代謝拮抗剤(たいしゃきっこうざい、: antimetabolite)は、代謝の過程で生成する代謝物質の利用を阻害する物質である[1]。このような物質は、葉酸の利用を阻害する抗葉酸剤のように、しばしば代謝物質と構造が類似している。代謝拮抗剤の存在は、細胞成長細胞分裂を妨げ、細胞にとって有毒であるため、化学療法に用いられる[2]

メトトレキサート(右)は、葉酸(左)の代謝を阻害する代謝拮抗剤である。

機能 編集

癌の治療 編集

代謝拮抗剤はDNA生産を阻害し、これによって腫瘍細胞の成長と分裂を妨げることから、癌の治療に用いることができる[3]。癌細胞は他の細胞と比べて分裂の期間が長いことから、細胞分裂の阻害は、他の細胞よりも癌細胞により多く害を与える[4]

代謝拮抗剤は、DNAの構成材料であるプリンアザチオプリンメルカプトプリン)やピリミジンを装い、細胞周期S期において、これらの物質のDNAへの取り込みを妨げ、通常の成長や分裂を停止させる。

これらの物質は、RNAの合成にも影響を与える。しかし、チミジンはDNAの合成には使われるもののRNAの合成には使われないため、チミジル酸合成酵素によるチミジン合成の阻害は、RNA合成に対してDNA合成を選択的に阻害する。

その効率性のため、これらの薬剤は、細胞性塞栓として最も広く使われている。

解剖治療化学分類法では、L01Bに分類される。

抗生物質 編集

代謝拮抗剤は、4-アミノ安息香酸と競合することで、細菌中でのジヒドロ葉酸の合成を阻害し、抗生物質になりうる[5]

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これらの物質の主なカテゴリーは、以下の通りである。

関連項目 編集

出典 編集

  1. ^ Smith, A. L. (1997). Oxford dictionary of biochemistry and molecular biology. Oxford [Oxfordshire]: Oxford University Press. pp. 43. ISBN 0-19-854768-4 
  2. ^ Peters GJ, van der Wilt CL, van Moorsel CJ, Kroep JR, Bergman AM, Ackland SP (2000). “Basis for effective combination cancer chemotherapy with antimetabolites”. Pharmacol. Ther. 87 (2–3): 227–53. doi:10.1016/S0163-7258(00)00086-3. PMID 11008002. 
  3. ^ Antineoplastic Antimetabolites - MeSHアメリカ国立医学図書館・生命科学用語シソーラス(英語)
  4. ^ Takimoto CH, Calvo E. "Principles of Oncologic Pharmacotherapy" in Pazdur R, Wagman LD, Camphausen KA, Hoskins WJ (Eds) Cancer Management: A Multidisciplinary Approach. 11 ed. 2008.
  5. ^ "The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action" (2nd edition), R. B. Silverman, 2004.

外部リンク 編集