冷気湖(英:cold-air pool)とは、気象学上の用語で、周囲がで囲まれた盆地などに冷気が溜まっている現象のこと。湖沼とは全く別物である[1]

冷気湖の発生に至る経緯

現象 編集

起伏の大きい土地において、の弱い晴天時に夜から明け方にかけて、地表面の放射冷却が強くなり、これで生成された冷気は下降気流によって、周囲が山や尾根で囲まれた盆地や谷間などに溜まる。規模は数百mのものもあれば、大きいものは数十kmに及ぶ。冷気の厚さは周りの山の高さの 0.5%程度であり、山が高いほど冷気湖も厚くなる。また一般的に冷気湖は夏に薄く、冬に厚い。また無風であるよりは弱い風が吹いている方がよく、周囲の斜面に沿って流れ込む冷気が、冷気湖の主要な源となる場合もある。冷気湖では周囲に比べて気温が 5~10℃低いので、夏には快適な避暑地となるが、冬にはより気温が低くなり霜害の危険性もある[1]

事例 編集

日本国内に冷気湖となりうる場所は数多く存在する。その中でも有名な例をいくつか紹介する。

京都は三方が山で囲まれた盆地なので、冬には冷気湖が形成される。これにより標高の低い市街地では気温が 0℃付近にまで低くなり、「底冷え」という現象が発生する。最近は地球温暖化によって少なくなっているが、以前は市内を流れている鴨川の水が凍ることもしばしばあった[2]

カルデラである阿蘇山では、秋に大陸からの移動性高気圧に覆われたときに冷気湖が形成され、時には霜害をもたらすことがある。このため熊本県阿蘇市の霜神社では、8月中旬から10月中旬にかけて、伝統行事として「火焚き神事」という祭事を執り行う。これは燻煙法による防霜効果と結びついたものと考えられている[1]

一方、谷底平野である軽井沢町では、一年中冷気湖が形成されているので、冬には気温が -15℃付近にまで低くなるが、夏には涼しく避暑地として有名である。また軽井沢は北陸新幹線が通っており交通の便がよいので、夏には観光客で賑わい、観光施設も整っている[3]

脚注 編集

  1. ^ a b c 冷気湖とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年8月3日閲覧。
  2. ^ 京都の底冷えとかるたの関係”. 2023年8月3日閲覧。
  3. ^ 日本を代表する避暑地・軽井沢。夏の旅行のおすすめは?”. びゅうトラベル. 2023年8月3日閲覧。

関連項目 編集