人民共和国

主にマルクス・レーニン主義を標榜したりソ連型社会主義体制を布く政府によって用いられていた国号

人民共和国(じんみんきょうわこく、: People's Republic: République populaire: Народная Республика転記:Narodnaya Respublika)とは、国号に用いる政体を表す言葉であり、社会主義国の一種でもある。現在においては、中華人民共和国北朝鮮ラオスアルジェリアバングラデシュが用いている。

人民共和国(People's Republic)を称する、あるいは過去に称した国々
  人民共和国を称する国
  かつて人民共和国を称した国

民主主義国家社会主義共和国の間の移行体制とされ、立法や行政制度は議院内閣制にする。形式的に野党が存在しているが、事実上は政権交代が無いため、与党が共産党に限定されるヘゲモニー政党制の国家である[1][2]

名称 編集

現在の共和国の英語republicの語源は、ラテン語の"res publica"であり、これは「人民のもの」を意味している。マルクス・レーニン主義を指導思想とする人民共和国は、ある意味二重表現とも言える。

類義語 編集

社会主義国社会主義共和国とは類義語である。

社会主義共和国と人民共和国の違いは、最終的ゴールにある。共産主義社会を目指すのが社会主義共和国であり、社会主義社会を目指すのが人民共和国である。つまり、人民共和国は他の主義や価値観から離脱したばかりの状態、「社会主義共和国になる前の国号」のこと。

また、社会主義国は「自国を社会主義と標榜する全ての国」であり、人民共和国も社会主義共和国も、社会主義国の陣営とみられる。

マルクス・レーニン主義諸国 編集

この用語を使用する動機は、マルクス・レーニン主義者は人民一般の利益のための統治を行なう、即ち、マルクス・レーニン主義者の共和国は「人民の共和国」であるという主張にある。この用語は、18世紀から19世紀における政治学・憲法学上の国民主権論において議論された、ナシオン主権(souveraineté nationale、国民主権)論とプープル主権(souveraineté du peuple、人民主権)論の二者の対立の影響がかいま見える。

人民共和国を称する国 編集

かつて人民共和国を称した国 編集

以下の国は、マルクス・レーニン主義の下、かつて「人民共和国」を称したが、現在は消滅している。

マルクス・レーニン主義以外の国 編集

「人民共和国」の他、マルクス・レーニン主義諸国に用いられた政体称として、「民主主義共和国」(例:ドイツ民主共和国ユーゴスラビア民主連邦1943年 - 1946年))と「社会主義共和国」(例:ベトナム社会主義共和国チェコスロバキア社会主義共和国ルーマニア社会主義共和国)がある。

しかしながら、民主主義社会主義人民政治といった政体称は、マルクス・レーニン主義者ではなくとも用いる一般的な政治用語であり、従って、これらを標榜しているからといって、その政府がマルクス・レーニン主義の政府であることを必ずしも意味しない(例:ウクライナ人民共和国)。 現時点で、マルクス・レーニン主義ではないが「人民共和国」(People's Republic)の称を用いている国として、以下の2カ国がある。

2014年ウクライナ騒乱の最中に建国を宣言した  ドネツク人民共和国  ルガンスク人民共和国もこの範疇に含まれ、国際社会からは独立を承認されていなかったが、2022年2月にロシア連邦のプーチン大統領がルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国を国家と承認することを発表した。

以下は、かつてマルクス・レーニン主義の以外で「人民共和国」を称した国であるが、現在は消滅している。

また、実際に国家建設の構想されたこともある。

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ People's Republic”. Oxford Dictionaries. 2020年1月2日閲覧。 “[People's Republic –] Used in the official title of several present or former communist or left-wing states.”
  2. ^ Rosa, Ruth (July 1949). "The Soviet Theory of "People's Democracy". World Politics. 1: 489 – via JSTOR.