動機づけ(どうきづけ、motivation/mòʊṭəvéɪʃən〈米国英語〉、m`əʊṭəvéɪʃən〈英国英語〉、モチベーション)とは、行動を始発させ、目標に向かって維持・調整する過程・機能。

動機づけは人間を含めた動物の行動の原因であり、行動の方向性を定める要因と行動の程度を定める要因に分類できる。動物が行動を起こしている場合、その動物には何らかの動機づけが作用していることが考えられる。またその動物の行動の程度が高いかどうかによってその動機づけの強さの違いが考えられる。

生理的動機づけ 編集

生命を維持し、種を保存させるための生得的な動機。飢え、睡眠、排泄、身体的損傷回復など。生物的動機づけとも言う[1]

社会的動機づけ 編集

達成動機づけ 編集

達成動機づけとは、評価を伴う達成状況において高いレベルで目標を達成しようとする形態の動機づけを言う。ジョン・アデアは何が人に動機を与えるかを理解することは、その人たちの関心を引き労力を集中させるために必要不可欠であると論じている。行動へとつながる意思は動機によって支配され、この動機とは人の内にある心理的要求や欲求であり、それは意識的か半意識的か無意識的かを問わない。動機はメインの動機の周りを他の動機が取り囲んだ形の混合体である場合もあると論じている。[2]

マレーはこの達成動機づけを達成要求の観点から考え、人間は独力を以って高水準の目標を達成しようとする欲求があり、これによって行動が規定されると仮定し、達成動機には成功願望と失敗恐怖の二つの欲求から構成されると論じた。またアトキンソンは成功願望と失敗恐怖の二つの達成要求だけのパーソナリティの安定的側面だけでなく、流動的な周囲状況の期待感や価値観が重要だと考え、成功と失敗の価値及び成功と失敗の期待も強く影響すると論じた。

また達成行動には行動の結果の原因をどのように考えるのかにも強く影響する。結果の原因としては能力、努力、問題の困難性、偶然性の四要素を考えることが一般的であり、達成動機が高い人は内的要因である能力や努力に原因が帰属すると考える傾向が強い一方で達成動機が弱い人は外的要因である問題の困難性や偶然性に原因が帰属すると考える傾向が強い。

内発的動機づけ 編集

内発的動機づけとは好奇心や関心によってもたらされる動機づけであり、賞罰に依存しない行動である。これは特に子供は知的好奇心が極めて高いために幼児期によく見られる動機づけである。たとえばある子供がTVゲームに熱中しているとき、その子供は賞罰による動機付けによってではなく、ただ単にゲームが楽しいからという内発的な動機によりそれに熱中するのである。くわえて知的好奇心だけでなく、自分で課題を設定してそれを達成しようとするような状況においては自分が中心となって自発的に思考し、問題を解決するという自律性、また解決によってもたらされる有能感が得られ、動機づけとなり得る。

一般的に内発的動機づけに基づいた行動、例えば学習は極めて効率的な学習を行い、しかも継続的に行うことができる。これを育てるためには挑戦的、選択的な状況を想定して問題解決をさせることが内発的動機づけを発展させるものと考えられる。内発的動機には感性動機、好奇動機、操作動機、認知動機などがある[3]

外発的動機づけ 編集

外発的動機づけとは義務、賞罰、強制などによってもたらされる動機づけである。内発的な動機づけに基づいた行動は行動そのものが目的であるが、外発的動機づけに基づいた行動は何らかの目的を達成するためのものである。たとえばテストで高得点を取るためにする勉強や、昇給を目指して仕事を頑張る場合などがそれにあたる。強制された外発的動機づけが最も自発性が低い典型的な外発的動機づけであるが、自己の価値観や人生目標と一致している場合は自律性が高まった外発的動機づけと考えられる。外発的動機づけは内発的動機づけと両立しうるものであり、また自律性の高い外発的動機づけは内発的動機づけとほぼ同様の行動が見られる。

脚注 編集

  1. ^ 美濃哲郎、大石史博編『スタディガイド心理学』(ナカニシヤ出版、2007年)、p.57
  2. ^ ジョン・アデア著 『Effective Motivation.』 Pan. (1996). ISBN 0-330-34476-5.
  3. ^ 美濃哲郎、大石史博編『スタディガイド心理学』(ナカニシヤ出版、2007年)、p.59

参考文献 編集

  • 山内弘継、橋本宰監修、岡市廣成、鈴木直人編『心理学概論』(ナカニシヤ出版、2006年)
  • 美濃哲郎、大石史博編『スタディガイド心理学』(ナカニシヤ出版、2007年)

関連項目 編集