで、可能な限り対戦相手の点数を下げようとする。
    相手が仲間であると判断された場合
    • プログラムの内、奴隷の役割が割り振られているものは、常に協調を出す。
    • プログラムの内、主人の役割が割り振られているものは、常に裏切りを出す。

成績 編集

前述のように他のプログラムを抑えて、サウサンプトン大学チームによるプログラムが優勝し、成績の上位3位も独占した。ただし、成績の下位には奴隷の役割を与えられていたプログラムが多数ある[1][3]

ジェニングズ教授は優勝の賞品として50ドルの小切手と小さな記念のプレートを受け取っている[1]

出典 編集

  1. ^ a b c d e ウェンディー・M・グロスマン英語版 (2004年10月13日). “New Tack Wins Prisoner’s Dilemma”. WIRED.com. 2016年9月6日閲覧。
  2. ^ a b c d 大澤博隆,今井倫太 (2007年). “人間同士による繰り返し型囚人のジレンマゲームの実施と結果”. 2016年9月6日閲覧。
  3. ^ a b c ジョン・T・カシオポ、ウィリアム・パトリック著、柴田裕之 訳「何にもましてチームワーク」『孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか』河出書房新社、2018年。ISBN 978-4309464657