他人の足

大江健三郎の小説

他人の足』(たにんのあし)は大江健三郎の初期に書かれた短編小説。『新潮1957年8月号に掲載。

他人の足
訳題 Someone Else's Feet
作者 大江健三郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出新潮1957年8月号
刊本情報
収録死者の奢り
出版元 文藝春秋新社
出版年月日 1958年3月
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

梗概 編集

僕らは脊椎カリエスを患い病院のベッドに横たわり続けている。今までもこれからも。病院は惰性に包まれた閉じた世界だった。ある日一人の大学生が新たに僕らの病院に入ってきた。彼は病院の独特の雰囲気に耐え難いものを感じ、それを改善する会を結成すると僕に言った。僕は冷静な眼で見続けた。彼が外から来た人間だという事をひしひしと感じていたから。

やがて彼はその活動に成功し始めた。そして病院は明るい雰囲気に変わっていった。

彼は手術をしてその後用心しながら歩く事に成功した。しかし彼が病室に入ってきた時、曖昧な硬い表情をしているのを見て、僕は、何故自分の足の上に立っている人間は非人間的に見えるのだろう、と感じた。

結局、あいつは贋物に過ぎない、そして僕はずっと彼を見張っていたのだから、という勝利の感情もすぐに消えた。そして病院は元の空気に戻っていった。

出版 編集

『死者の奢り・飼育』新潮文庫 (解説:江藤淳) ISBN 4-10-112601-1