会津電力(あいづでんりょく)は、「原子力に依存しない安全で持続可能な社会作りと会津地域のエネルギー自立」をスローガンに掲げる、福島県喜多方市に本拠を置く2013年8月設立の電力会社[4]東北大震災での福島第一原子力発電所事故による放射能被害が比較的少なかった福島県会津地域の会社経営者らを中心とする市民により、設立された[5]

会津電力株式会社[1]
Aizu Electric Power Company[1]
会津電力(株)「雄国太陽光発電所」
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 AiPOWER
本社所在地 日本の旗 日本
966-0014
福島県喜多方市 関柴町西勝字井戸尻48-1 [2]
設立 2013年8月1日[3]
業種 電気・ガス業
法人番号 2380001023167 ウィキデータを編集
事業内容 自然エネルギーを利用した発電事業、電気・熱エネルギー供給事業その他[1]
代表者 代表取締役社長 山田純[1]
取締役会長 佐藤彌右衛門
資本金 資本金 48,250,000円 ・ 資本準備金 48,250,000円  計96,500,000円(2019年3月末時点)
外部リンク https://aipower.co.jp/
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概要 編集

福島県は原子力発電に頼らずとも、会津の豊富な水資源を源とした水力発電の能力で十分すぎる程の供給が可能との基本概念から、原子力発電の暴走を許容した社会の責任を次世代に引き継がせない理念のもと、福島県内の電力エネルギー需要を再生可能なエネルギーだけでまかなうことを可能にする体制を作り上げることを目的とし設立された。猪苗代湖只見川阿賀川水系で約500万キロワット(現在300万kW(キロワット)、県内必要電力150万 kW)の発電力があり原発5基分の発電力に相当するため、福島県全域の使用電力を十分に賄えるとしている。水力を中心に太陽光発電、森林資源を利用した木質バイオマス発電地熱発電風力発電、山間の未開の水力、土地改良地内の灌漑用水を利用した小水力、雪の利用研究を促進促進することで会津から福島県全体へ、さらには日本全体のエネルギー供給の一翼を狙うとしている[4]

同社の初代社長で、現在会長の佐藤は9代(2020年現在で230年以上)続く会津の蔵元「大和川酒造店」の代表であり、自社の酒蔵飯豊蔵」の屋根にも太陽光パネルを設置。「全国ご当地エネルギー協会」の会長も務める[6][7]。佐藤は、「福島で作られた電気の大半は首都圏へ送られるのは原発とまったく同じ構図だ。」「(首都圏で利用される電力の)水力のも、もとは福島という大自然のなかに降ったであり、それを取り戻せば電気を自給自足できる。」「福島が東京の『植民地』から抜け出すため、進むべき道が見えた。」と朝日新聞の取材で発言した[8]

 グループ会社として、会津電力が市民出資の資金調達・運用を行うために設立した特定目的会社の「アイパワーアセット株式会社」や、子会社の「アイパワー株式会社」があり、地域分散型の太陽光発電事業を行っている。 [4]

沿革 編集

  • 2013年3月 - 旧来のエネルギー依存体質からの脱却と会津の独占されていた資源の利用権の奪回によるエネルギーによる自立を謳う有志により「一般社団法人 会津自然エネルギー機構」が結成される[6]
  • 2013年8月 - 会津電力株式会社設立[6]
  • 2014年3月 - 大手電力会社の既得権益と戦うためには、「みずからの財源と、地域の力の結集」が必要と、佐藤は会津の全17市町村に出資を働きかけ、4町村が出資を決める[8]
  • 2014年 - 5月末、喜多方市内で、会津地域初のメガソーラー発電所を起工[9]
  • 2014年 - 7月、ドイツの市民電力会社「シェーナウ電力会社」による「シェーナウ環境賞『電力革命児』年間賞」を代表・佐藤彌右衛門が受賞。
  • 2014年 - 10月、メガソーラー発電所「雄国太陽光発電所」稼働開始。
  • 2014年 - 12月、第一期太陽光発電所・全24カ所が稼働。
  • 2015年 - 東北経済産業局による「平成27年度 東北再生可能エネルギー利活用大賞」受賞。
  • 2015年 - 12月、第二期太陽光発電所・全24カ所+増設2カ所が稼働、発電所総数48カ所。
  • 2016年 - 12月、第三期太陽光発電所として初めて中通り地域へ発電所建設。稼働開始。
  • 2017年 - 12月、第四期太陽光発電所が稼働、発電所総数70カ所。
  • 2018年 - 1月、第8回「地域再生大賞」優秀賞受賞。
  • 2018年 - 3月、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」による「自然エネルギー大賞」銀賞受賞。
  • 2018年 - 3月、ガーデンホテル喜多方へ木質ペレットボイラー設置、稼働開始。
  • 2019年 - 4月、自社初の小水力発電所となる「戸ノ口堰小水力発電所」稼働開始。
  • 2019年 - 12月、出資自治体数計8市町村となる。

事業内容 編集

  • 自然エネルギーを利用した発電事業及び電気・熱エネルギー供給、販売事業
  • 自然エネルギー事業の設計、施工請負及びコンサルティング業務
  • 自然エネルギー機器の販売・リースレンタル事業
  • 省エネルギー事業の設計、施工請負及びコンサルティング業務
  • 自然エネルギー事業にかかる調査・研究・開発に関する業務
  • 自然エネルギーの活用と普及促進・企画・広報・運営に関する業務
  • 自然エネルギー、農業及び林業に関する、体験、研修、教育事業
  • 自然エネルギー設備の保安、管理及び清掃事業
  • 土木、建設事業の設計、施工、管理及びコンサルティング業務
  • 林業の生産、伐採、加工及び販売業務
  • 農産物の生産、加工及び販売業務
  • 産業廃棄物の収集運搬、処理業務
  • 労働者派遣事業
  • 前各号に付帯関連する一切の事業

[4]

第1期プロジェクト 編集

2015年までに、太陽光発電事業として合計11カ所に設備を設置し、東北電力に売電する。合計出力は約2 MW(2000 kW)で、約600世帯分の電力に相当する[5]

第2期プロジェクト 編集

第2期以降では、地域のを活用した小水力発電や、木質バイオマスなどを検討。設備の周辺に子ども向けの教育施設を設置、自然エネルギーについて学べる場所にする構想など[5]。バイオマス事業は2015年10月時点で会津地方の自治体、3町からの出資を既に受けており、公共施設に販売することを目指している[10]

発電施設 編集

1000 kWの発電能力をもつ雄国太陽光発電所や同250 kWの岩月太陽光発電所をそれぞれ喜多方市南東部、同市東部に設置している[3]他、アイパワーアセットの保有する小規模発電所を合わせ、計2540 kWを発電させている[8]

脚注 編集

  1. ^ a b c d 会津電力公式サイト”. 会社概要. 会津電力. 2016年1月31日閲覧。
  2. ^ 会津電力株式会社 会社案内2019” (PDF). 会津電力. 2019年10月9日閲覧。
  3. ^ a b 会津電力株式会社 会社案内” (PDF). 会津電力. 2016年1月31日閲覧。
  4. ^ a b c d 会津電力公式サイト”. 会津電力. 2016年1月31日閲覧。
  5. ^ a b c 「会津電力」が誕生、市民出資で株式会社を設立」『オルタナ』、オルタナ、2013年10月28日、2016年1月31日閲覧 
  6. ^ a b c 佐藤彌右衛門 (2014年6月23日). “会津電力株式会社について”. 全国ご当地エネルギー協会. 2016年1月31日閲覧。
  7. ^ 滝順一 (2014年7月7日). “東電よさらば 会津の造り酒屋が挑む電力自立”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0300B_T00C14A7000000/ 2016年1月31日閲覧。 
  8. ^ a b c “(フロントランナー)会津電力社長・佐藤弥右衛門さん 電気の自給で福島の自立を”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2015年4月18日). http://digital.asahi.com/articles/DA3S11707539.html 2016年1月31日閲覧。 
  9. ^ 日本経済新聞 「東電よさらば 会津の造り酒屋が挑む電力自立 会津電力社長に聞く」 編集委員 滝順一 2014/7/7 7:00 日本経済新聞 電子版
  10. ^ “会津電力、地元木材で燃料生産 森林再生にも一役”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2015年10月8日). http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92574100X01C15A0L01000/ 2016年1月31日閲覧。 

外部リンク 編集