久野顕司

日本のロボコニスト

久野 顕司(ひさのけんじ)は日本のロボコニスト[1]、生産技術者[2]北九州工業高等専門学校時代にNHK高専ロボコンに出場(3年次に操縦者として全国大会出場、4年次には全国ベスト4・技術賞受賞)[3][4]名古屋工業大学時代にはNHK学生ロボコンで日本一となり、同年のABUロボコンでは準優勝を成し遂げた[3][4]。通称の「ヒサケン」はNHK学生ロボコン2014優勝時のTV放映後に、Twitterでトレンド入りしている[5][注 1]

ロボカップでも中型リーグのチーム「Hibikino-Musashi」でジャパンオープン優勝[6][7]、小型リーグのチーム「Scramble」でも2年連続日本ロボット学会賞受賞の実績がある[8][9]。ロボコン事務局のOB解説[10]や、ロームの運営する『Device Plus』で取材を担当[11][12][13]見ル野栄司のレポート漫画にも登場した[1]。Scrambleが発展した次世代ロボットエンジニア支援機構でも活動している[14][15]

来歴・人物 編集

北九州工業高等専門学校時代 編集

2008年に北九州工業高等専門学校に進学し、NHK高専ロボコンに出場する「あばうたぁ〜ず」で活動[3][4]。同高専は2002年と2007年に全国優勝の実績があり[16][17][注 2]、2008年には地区大会技術賞・全国大会出場[19]、2009年には全国大会でベスト4になっている[3]。2010年の全国大会前日のテストランでトラブルに見舞われ、大会当日は1回戦は突破するも2回戦で敗退[20]。2011年は全国ベスト4・技術賞を受賞し、久野自身も頑丈過ぎない設計や効率的な分業ができたと述懐している[4]

2012年の5年生時には集大成と意気込んで地区大会に臨むも決勝戦で敗退し、全国大会推薦も逃す[4][21]。地区大会敗退に虚無感を感じた久野は、大学でもロボコンに挑戦することを決意したという[4][21]。なお、制御情報工学科での卒業研究のテーマは、「歯切り理論に基づいたマシニングセンタによる歯車製作」であった[22]

名古屋工業大学時代 編集

2013年、名古屋工業大学に進学[23]。ロボコン工房でNHK学生ロボコンに参加[21]。高専時代の体育会系の雰囲気とは違った個性的なメンバーや自由な活動体制に戸惑うが、子供ロボット一台の設計・製作・整備を担当し、機械班の工場利用を促進するなどした[24][21][4]。ピットクルーとして参加した2014年6月開催のNHK学生ロボコンでは優勝し[3][25]、高専時代の雪辱を晴らす[23]。大会のTV放映後には、通称の「ヒサケン」がTwitterでトレンド入りした[5][注 1]

2014年8月にインドプネで開催されたABUロボコンでは、トラブルに見舞われ予選リーグで1勝1敗となるが決勝トーナメントに進出し、準優勝となる[26][27][28][29][30]。久野はABUロボコンについて「めちゃくちゃ楽しい」[31]、「交流が盛ん」[23]と語るとともに、「日本と世界大会のフィールドの違い」が大きく「環境の違いに対応できるようにすることが必要」と振り返っている[23]。なお、その年の高専ロボコン2014全国大会では、ニコニコ生放送のOB技術解説を担当している[10][32]

九州工業大学大学院時代 編集

九州工業大学大学院に進学[11]。2015年の学生ロボコン高専ロボコンでは、ローム株式会社の『Device Plus』で学生コメンテーターなど取材を担当[11][12]。同年11月28日に開催されたひびきの学術研究都市内の1.5kmをロボット・人・犬が走る「第2回学研ヒルズ学際駅伝大会」には[33][34][35][注 3]、ロボット「Musashi」を有するチーム「マスダワークス.com」で出場[36]。アドバンテージタイム部門で優勝し、九州工業大学学長賞を受賞した[35]。同年12月の高専ロボコンの学生交流会にも参加し、高専生に学生ロボコンを紹介した[31]

ロボカップの中型リーグでは九州工業大学、西日本工業大学日本文理大学による北部九州連合チームである「Hibikino-Musashi」[7]に参加し[6]、ロボカップジャパンオープン2015(福井大会)[37]、2016(愛知大会)で優勝を果たす[7][38]。また、石井和男のもとで射出角度を調整できるキック機構の開発に取り組んでいる[39]。なお、2016年の学生ロボコンでも『Device Plus』の取材を担当し[40][13]見ル野栄司のレポート漫画にも登場した[1]

Scrambleでの活動など 編集

2017年のNHK高専ロボコン30周年企画では作品「パタパタディスプレイ」を投稿した[41]。同年、高橋智也川節拓実河原貴軌をはじめとする高専ロボコンや学生ロボコンの経験者と、ロボカップサッカーへ挑戦するチーム「Scramble」を結成[42][43]。直接顔を合わせたことがないメンバーもいる中、SlackSkypeを駆使して開発を進め、2018年の初出場時には大会会場でようやく動く状態であったものの、ロボットは動いて試合に出場できた[42]。回路とモータを一体にして小型化したシステムが評価され、日本ロボット学会賞を受賞[8][42]

翌2019年もロボカップに挑戦し、横方向キック機構が評価されて二年連続の日本ロボット学会賞を受賞する[9][44]。その後チーム「Scramble」は非営利活動法人「次世代ロボットエンジニア支援機構」に発展[45][46]。久野は同機構が開催する「FA設備技術勉強会」[45][46][注 4]でも講演[14][15]。機構のメンバーとしてフィールドロボット講演会でも発表する[47]。2020年・2021年とRoboMasterのチーム「FUKUOKA NIWAKA」にも参画している[48][49]

主な受賞歴 編集

ロボコン戦績 編集

その他 編集

  • 2015年11月[33] - 第2回学研ヒルズ学際駅伝大会[注 3] 九州工業大学学長賞(チーム「マスダワークス.com」としてアドバンテージタイム順位1位[35]
  • 2020年2月 - CAD利用技術者試験 2019年度後期 合格者表彰(3次元CAD利用技術者試験1級 一般部門)[51]

社会的活動 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ a b トレンド入りした際の引用ツイートが見受けられる。 - 山貝@scrambleなPによる2014年7月21日のツイート、2021年9月5日(UTC)閲覧。
  2. ^ 北九州工業高等専門学校は、2017年のNHK高専ロボコンでも全国優勝している[18]
  3. ^ a b 「学研ヒルズ学際駅伝大会」は九州工業大学の主催で、西日本工業大学福岡大学などの学生も参加する[56][35]。人だけ、人とロボット、人と犬のチームのいずれでも出場できることが特徴である[33][56]。2023年の第8回大会は5月13日に開催され、人と犬は1.6km、ロボットは0.8kmの距離を走るレギュレーションであった[56]。第2回大会は人も犬もロボットも1.5kmを走るが、ロボットや犬はアドバンテージとしてタイムを差し引きする[33][34]。また、第2回大会は1チーム6走者であったが[33][36]、第8回大会は1チーム4走者であった[56]
  4. ^ 「FA設備技術勉強会」は2019年11月に第1回が開催され、2021年の第3回からオンライン開催されている[46]。3か月に一回ほどのペースで開催され、2021年の12月時点で同時接続で200人近い参加者を集めたという[46]
  5. ^ ただし、表彰状に記載された選手には入っていない[37]
  6. ^ 2017年度は報告書中で会員名簿できる[52]が、2018年度[53]、2019年度[54]は会員人数のみで会員名簿を閲覧できない。

出典 編集

  1. ^ a b c 見ル野栄司 (2016年8月17日). “発明王!?ミルノメーカー【第37話】NHK学生ロボコン2016デバイスプラス. ローム. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  2. ^ MEMBERS2021”. FUKUOKA NIWAKA. における「北九州高専OB/名古屋工業大学OB/九州工業大学OB 久野 顕司 Hisano Kenji」の「VIEW PROFILE」の「略歴」を参照、2023年6月26日(UTC)閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h NEP 2016a.
  4. ^ a b c d e f g h NEP 2016b.
  5. ^ a b c Device Plus 編集部 (2014年8月23日).“ついに開幕 ABUアジア・太平洋ロボットコンテストーABUロボコン2014 インド・プネから現地レポート!”. Device Plus. ローム. 2021年9月3日(UTC)閲覧。
  6. ^ a b c d Device Plus 編集部 (2017年6月1日). “ロボカップ2017 | 20年ぶりに発祥の地、名古屋で開催!”. Device Plus. ローム. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  7. ^ a b c d 競技結果”. ロボカップジャパンオープン2016. 愛知工業大学. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  8. ^ a b c 競技結果ロボカップサッカー”. ロボカップジャパンオープン2018おおがき. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  9. ^ a b c 競技結果 ロボカップジャパンオープン2019ながおか 競技結果”. 競技結果. ロボカップ日本委員会. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  10. ^ a b 全国大会 生配信!OB陣による技術解説 2014/11/23(日) 12:30開始 (6時間17分)”. ニコニコ生放送. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  11. ^ a b c 学生ロボコン2015出場ロボット解剖計画”. Device Plus. ローム. 2015年12月28日(JST)閲覧・ダウンロード。
  12. ^ a b 高専ロボコン2015出場ロボット解剖計画”. Device Plus. ローム. 2016年3月14日(JST)閲覧・ダウンロード。
  13. ^ a b Device Plus 編集部 (2016年7月22日). “NHK学生ロボコン2016 大会振り返りと記事まとめ”. Device Plus. ローム. 2023年3月26日(UTC)閲覧。
  14. ^ a b 第4回FA設備技術勉強会”. connpass. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  15. ^ a b FA設備技術勉強会 in Kyoto”. connpass. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  16. ^ HISTORY第15回プロジェクトBOX”. 高専ロボコン. NHKエンタープライズ. 2023年6月3日(UTC)閲覧。
  17. ^ HISTORY第20回風林火山 ロボット騎馬戦”. 高専ロボコン. NHKエンタープライズ. 2023年6月3日(UTC)閲覧。
  18. ^ HISTORY第30回大江戸ロボット忍法帳”. 高専ロボコン. NHKエンタープライズ. 2023年6月3日(UTC)閲覧。
  19. ^ 高専ロボコン2008九州沖縄地区大会結果報告 高専ロボコン2008九州沖縄地区大会結果報告”. トップページ過去データ. 佐世保高専同窓会. 2023年6月4日(UTC)閲覧。
  20. ^ 「ロボコン2010メモ」『志遠』第59号、2010年12月、8頁。
  21. ^ a b c d Device Plus 2014b.
  22. ^ 「制御情報工学科卒業研究」『志遠』第66号、2013年、16頁。
  23. ^ a b c d NEP 2016c.
  24. ^ Device Plus 2014a.
  25. ^ Device Plus 編集部 (2014年6月1日). “NHK大学ロボコン2014:結果リポート!!”. Device Plus. ローム. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  26. ^ Device Plus 編集部 (2014年8月24日).“ABUロボコン2014 予選リーグ 結果速報”. Device Plus. ローム. 2021年9月3日(UTC)閲覧。
  27. ^ Device Plus 編集部 (2014年8月24日).“ABUロボコン2014 決勝トーナメント出場校 準々決勝”. Device Plus. ローム. 2021年9月3日(UTC)閲覧。
  28. ^ a b Device Plus 編集部 (2014年8月24日).“ABUロボコン2014準決勝。ベトナムVSインドネシア、タイVS日本”. Device Plus. ローム. 2021年9月3日(UTC)閲覧。
  29. ^ Device Plus 編集部 (2014年8月24日).“ABUロボコン2014決勝。世界一は日本代表の名工大か!? 大会最速ベトナムか?”. Device Plus. ローム. 2021年9月3日(UTC)閲覧。
  30. ^ 2014年9月23日放送 9:05 - 10:00 NHK総合 ABUロボコン2014「最速で夢をつかめ 若きエンジニアの熱い一日」”. 番組情報. TVでた蔵. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  31. ^ a b 高専ロボコン東北地区交流会に編集部が潜入 疾風怒濤の24時間 前半戦!”. Device Plus. ローム. (2015年12月25日) 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  32. ^ Device Plus 編集部 (2014年11月27日). “Maker Faire Tokyo 2014レポ:ものづくりは、こんなにも「自由」なのだ! その1(見ル野コメント付き!)”. Device Plus. ローム. 2023年6月3日(UTC)閲覧。
  33. ^ a b c d e 第2回学研ヒルズ学際駅伝大会 2015年11月28日(土)12時スタート”. 九州工業大学社会ロボット具現化センター. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  34. ^ a b アドバンテージ”. 第2回学研ヒルズ学際駅伝大会. 九州工業大学社会ロボット具現化センター. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  35. ^ a b c d 九州工業大学社会ロボット具現化センター. “第2回学研ヒルズ学際駅伝大会_2015”. photos.google.com. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  36. ^ a b 第2回学研ヒルズ学際駅伝大会結果表”. 第2回学研ヒルズ学際駅伝大会. 九州工業大学社会ロボット具現化センター. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  37. ^ a b c 「Hibikino-Musashi」がロボカップジャパンオープン サッカー中型ロボットリーグ8連覇を達成”. TOPICS アーカイブ. 九州工業大学. (2015年5月13日) 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  38. ^ a b ロボカップジャパンオープン2016”. 学生活動. 西日本工業大学. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  39. ^ 町田直人、久野顕司、石井和男「ロボカップサッカーにおけるキックシステムの開発」『ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集2017』2017年、2P1-K08。
  40. ^ 学生ロボコン2016出場ロボット解剖計画”. Device Plus. ローム. 2023年6月3日(UTC)閲覧・ダウンロード。
  41. ^ ロボコン30年記念企画 第1弾「ROBOCON 30th」お祝いロボット”. NHKエンタープライズ. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  42. ^ a b c このロボットがすごい! (2019年7月17日). “NHKロボコンOB・OGの次なる挑戦-RoboCup SSL Team Scramble- / 川節 拓実(Takumi KAWASETSU,Scramble/大阪大学)/このロボットがすごい2018”. YouTube. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  43. ^ RoboCupSSLチームメンバー”. 次世代ロボットエンジニア支援機構. 2023年3月26日(UTC)閲覧。
  44. ^ a b 表彰状サッカー小型ロボットリーグ Scramble”. 次世代ロボットエンジニア支援機構. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  45. ^ a b 川野俊充 (2021年12月23日). “AIやLabVIEW操る中高生、社会人愛好家とロボコンで世界に挑戦”. 日経XTECH. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  46. ^ a b c d 高須正和 (2021年12月24日). “日本の製造業エンジニア主導で進めるオープンイノベーション〜FA設備技術勉強会”. DG Lab Haus. 2023年6月26日(UTC)閲覧。
  47. ^ フィールドロボティクス勉強会にて登壇しました”. 次世代ロボットエンジニア支援機構 (2019年12月28日) 2023年3月26日(UTC)閲覧。
  48. ^ MEMBERS2020”. FUKUOKA NIWAKA. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  49. ^ MEMBERS2021”. FUKUOKA NIWAKA. 2023年3月26日(UTC)閲覧。
  50. ^ このロボットがすごい! (2019年7月17日). “NHKロボコンOB・OGの次なる挑戦-RoboCup SSL Team Scramble- / 川節 拓実 /このロボットがすごい2018”. YouTube. 2023年6月3日(UTC)閲覧。
  51. ^ CAD利用技術者試験 2019年度後期 合格者表彰のご案内”. CAD利用技術者試験センター. (2020年2月27日) 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  52. ^ a b 特定非営利活動法人 ロボカップ日本委員会「平成29年度末会員数」『平成29年度事業報告書 平成29年度決算報告書』、4頁、2021年9月1日(UTC)閲覧。
  53. ^ 特定非営利活動法人 ロボカップ日本委員会「平成30年度末会員数」『2018年度事業報告書 2018年度決算報告書』、3頁、2021年9月1日(UTC)閲覧。
  54. ^ 特定非営利活動法人 ロボカップ日本委員会「2019年度末の会員数」『2019年度事業報告書 2019年度決算報告書』、4頁、2021年9月1日(UTC)閲覧。
  55. ^ 会員一覧”. 次世代ロボットエンジニア支援機構. 2021年9月1日(UTC)閲覧。
  56. ^ a b c d 人・犬・ロボ たすきつなぐ 若松 学研都市で駅伝大会”. 読売新聞. (2023年5月14日) 2023年6月26日(UTC)閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集

関連組織
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