伊豆箱根バス

日本のバス事業者

伊豆箱根バス株式会社(いずはこねバス、: IZUHAKONE Bus Co.,LTD [1])は神奈川県小田原市足柄下郡箱根町静岡県熱海市三島市沼津市伊豆の国市などでバス事業を行う、伊豆箱根鉄道の子会社である。本社所在地は静岡県三島市。

伊豆箱根バス株式会社
IZUHAKONE Bus Co.,LTD
伊豆箱根バス本社
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
411-8533
静岡県三島市大場300番地
設立 1989年平成元年)4月11日[1]
(伊豆箱根自動車株式会社)
業種 陸運業
法人番号 8080101005354 ウィキデータを編集
事業内容 一般乗合旅客自動車運送事業
一般貸切旅客自動車運送事業
代表者 新宅広樹(代表取締役[1]
資本金 6000万円
売上高 27億10万2000円(2019年3月期)
経常利益 △1億3559万6000円(2019年3月期)
純利益 △1億5066万4000円(2019年3月期)
純資産 1億2884万7000円(2019年3月期)
総資産 10億1160万円(2019年3月期)
従業員数 373人[1]
決算期 毎年3月31日
主要株主 伊豆箱根鉄道 100%
(2019年3月31日現在)
外部リンク http://www.izuhakone.co.jp/bus/
特記事項:上記経営指標は、特記なき限り伊豆箱根鉄道株式会社 有価証券報告書 第141期(平成30年4月1日 ‐ 平成31年3月31日)による[2]
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伊豆箱根バスの観光バス

本稿では、伊豆箱根鉄道グループが行ってきたバス事業全般およびその前史についても記述する。

沿革 編集

 
1980年代までの伊豆箱根鉄道バス
2008年のバス事業開業80周年にあたり、三島・熱海に各1台ずつ、ライオンズカラーをこの塗装に戻し、レトロバスとして復刻運行されている[3]
 
80周年記念旧塗装車(2009年2月25日、沼津駅前にて撮影)

伊豆箱根鉄道グループのバス事業は、駿豆鉄道が1928年昭和3年)に長岡自動車および古奈自動車を合併したことから始まる。

その後、太平洋戦争中なども伊豆箱根周辺の事業者を合併するとともに、自社で路線を拡充していく。

戦後になると、伊豆箱根地域の支配を巡り東急グループ西武グループの争いが起きるが、駿豆鉄道は箱根に関してはその当事者となっていた。事の発端は駿豆鉄道が1947年(昭和22年)に小田原 - 小涌谷間の路線バス開設を申請したことにある[4]

その後、モータリゼーションの発展や箱根の観光地としての地位低下などによりバス事業の兼業が非常に厳しくなり、1990年代に入ると1989年平成元年)に設立した子会社の伊豆箱根自動車に路線を移管する動きが見え始めるようになる。そして、2006年(平成18年)には更なる事業の再構築としてグループ内での事業整理が行われた[5]。まず、7月15日愛知県名古屋市を拠点に貸切バス事業を行っていた伊豆箱根観光バスが営業を終了した[6]。そして、10月1日に子会社の伊豆下田バスの路線を小田急グループ南伊豆東海バス(当時)に譲渡するとともに[7]、直営で残っていた路線を伊豆箱根自動車に移管した。同時に、伊豆箱根自動車は社名を伊豆箱根バスに変更した[5]

また、親会社の伊豆箱根鉄道とともに水陸両用バスの運行を行っていたが、2021年4月1日にプリンスホテルに事業を譲渡している[8]

年表 編集

営業所 編集

伊豆箱根鉄道グループのバス事業は、現在は伊豆箱根鉄道より分社された伊豆箱根バスが行っている。路線バスは小田原・箱根・熱海・三島・沼津を主な営業範囲としている。以下の営業所があり、乗合バス事業と貸切バス事業を中心に行っている。

かつて存在した営業所

路線 編集

一般路線 編集

一般路線については各営業所記事を参照。

高速路線 編集

以下の高速バスを運行している。

三島羽田シャトル

東海バスWILLER EXPRESSと共同運行[30]羽田空港から三島市を経由して伊豆半島[31]、あるいは三島市から横浜市東京都といった首都圏各地へ[32]の利用が想定され、当路線が地域の起爆剤となることが期待されている[31]

当初は2020年4月21日運行開始予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて羽田エアポートガーデンが開業を延期したことにより[33]、運行開始は一旦白紙となった。その後、羽田エアポートガーデンが2023年1月31日に開業したことで、2023年7月21日に運行を開始する予定である[30]

苗場ホワイトスノーシャトル
 
苗場ホワイトスノーシャトル

首都圏から苗場スキー場へのアクセスを狙った季節限定路線。西武観光バスとの共同運行で、伊豆箱根バスは2014年12月から加わり小田原発着便を担当、小田原発苗場行きは夜行便として運行する[34]。2018年12月からは猿ヶ京温泉を経由、苗場発小田原行きは池袋を経由せず品川プリンスホテルへ直行する。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度より小田原発着便は休止されている[35][36]

過去の高速路線 編集

伊豆箱根号[注 2]
 
箱根ビュー号

毎年3月20日 - 11月29日までの季節運行で1日2往復運行されていた。

元々はJR東海バス親会社であるJR東海新幹線を補完する目的で、新幹線からでは乗り換えとなる観光地へ直行する輸送手段としてJR東海バスと共同運行にて開設された路線であり、運賃は東名ハイウェイバスに準じた設定とされている。似たコンセプトでのちにJR東海バス・東海バス伊豆スパー号の運行も開始している。

しかし、名古屋 - 箱根の所要時間が約4時間半と時間がかかりすぎることから、乗客数は低迷した。途中停留所を変更するなどされるも功を奏せず、JR東海バスが撤退。その後も伊豆箱根鉄道単独での運行が続けられたが乗客数は増加することはなく、1996年の運行を最後に運行を終了した。

名古屋地区から「関東の奥座敷」と呼ばれる観光地への直行便という路線設定は、近年は同様の条件の高速バス路線が各地で登場しており、時間にゆとりのある利用者層に受け入れられている路線も多いが、当時としては画期的な試みであった。しかし、当時の利用者には受け入れられなかった模様である。

使用車両は、基本的に4列シート34人乗りのスーパーハイデッカーで、伊豆箱根鉄道では西工車体日産ディーゼル・スペースウイングを使用していた。なお、当路線廃止後この車両は日東交通に売却された。

歴史

車両 編集

西武グループのバス会社であるため、車両はライオンズカラーとなっている[38]

1980年頃までは日野車三菱車も導入していたが、この後の新規導入はグループ各社同様、ほとんどが日産ディーゼル車になった(ごく一部の路線車で三菱ふそう・エアロミディの導入例はある)。1990年以降は低床車両を中心に西武バスからの移籍車も多くなった。

1998年(平成10年)に西武バスがいすゞ車を導入再開した以後は当社も各メーカーから導入している。

2007年(平成19年)9月頃から、排ガス対策に尿素SCRシステムを搭載した日産ディーゼル・スペースランナーRAが導入された。2008年(平成20年)4月には、小田原地区に同じく尿素SCRを搭載した三菱ふそう・エアロスターOEM供給車であるスペースランナー-Aが導入された。

車両番号(社号)については西武バス#社番を参照。

2扉の路線バス車両は、交通系ICカード対応車両(小田原営業所の路線と、三島営業所のうち熱海駅・湯河原駅発着路線で使用)では前乗り前降り、それ以外の車両(三島営業所のその他の路線で使用)では後乗り前降りとなっている[39]

2016年7月9日よりアニメ作品『ラブライブ!サンシャイン!!』とコラボしたラッピングバスが運行開始。好評のためか2017年7月23日には2号車(西武バス所沢営業所ところバス用)からの移籍車)、さらには「未来の僕らは知ってるよ」をイメージした3号車、「未体験HORIZON」をイメージした4号車(西武観光バス秩父営業所からの移籍車)も登場した[40]。1号車と3号車は伊豆長岡駅伊豆・三津シーパラダイスを結ぶ系統を中心に、2号車は沼津駅と伊豆長岡駅を結ぶ系統を中心に、4号車は沼津港循環を中心にそれぞれ運行している。いずれも終了時期は未定で、運行ダイヤはホームページにて公開されている。このうち、1号車は初代(2821号車・日デRM)が老朽化のため2021年10月19日をもって運行を終了、10月20日からラッピングはそのままに2代目(2749号車・レインボーHR)に交代した。

2020年3月18日より沼津駅と沼津港を結ぶ路線でEVバスシンクトゥギャザー・eCOM-10」の運行を開始した。最高速度が19 km/hと遅いため従来からある系統とは異なる経路とダイヤで運行される[41]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ a b 伊豆箱根鉄道公式サイトでは「箱根びゅう号」と表記[14]
  2. ^ 1993年3月31日までは「箱根ビュー号」。
  3. ^ 1991年6月1日より停車。

出典 編集

  1. ^ a b c d 伊豆箱根バス株式会社 採用ホームページ”. 伊豆箱根バス. 2020年5月27日閲覧。
  2. ^ a b 伊豆箱根鉄道株式会社 有価証券報告書 第141期(平成30年4月1日 ‐ 平成31年3月31日)” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2019年6月19日). 2020年5月27日閲覧。
  3. ^ バス事業開業80周年についてより
  4. ^ 第26回国会  衆議院 運輸委員会 第34号 昭和32年5月24日
  5. ^ a b c 「事業再構築計画」の策定に関するお知らせ” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2006年7月13日). 2006年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年7月21日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 伊豆箱根鉄道株式会社 有価証券報告書 第129期(平成18年4月1日 ‐ 平成19年3月31日)” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2007年6月27日). 2020年5月27日閲覧。
  7. ^ a b c d 連結子会社の解散に関するお知らせ” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2006年2月24日). 2006年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年3月8日閲覧。
  8. ^ a b 水陸両用バス事業に関するお知らせ』(プレスリリース)伊豆箱根バス、2021年4月1日http://www.izuhakone.co.jp/bus/files/bus_suiriku_2021.41.pdf2023年9月18日閲覧 
  9. ^ a b c d e f g 伊豆箱根鉄道 会社の沿革 駿豆鉄道の黎明期(1917~1945年まで)”. 伊豆箱根鉄道. 2020年6月7日閲覧。
  10. ^ 加藤利 (1995) p.179
  11. ^ 加藤利 (1995) p.180
  12. ^ 日外アソシエーツ編集部 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年9月27日、80頁。ISBN 9784816922749 
  13. ^ a b c d 伊豆箱根鉄道 会社の沿革 駿豆鉄道から伊豆箱根鉄道へ(1946年~1970年まで)”. 伊豆箱根鉄道. 2020年5月31日閲覧。
  14. ^ a b c 伊豆箱根鉄道 会社の沿革 高度成長期から2004年まで(1971~2004年)”. 伊豆箱根鉄道. 2020年6月7日閲覧。
  15. ^ 【高速バスアーカイブ第2回】豪華バス「箱根ビュー号」 観光客ばかりでなく一般利用客も多かった伝説の路線”. 講談社ビーシー. 2020年6月7日閲覧。
  16. ^ 連結子会社の解散に関するお知らせ” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2006年2月24日). 2006年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年3月8日閲覧。
  17. ^ 伊豆下田バス株式会社の事業撤退に伴う営業譲渡について” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2006年2月24日). 2006年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年3月8日閲覧。
  18. ^ 会社の沿革”. 東海自動車. 2020年4月17日閲覧。
  19. ^ 伊豆箱根鉄道 会社の沿革 新しい西武グループの一員として(2005年以降~)”. 伊豆箱根鉄道. 2020年5月31日閲覧。
  20. ^ 平成22年3月期 決算短信” (PDF). 伊豆箱根鉄道 (2010年5月13日). 2020年5月22日閲覧。
  21. ^ 箱根エリアバス路線の系統記号化を実施します” (PDF). 箱根登山バス・小田急箱根高速バス・沼津登山東海バス (2010年6月8日). 2010年8月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月15日閲覧。
  22. ^ 熱海営業所統合のお知らせ” (PDF). 伊豆箱根バス (2018年3月1日). 2018年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月6日閲覧。
  23. ^ 箱根芦ノ湖初!!新アトラクション「水陸両用バス」誕生!!「NINJABUS WATER SPIDER」2018年4月27日(金)運航開始』(PDF)(プレスリリース)伊豆箱根鉄道・伊豆箱根バス、2018年4月18日http://www.izuhakone.co.jp/group/files/group_news_20180419.pdf2018年4月29日閲覧 
  24. ^ “芦ノ湖に水陸両用バス、27日から運航 伊豆箱根鉄道グループ”. 静岡新聞. (2018年4月19日). オリジナルの2018年6月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180624175447/http://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/480682.html 2018年4月29日閲覧。 
  25. ^ 箱根地域を運行するバス4社がバス停ナンバリング 分かりやすいバス利用へ”. 小田原箱根経済新聞 (2019年2月21日). 2020年5月30日閲覧。
  26. ^ 「EVの路線バス 沼津で運行開始 伊豆箱根バス」日本経済新聞』朝刊2020年3月19日(静岡経済面)2020年3月22日閲覧
  27. ^ 4月1日(木)より、沼津・三島エリアの路線バスで 交通系ICカード「PASMO」のサービスを開始いたします。』(PDF)(プレスリリース)伊豆箱根バス、2021年3月16日。 オリジナルの2021年3月16日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210316113302/http://www.izuhakone.co.jp/bus/files/bus_news_20210316_02.pdf2021年4月8日閲覧 
  28. ^ 貸切バス営業所案内”. 伊豆箱根バス. 2022年4月27日閲覧。
  29. ^ 箱根を水陸両用「忍者」バスがくノ一とともにスイスイ!? 箱根観光の新提案”. マイナビ (2018年5月11日). 2020年6月7日閲覧。
  30. ^ a b 「三島⇔羽田(横浜・新木場)」三島羽田シャトル”. 東海自動車. 2020年5月5日閲覧。
  31. ^ a b バス3社社長が三島市長を表敬 4月21日から羽田シャトル運行”. 静岡新聞社 (2020年4月1日). 2020年5月5日閲覧。
  32. ^ 三島から空港まで直結!「三島羽田シャトル」4/21スタート”. 三島市観光協会 (2020年4月8日). 2020年5月5日閲覧。
  33. ^ 住友不動産、「羽田エアポートガーデン」開業延期 夏頃に”. トライシージャパン (2020年4月7日). 2020年5月21日閲覧。
  34. ^ 「苗場ホワイトスノーシャトル」 2015年12月18日運行開始予定!』(PDF)(プレスリリース)西武バス、2015年11月13日http://www.seibubus.co.jp/Topics/news20151113/20151113_2.pdf2016年11月28日閲覧 
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  36. ^ 2021年度苗場ホワイトスノーシャトル時刻表” (PDF). 西武バス. 2022年1月8日閲覧。
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  38. ^ 『BUS Life』vol.5 p.47
  39. ^ 路線バスでGo!”. 伊豆箱根バス. 2020年5月31日閲覧。
  40. ^ 「ラブライブ!サンシャイン!!」“ファン必見”ラッピングバス運行中&コラボグッズ販売中 伊豆箱根バス(2020年3月22日閲覧)
  41. ^ “EV路線バス発車 民間初、沼津駅―沼津港間 伊豆箱根”. 静岡新聞. (2020年3月18日). https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/747942.html 2020年3月22日閲覧。 

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集