何 震(か しん、生年不詳 - 1607年)は、中国明代中期の篆刻家である。文彭を継承しながら篆刻を発展させ、新安印派の開祖となった。

は主臣・長卿、は雪漁山人。徽州府婺源県の人。

略伝 編集

南京に住んだとき、印学(篆刻芸術)の開祖とされる文彭と師友の関係を結び、燈光石に篆刻することを学ぶ。漢印への復古を唱える文彭をよく継承し、のびやかで枯淡のある作風を確立した。文彭と名声が斉しく、「文・何」と並称され、名士がこぞって彼の印を買い求めた。何震は文彭以上に詞句印や室名印を好んで刻し、後進もこれにならった。また著書『続学古編』は吾丘衍の『学古編』とともに印学を志す者のバイブルとなった。

何震の死後20年、程原程樸父子により『何氏印選』(忍草堂印選)が刊行される。

何震の優れた篆刻芸術はやがて徽州に一派を成した。この一派を中国の印学における二代流派のひとつである新安印派(黄山派・徽派・皖派)と呼び、蘇宣梁袠朱簡に加え「歙四家」とされる程邃汪肇龍巴慰祖胡唐などの優れた篆刻家が育った。

因みに、もう一つの流派を西泠印派(浙派)という。

周亮工の『印人伝』に何震の業績がよく伝えられている。

出典 編集

  • 沙孟海 『篆刻の歴史と発展』中野遵・北川博邦共訳 東京堂出版、昭和63年、ISBN 4490201443
  • 銭君匋・葉潞淵『篆刻の歴史と鑑賞』高畑常信訳 秋山書店<秋山叢書>、昭和57年。
  • 銭君匋共著『印と印人』北川博邦・蓑毛政雄・佐野栄輝共訳 二玄社<藝林叢書>選訳I、1982年。