先生 (ドラえもん)

『ドラえもん』の登場キャラクター

先生(せんせい)は、藤子・F・不二雄漫画作品『ドラえもん』に登場する架空の人物。

概要 編集

小学校教諭のび太たちの学級の担任教師。性別は男性。年齢は不明だが、ほうれい線があることから中年だとわかる。学校名と学級は原作では不明だが、各アニメシリーズでは独自に設定されている。

姓名は原作では不明だが、テレビアニメ第2作第1期では、それぞれ姓を「先生(せんじょう)」[3]、名を「えいいちろう」[1]と設定された回があった。また日本テレビ系アニメでは姓を「我成(がなり)」としていた。

容姿 編集

基本的に茶色いスーツを着用し、四角い眼鏡をつけている。体型はやや肥満気味。髪型はかなり特徴的で、中央に分け目があり、頭に黒い本が載っているかのように見える。

性格・信条・行動 編集

いつも恐ろしい量の宿題を出したり、宿題忘れや遅刻をすると廊下に立たせるという、古風なタイプの教師である。リニューアル以降はそうした性格は影を潜めている。

厳しいながらも児童たちを真剣に気にかけている常識人として描かれている。ただし嘘をついたスネ夫に対し、彼の普段のおべっかに惑わされてクラス全員の前で贔屓してしまうなど不用意な面も見せている[4]

のび太が怠けた時には「宿題をやって来ないとぶん殴る」[5]、「テストが50点以下だったら、もう2度と学校へ来るな!!」[6]「今度テストで0点を取ったら、幼稚園に返すからな!!」[7]など厳し過ぎる言葉もかける。ただし、どれも時折事を誇張して言う傾向のあるのび太の弁なので、「いつもオーバーなんだよ」とドラえもんたちにのび太が彼の脚色の可能性を指摘されることも割合にある[注 2]。逆に、のび太が一晩かけて特別に出された大量の宿題をやり遂げた時には「(全部やって来なかった者が多い中で)野比は間違いだらけでも全部やってきたのはえらい」[8]と最初に余計な一言も交えつつ努力を評価したり、のび太が生まれて初めて100点をとった時には「目を疑った」と付け加えながらも笑顔で「よくやったね」と褒めたりする[9]、など、努力に対しては公正に評価する面も見せる。0点をとって落ち込んでいるのび太を励まし、深く感動させたこともある[10]。しかし、彼は前述の通りのび太が100点をとった時、普段と違ってこのことをクラスの生徒達には一切言わなかったため、のび太のクラスメイト達は誰ものび太が100点をとったことを信じようとせず、結果としてのび太を嘆き悲しませる原因を作った[9]。なお、のび太の夢の中に彼が登場した時には、宿題を完璧に仕上げたのび太に対して「頭がおかしくなったんじゃないか」などと無神経なことを言って、のび太を怒らせるシーンもあった[11]

放課後はよく町内をうろつき、生徒に出会うと道端で説教をしたり褒めたりする。そのわりに、ジャイアンやスネ夫のいじめがその目に止まることは少なく[12]、すぐ近くでジャイアンがのび太を追い回していても気が付かないことも少なくない[13]。ただし、いったん目に止まればジャイアンもスネ夫も容赦なくお説教の対象となる。「そんなことをする(ところにいる)暇があったら勉強を…」などというお決まりの台詞がある。他人に用事があっても強引に連れ出す面があり、のび太を強引に連れ出して説教をしたり、自宅で補習を受けさせたこともある[14]

現実主義者であり、宇宙人や幽霊の存在を否定したり、現実ではありえないことを信じない他、ドラえもんのひみつ道具の存在にも当初はあまり気付いていなかった。 例としてジャイアンとスネ夫が宇宙人(ドラえもんの出したラジコン宇宙人)の事で相談してきた際、「トリック写真で先生を騙す気か!?」と怒ったり、鮫に狙われそうなところをのび太やドラえもんに助けられたのにもかかわらず、「町に鮫なんかいるわけない!」とどなったり、幽霊化したのび太の怨みを見て本物ののび太だと勘違いして説教している[15]。 大長編「のび太の魔界大冒険」にて、魔法の世界(もしもボックスを使用)での先生も現実主義者であり、満月博士の魔界接近説を「あんなのはデタラメだ」「台風や地震も自然現象に過ぎない」と信じていなかった。

初期はアパートの一室に住んでいた[16]が、現在は一戸建ての家に住んでいる[17]

初期 編集

初期の原作(厳格なキャラクターが定着する以前)では、のび太がいたずらしていると勘違いして取り上げた道具で遊んだり[16]、常に丁寧語で話すなど浮世離れした面が目立った。性格も現在とは異なり、やや気弱でのび太達からも若干見下されるなど、うだつの上がらない一面が強調されていた。髪型も若干異なっており、口も「3」や「ε」の形をしている。

アニメでの先生 編集

テレビアニメ第2作第1期の初期作品[18]では、髪型や顔、服の色などが異なっているが、別人か同一人物かは不明。原作ではメガネを描かれていないコマが1つある程度であり[19]、やはり判別は難しい。

アニメでの担当声優は、日本テレビ系アニメ第1作(1973年)の頃からキャスティングが一定しておらず、テレビアニメ第2作第1期(1979年〜)がスタートした当初でも2年ほどは声優が3、4人ほど交代していたなど、なかなか定着していなかった。しかし、放送時間が日曜から金曜に枠移動した頃の1981年10月より田中亮一が担当、2005年3月まで足かけ24年間も先生役を務め、完全に定着した。先生のセリフである「廊下に立っとれーっ!」(「廊下に立ってなさい!」)もこのころから定着し始めた。

映画『のび太の結婚前夜』で披露宴を明日に控えた青年期・のび太に対して愛おしさ溢れた感慨深い心情を述べるシーンは、厳然とした教師の態度で小学生時代ののび太を辟易とさせてきた平素があったからこその描写となっている。少し寒がる様子を見せていたことから、のび太は自分が着ていたコートをかける。のび太の去り際に「野比! 明日は遅刻するんじゃないぞ!」とかつての厳然とした雰囲気をやや漂わせた口調でのび太に見送りの言葉をかけた。そして、コートをかけてくれたのび太の行動に笑顔を浮かべ、「ありがとう」とつぶやいている。

また、リニューアル前のアニメ版では、かつての厳格な面は影を潜め、人情派のベテラン教師に性格設定が修正されていた時期もある。

1998年7月31日に放送された「ホンネミラー」では、田舎の年老いた母を案じて、実家近くの小学校への転任を真剣に考えたことがあったが、ドラえもん、のび太らの尽力によって何とか阻止できた。そして、「君たちを卒業させるまでは担任を続けます」とのび太たちに言っている。

テレビアニメ第2作第1期「ドラえもんに休日を?!」では、のび太に「先生とも長い付き合いですねぇ」と言われ、「思えばもう何年になるかなぁ」と語っている。テレビアニメ第2作第2期「のび太のハチャメチャ入学式」では、入学式のときからのび太と対面している。

関連人物 編集

先生の母
声 - 磯辺万沙子(1998.7)
テレビアニメ「ホンネミラー」でのみ登場。田舎に住む年老いた母親。

声優 編集

テレビアニメ第1作
加藤修雨森雅司(1973)
テレビアニメ第2作1期
沢りつお(1979.4)→加藤治(1979[注 3])→井上和彦(1979.10-1981.10)→田中亮一(1981.10-2005.3)
テレビアニメ第2作2期
高木渉(2005.4-)

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ アニメ「オバケタイマー」(1987年9月4日放送。てんとう虫コミックス第36巻収録「オバケタイマー」のアニメ化作品。ビデオソフト未収録)によると、登下校時で異なる。以降の作品でもおおむねこの設定になっている。
  2. ^ 日本の公立小学校では、生徒を退学にしたり幼稚園に戻すなどの行為は法的に認められていない。
  3. ^ 番組の途中で交代

出典 編集

特記のない「×巻」は、てんとう虫コミックス『ドラえもん』の単行本の巻数を表す。

  1. ^ a b アニメ「ホンネミラー」(1998年7月31日放送。ビデオソフト未収録)
  2. ^ 小学館『ドラえもんひみつ大百科―21世紀版』
  3. ^ アニメ「そんざいかん」(1985年3月15日放送。てんとう虫コミックス第36巻収録「「そんざいかん」がのぞいてる」のアニメ化作品。ビデオ『21世紀テレビ文庫 テレビ版ドラえもん』第29巻収録)
  4. ^ 第18巻収録「ひい木」ほか
  5. ^ 小学館コロコロ文庫『ドラえもん ロボット編』収録「すなおなロボットがほし〜い!」
  6. ^ 第42巻収録「やりすぎ! のぞみ実現機」
  7. ^ 第34巻収録「のび太もたまには考える」
  8. ^ 第22巻収録「出木杉グッスリ作戦」
  9. ^ a b 第25巻収録「な、なんと!! のび太が百点とった!!」
  10. ^ 第9巻収録「ジ〜ンと感動する話」
  11. ^ 第5巻収録「うつつまくら」
  12. ^ 第1巻収録「○○が××と△△する」では、喫茶店から出てきたときに二人からアカンベーをされたと勘違いし、「君たちはいつも先生をバカにしている」と叱責している。
  13. ^ 第5巻収録「ヒラリマント」ではのび太に向かってきたジャイアンをのび太がヒラリマントでかわし、ジャイアンは先生にぶつかり怒られている。
  14. ^ 35巻「悪魔のイジワール」、45巻「身代わり人形」
  15. ^ 10巻「ニセ宇宙人」、30巻「空き地のジョーズ」、40巻「恐怖のたたりチンキ」
  16. ^ a b 第3巻収録「ああ、好き、好き、好き!」
  17. ^ 第16巻収録「サハラ砂漠で勉強はできない」ほか
  18. ^ 「テストにアンキパン」(1979年4月4日放送)、「一生に一度は百点を」(1979年4月18日放送)など
  19. ^ 第30巻収録「ねむりの天才のび太」