十二進法

12を底とし、底およびその冪を基準にして数を表す方法

十二進法(じゅうにしんほう)とは、12(てい)とし、底およびそのを基準にして数を表す方法である。時間の表記として世界中で一般的に使用されている。

十二進法が使われている例 編集

計時
物流で主に使われる数量のダースグロス

暦が12か月周期であることは諸説あるが、数え方は十二進数である。(太陰暦を参照)

記数法 編集

整数 編集

 
3つ組が4つ集まると「10」になる。小数も、0.3×4 = 1 となる。
数字

十二進記数法とは、十二を底とする位取り記数法である。十二進法での位取りでは、通常は 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, A, B の計十二個の数字を用い、A , 十一B , 十二を 10 , 十三を 11 と表記する。なお、8 と B が紛らわしいことを理由に、"Ten"と"Eleven"の頭文字を取って、十を T 、十一を E と表記する例もある。

本節では慣用に従い、通常のアラビア数字十進記数法で表記し、十二進記数法の表記を括弧および下付の 12 で表す。また、必要に応じて、十進記数法の表記も括弧及び下付の 10 で表す。十二進記数法で表された数を十二進数と呼ぶ。十二進法の位取りでは、左に一桁動くと十二倍になり、右に一桁動くと十二分の一になる。言い換えると、整数第二位は「十二の位」、整数第三位は「百四十四の位」である。

(12)12 という表記において、左の「1」は十二を意味し、右の「2」は二を意味し、合わせて「十四」を意味する。

数列の進み方
六進法 0 1 2 3 4 5 10 11 12 13 14 15 20 21 22 23 24 25 30 31 32
十進法 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
十二進法 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B 10 11 12 13 14 15 16 17 18
十八進法 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F G H 10 11 12
二十進法 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F G H I J 10
六進法 340 341 342 343 344 345 350 351 352 353 354 355 400 401 402 403 404 405 410 411
十進法 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151
十二進法 B0 B1 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 BA BB 100 101 102 103 104 105 106 107
十八進法 76 77 78 79 7A 7B 7C 7D 7E 7F 7G 7H 80 81 82 83 84 85 86 87
二十進法 6C 6D 6E 6F 6G 6H 6I 6J 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 7A 7B

数列の進み方も、上記の表のように、十進数の 14 が十二進数では 12 となり、二桁の最後も BB となる。十二進法は「4×3=10」となるので、数列は4の倍数や3の倍数が進みやすいという傾向を持っている。従って、3で割り切れる六進法2×3=10)や十八進法(2×9=10)や三十進法(2×15=10)、4で割り切れる二十進法(4×5=10)との親和性が強い傾向が見られる(→矩形数)。2と3で割り切れる点は六進法や十八進法と同じであるが、「4×奇素数」で桁上がりする構造は二十進法と同じである。

また、十八進法とは4と9の立場が逆転する。十八進法では一桁で9分割が可能となるが、4ずつは一の位が「4→8→C→G→2→6→A→E→0→4」の9個循環になる。十二進法では一桁で4分割が可能となるが、9ずつは一の位が「9→6→3→0→9」の4個循環になる。

5以降の素数は、一の位が 1, 5, 7, B のいずれか、すなわち 39 を除く奇数になる。例えば:

  • 十進法の13 → 十二進法では11
  • 十進法の17 → 十二進法では15
  • 十進法の79 → 十二進法では67
  • 十進法の107 → 十二進法では8B
  • 十進法の126 → 十二進法ではA6

となる。

倍数の法則

  • 3の倍数は末尾が0、3、6、9のいずれか。
  • 4の倍数は末尾が0、4、8のいずれか。
  • 6の倍数は末尾が0か6のいずれか。
  • Bの倍数は数字和がBとなる数。
整数の数値

十二進表記の整数は、以下の数値になる。

  • (30)10 = (26)12 (2×121 + 6)
  • (45)10 = (39)12 (3×121 + 9)
  • (60)10 = (50)12 (5×121)
  • (90)10 = (76) (7×121 + 6)
  • (100)10 = (84)12 (8×121 + 4)
  • (135)10 = (B3)12 (11×121 + 3)
  • (144)10 = (100)12 (1×122)
  • (216)10 = (160)12 (1×122 + 6×121) = (1000)6
  • (256)10 = (194)12 (1×122 + 9×121 + 4) = (100)16
  • (270)10 = (1A6)12 (1×122 + 10×121 + 6)
  • (360)10 = (260)12 (2×122 +6×121)
  • (400)10 = (294)12 (2×122 + 9×121 + 4) = (100)20
  • (720)10 = (500)12 (5×122)
  • (810)10 = (576)12 (5×122 + 7×121 + 6)
  • (1008)10 = (700)
  • (1600)10 = (B14)12 (11×122 + 1×121 + 4)
  • (1728)10 = (1000)12 (1×123)
  • (2000)10 = (11A8)12 (1×123 + 1×122 + 10×121 + 8)
  • (2112)10 = (1280)12 (1×123 + 2×122 + 8×121)
  • (3077)10 = (1945)12 (1×123 + 9×122 + 4×121 + 5)
  • (4096)10 = (2454)12 (2×123 + 4×122 + 5×121 + 4) = (1000)16
  • (5022)10 = (2AA6)12 (2×123 + 10×122 + 10×121 + 6)
  • (5832)10 = (3460)12 (3×123 + 4×122 + 6×121) = (1000)18
  • (6561)10 = (3969)12 (3×123 + 9×122 + 6×121 + 9) = (10000)9
  • (10368)10 = (6000)12 (6×123)
  • (20736)10 = (10000)12 (1×124)
  • (46656)10 = (23000)12 (2×124 + 3×123) = (1000000)6
整数の計算例
  • 様々なN進法からの換算
    • 十進法の 2000 - 60 = 1940 → 十二進法では 11A8 - 50 = 1158
    • 十進法の 45 × 16 = 720 → 十二進法では 39 × 14 = 500
    • 十進法の 212 = 4096 → 十二進法では 210 = 2454
    • 六進法の 13000 + 132 = 13132 → 十二進法では 1160 + 48 = 11A8 (十進法では 1944 + 56 = 2000)
    • 六進法の 400 ÷ 3 = 120 → 十二進法では 100 ÷ 3 = 40 (十進法では 144 ÷ 3 = 48)
    • 十八進法の 249 + 49 = 290 → 十二進法では 509 + 69 = 576 (十進法では 729 + 81 = 810)
    • 二十進法の 55C × 9 = 27A8 → 十二進法では 1280 × 9 = B000 (十進法では 2112 × 9 = 19008)
  • 十二進法→十進法
    • 十二進法の 50 ÷ 2 = 26 → 十進法では 60 ÷ 2 = 30
    • 十二進法の 700 ÷ 7 = 100 → 十進法では 1008 ÷ 7 = 144
    • 十二進法の 1000 ÷ 4 = 300 → 十進法では 1728 ÷ 4 = 432
  • 十二進法→六進法
    • 十二進法の 194 × 69 = 10000 → 六進法では 1104 × 213 = 240000
    • 十二進法の 1000 ÷ 54 = 23 → 六進法では 12000 ÷ 144 = 43

累乗数の換算表 編集

以下の表に、十二進数で表記した十二累乗数と、それを六進数(底が二の三倍)、十進数(底が二の五倍)、二十進数(底が四の五倍)に換算した数値を掲載する。万や億との対比を判り易くするため、桁は四つごとに区切る。

十二進数は「3の倍数」かつ「4の倍数」進数であるが、桁上がりの速さは、「3の倍数」の六進数よりは「4の倍数」の二十進数に近い。3乗への桁上がりでは、六進数とは8倍の差{1000(12) = 12000(6) = 1728(10)}だが、二十進数とは5倍の差{5000(12) = 11C0(20) = 8640(10)}になる。4乗への桁上がりでも、六進数とは24(6)倍=16(10)倍の差{10000(12) = 240000(6) = 20736(10)}、十進数とは2倍の差{10000(12) = 20736(10)}、二十進数とは8倍の差{80000(12) = 10EE8(20) = 165888(10)}、十八進数とも5倍の差{50900(12) = 10000(18) = 104976(10)}である。

また、十二の累乗数と二十の累乗数を対比すると、十二の六乗と二十の五乗が最も接近する{両者とも(300万)10前後。10A3A28(12) = 100000(20) = 3200000(10)}。十二の累乗数と十八の累乗数も同じく、十二の六乗と十八の五乗が最も接近する{両者とも(200万)10前後。771600(12) = 100000(18) = 1889568(10)}。

十二の累乗数の換算
指数 十二進数 六進数に換算 十進数に換算 二十進数に換算
1 10 20 12 C
2 100 400 144 74
3 1000 1 2000 1728 468
4 1 0000 24 0000 2 0736 2BGG
5 10 0000 520 0000 24 8832 1 B21C
6 100 0000 1 4400 0000 298 5984 I D4J4
7 1000 0000 33 2000 0000 3583 1808 B3 IJA8
8 1 0000 0000 1104 0000 0000 4 2998 1696 6E7 7E4G
9 10 0000 0000 2 2120 0000 0000 51 5978 0352 40C8 CAHC
A 100 0000 0000 44 2400 0000 0000 619 1736 4224 2 8793 AAB4
B 1000 0000 0000 1325 2000 0000 0000 7430 0837 0688 19 09A2 66E8
10 1 0000 0000 0000 3 0544 0000 0000 0000 8 9161 0044 8256 H8 5E17 G0CG

他のN進数との互換 編集

他のN進数を十二進数に変換するには、整数部分はそのまま十二進数に変換し、小数部分は十二の累乗数を他のN進数に変換した数値を掛ける。

六進数→十二進数

(例)六進数 1.225245314(2の平方根

  • 小数の分母:1000000000(6) → 144000000(6)(十二進換算値:3460000(12) → 1000000(12)、十進換算値:10077696 → 2985984)
  • 225245314 × 0.144000000 = 42302030.544 → 42302031(6)
  • 42302031(6) = 4B7917(12)(十進換算値は1236835)

よって、1.225245314(6) ≒ 1.4B7917(12) となる。

十進数→十二進数

(例)十進数 42.195(フルマラソンのキロ数)

  • 整数:42(10) = 36(12)
  • 小数の分母:1000(10) → 144(10)(十二進換算値:6B4(12) → 100(12)
  • 195 × 0.144 = 28.08 → 28(10)
  • 28(10) = 24(12)

よって、42.195(10) ≒ 36.24(12) となる。

十六進数→十二進数

(例)十六進数 73.93(倍率、細分値)

  • 整数:73(16) = 97(12)(十進換算値は115)
  • 小数の分母:100(16) → 5100(16)(十二進換算値:194(12) → 10000(12)、十進換算値:256 → 20736)
  • 93 × 51 = 2E83 → 2E83(16)
  • 2E83(16) = 6A83(12)(十進換算値は11907)

よって、73.93(16) = 97.6A83(12) となる。

二十進数→十二進数

(例)二十進数 56.B38(倍率、細分値)

  • 整数:56(20) = 8A(12)(十進換算値は106)
  • 小数の分母:1000(20) → 468(20)(十二進換算値:4768(12) → 1000(12)、十進換算値:8000 → 1728)
  • B38 × 0.468 = 285.1F4 → 285(20)
  • 285(20) = 685(12)(十進換算値は965)

よって、56.B38(20) ≒ 8A.685(12) となる。

小数と除算 編集

桁が一つ動く度に数が十二倍変わるため、小数第一位は「十二分の一の位」、小数第二位は「百四十四分の一の位」となる。従って、十二進法では:

  • (0.1)12 = 1/12 (1×12-1)
  • (0.5)12 = 5/12 (5×12-1)
  • (0.A)12 = 10/12 (10×12-1)
  • (0.01)12 = 1/144 (1×12-2)
  • (0.03)12 = 3/144 (3×12-2)
  • (0.14)12 = 16/144 (1×12-1 + 4×12-2)
  • (0.75)12 = 89/144 (7×12-1 + 5×12-2)
  • (0.76)12 = 90/144 (7×12-1 + 6×12-2)
  • (0.001)12 = 1/1728 (1×12-3)

を、それぞれ意味する。十二と五は互いに素なので、5/1075/100は約分できず、既約分数になる。

計算例 編集

十二進法は、10 の素因数分解が「10 = 22×3」になり、2の冪指数が2つになる。従って、冪指数が一対一の関係になる六進法(10 = 2×3)や十進法(10 = 2×5)とは様々な面で異なる。十二進法と似たような現象は、二十進法(10 = 22×5)や十八進法(10 = 2×32)でも発生する。

加減算の例 編集

十二進法では十二倍ごとに桁を変えるので、小数では「y年m箇月」の計算が容易になる。

7.6 + 1A.6 = 26
  • この十二進数の数式を十進数で解釈すれば、「7年6箇月 + 22年6箇月 = 30年」と見ることができる。桁を一つ繰り上げると、76(12)箇月=90(10)箇月、1A6(12)箇月=270(10)箇月、260(12)箇月=360(10)箇月となり、数字と月数が一致する。
1200.B - 4.6 = 11B8.5
  • この数式を十進数で換算すると、「2016と11/12 - 4と6/12 = 2012と5/12」となる。これを別の言い方をすると、「2016年11月の4年6箇月前は、2012年5月」ということがすぐに判る。
  • これを十進数でやると、帯分数にせざるを得ず、小数化すると循環小数になって正確な値を出しにくい。上記の十二進数の数式も、十進数では「2016.91666… - 4.5 = 2012.41666…」になってしまう。
2の演算の例 編集
3×5/4 = 3.9(12)

3×5/4、すなわち十進分数の 15/4、六進分数の 23/4 に当たる小数は、十進数では3.75(10)、六進数では3.43(6)に対して、十二進数では3.9(12)となり小数点以下が一桁になる。これは、十進数や六進数では2の冪指数が1つ(すなわち底が単偶数)なのに対して、十二進数では2の冪指数が2つ含まれているからである。
これらの小数を分解すると、十進数では 3 + 75/100 (= 3/4) と 3 + 9/12 (= 3/4) が 15/4 で同値となる。六進数でも、3 + 43/100 (= 3/4) と 3 + 13/20(= 3/4) が 23/4 で同値となる。

5/24 = 0.39(12)

前述の 3.9(12)を一桁下げた 0.39(12)は、十進数では 0.3125(10)、六進数で 0.1513(6) になる。 これは、素因数分解の上既約分数にすると 5/24 の小数だが、十進数の場合 5×0.0625(分子が54)で0.3125、 六進数の場合 5×0.0213(分子が34)で0.1513になるのに対して、十二進数の場合 5×0.09(分子が32)で0.39になる。
このように、十進数の場合「2の4乗には5の4乗」、六進数の場合「2の4乗には3の4乗」であるのに対して、十二進数では「2の4乗には3の2乗」となり、2の冪指数が偶数の場合は分子となる3の冪指数は1/2になる。

0.39 × 6 = 1.A6

この十二進数の数式は、十進数では 0.3125×6 = 1.875、六進数では0.1513×10 = 1.513となるが、小数部分を既約分数にすると 7/8 になる。7/8 すなわち 7/23の小数も、十進数では7×0.125 = 0.875で「7×53」、六進数では11×0.043 = 0.513で「7×33」の数が現れるのに対して、十二進数では7×0.16 = 0.A6 となる。つまり、2の冪指数が奇数の時、逆数の分子は6の倍数になる。
この十二進数0.A6(12)を分数化すると、十進数では 126/144 = 7/8、六進数でも 330/400 = 11/12 となり、数値が一致する。

3.9 × 6 = 1A.6

前記の小数を一桁上げた数式で、十進数では 3.75×6 = 22.5、六進数では 3.43×10 = 34.3となるが、小数部分を既約分数にすると 1/2 になる。
これをy年m箇月の計算に当て嵌めることも可能で、十進数で換算すると「3年9箇月の6倍は22年6箇月」とも言える。

3の演算の例 編集

十二進法は奇数の因数に3が含まれているので、除数が3の冪数であれば割り切れる数になる。但し、十二進法は10の素因数分解が22×3なので、3の冪数による除算は、小数点を消した値が「2の偶数乗を掛けた値」になる。例えば、除数が33の場合、逆数の分子は23×2=26になる(→詳細はこちらも参照すること)。冪指数が小さい場合でも、六進法の場合 1/3は0.2、1/9 (1/136) は0.04(分子が22)に対して、十二進法では 1/3は0.4(分子が22)、1/9は0.14(分子が24)になる。

57.6÷9

十進数の 57.6÷9、十二進数の57.6 ÷ 9 の商は、以下の通りとなる。

  • 十進法: 57.6 ÷ 9 = 6.4
  • 十二進法: 57.6 ÷ 9 = 7.6

桁を一つ繰り上げて小数点を消すと、576(10) は 64×9 だが、576(12) は 810(10)、つまり十進数換算値が 90×9 である。576(12)を十進数で分解すると、5×122 + 7×121 + 6 = 720 + 84 + 6 = 810 となる。

更に、十進法の 576÷9 = 64 も、十二進法では 400÷9 = 54 となる。

  • 十進法:576 ÷ 9 = 64
  • 十二進法:400 ÷ 9 = 54

576(10) を十進数で分解すると、十進法では 5×102 + 7×101 + 6 = 500 + 70 + 6 で 576 となるが、十二進法では 4×122 で 400(12)となる。50(12) は 60(10) なので、4 を加えた 54(12) も 64(10) に等しい。別の言い方をすると、「五六個の九分割は六十四個」は「四グロスを九人で分けて、五ダース四個」になるのに対して、「五グロス七ダース六個の九分割は七ダース六個」は「八百十個の九分割は九十個」になるとも言える。このように、十二進法では、「400個」の物品を3人や9人でぴったり分けることができる。

576÷9の商
十二進法 十進法に換算
576÷9 = 76 810÷9 = 90
400÷9 = 54 576÷9 = 64
1.75(12)7/4 ではない
  • 十二進法:175 ÷ 100 = 1.75
  • 十進法:233 ÷ 144 = 1.6180555…
  • 六進法:1025 ÷ 400 = 1.3413

十二進法の1.75(12) 列びに (175/100)12は、十進分数では 7/4 ではなく、233/144 すなわち黄金比の概数になる。

23 ÷ 33(十進分数 8/27
  • 六進法:12 ÷ 43 = 0.144
  • 十二進法:8 ÷ 23 = 0.368

十分の三」は、十進法が0.3(10)、六進法が0.1444…(6)に対して、十二進法では0.37249(12)になる。「十分の三」の近似値である「二十七分の八」は、六進法が0.144(6)に対して、十二進法では0.368(12)で分子・分母が六進法の八倍になる。十二進分数 368/1000 の六進数換算値は 2212/12000 = 12×144/12×1000 になる。

82 ÷ 92(= 26 ÷ 34、十進分数 64/81
  • 六進法:144 ÷ 213 = 0.4424
  • 十二進法:54 ÷ 69 = 0.9594

六進数は「2の4乗には3の4乗」「3の4乗には2の4乗」という一対一の関係なので、3-4も0.0024(6)で分子が24 となり、210÷34 では分子に現れる数は 210+4 = 214、すなわち 144×0.0024 = 0.4424(6)となる。
しかし、十二進数では「2の4乗には3の2乗」とは逆に「3の4乗には2の8乗」の関係になり、26÷34 で分子に現れる数は 2A の 714(12)(すなわち 4424(6) = 1024(10))ではなく、26+8 = (212)12 で 9594(12)(すなわち 203504(6) = 16384(10))となる。3-4も0.0194(12)で分子が28となり、26÷34 も 54×0.0194 = 0.9594(12)となる。
0.9594(12)を六進数で分解すると、0.9594(12) = 203504/240000 = (16384/20736)10、0.4424(6)4424/10000 = (1024/1296)10となり、双方の差は203504 ÷ 4424 = 24倍 となる。

2 ÷ 36(十進分数 2/729
  • 六進法:2 ÷ 3213 = 0.000332
  • 十二進法:2 ÷ 509 = 0.0048A8

「1年に1回」を概数にすると 2/36 の分数になるが、六進法と十二進法の両方とも、3-6(七百二十九分割)は小数点以下六桁になる。分数に換算すると、六進法の場合 0.000332(6) = (332/1000000)6 = (128/46656)10になるが、十二進法の場合 0.0048A8(12) = (101532/144000000 = 144×332/144×1000000)6 = (8192/2985984)10になる。
六進法の3-6は分子が26=144(6)=64(10)、分母が23000(12)=1000000(6)=46656(10)に対して;十二進法で3-6をすると、分子は26×22454(12)=30544(6)=4096(10)、分母は1000000(12)144000000(6)=2985984(10)で分子・分母が六進法の六十四倍になる。

素因数に3が含まれない冪数の除算

十進法100(10) や 1000(10) など十の冪数二十進法の 100(20)(=400(10))や 1000(20)(=8000(10))など二十の冪数、十六進法の 100(16)(=256(10))など二の冪数進法による冪数は、39で割り切れないが、十二進法では割り切れる(六進法も同様)。十進法の 100(10) は十二進法では 84(12)、十六進法の 100(16) は十二進法では 194(12) となる(→他の商は後述)。

  • 1/3 メートル
    • 十進法:100 ÷ 3 = 33.3333… センチメートル
    • 十二進法:(84)12 ÷ 3 = (29.4)12 センチメートル
  • 1/3 リットル
    • 十進法:1000 ÷ 3 = 333.3333… ミリリットル
    • 十二進法:(6B4)12 ÷ 3 = (239.4)12 ミリリットル
  • 1/9 キロメートル
    • 十進法:1000 ÷ 9 = 111.1111… メートル
    • 十二進法:(6B4)12 ÷ 9 = (93.14)12 メートル
  • 28 ÷ 3 (十進換算:256 ÷ 3)
    • 十六進法:(100)16 ÷ 3 = 55.5555…
    • 十二進法:(194)12 ÷ 3 = 71.4
  • 1/3バク(※「バク」はマヤ数詞で四百。十進換算:400 ÷ 3)
    • 二十進法:(100)20 ÷ 3 = 6D.6D6D…
    • 十二進法:(294)12 ÷ 3 = B1.4
2と3を除く演算の例 編集

5を除数とする演算を割り切る条件は、被除数の約数に5が含まれることが条件になる。

  • (32×7) ÷ 33(十進法の場合 63 ÷ 27)
    • 十二進法:53 ÷ 23 = 2.4
    • 十六進法:3F ÷ 1B = 1.5555…
    • 二十進法:33 ÷ 17 = 2.6D6D…
  • (32×7) ÷ (2×3×5)(十進法の場合 63 ÷ 30)
    • 十二進法:53 ÷ 26 = 2.124972497…
    • 十六進法:3F ÷ 1E = 2.1999…
    • 二十進法:33 ÷ 1A = 2.2

十二進法で循環節が長くなる例として、5-21/21)が20(10)桁、7-21/41)が42(10)桁が挙げられる。逆に、十進法では22(10)桁、二十進法では55(10)桁、六進法や十八進法でも110(10)桁になるB-21/A1)は、十二進法では僅B(12)桁=11(10)桁になる。

(211 ÷ A2)12 { (213÷102)10
  • 六進法:101532 ÷ 244 = 213.53041
  • 十進法:8192 ÷ 100 = 81.92
  • 十二進法:48A8 ÷ 84 = 69.B0591 5343A 0B62A 68781
  • 十八進法:1752 ÷ 5A = 49.GA17
  • 二十進法:109C ÷ 50 = 41.I8
(102 ÷ B2)12{ (122÷112)10
  • 十進法:144 ÷ 121 = 1.19008 26446 28099 17355 37
  • 十二進法:100 ÷ A1 = 1.23456789B01

一桁小数による分割 編集

十二進法では 0.1(12) が「十二分の一」になるため、0.3(12)1/4 になり、0.4(12)1/3 になり、0.6(12)1/2 になり、0.A(12)(十進法で10/12)は 5/6 になる。その他、m/d として分数化できる一桁小数として、0.8(12)2/3 となり、0.9(12)3/4 となる。

従って、ある数値に 0.4(12) を掛けると 1/3 になり、0.9(12) を掛けると 3/4 になる。位取りに応用すると、Nの8倍は、Nの十二倍を 2/3 にした数値になる。このように、一桁小数で三分割と四分割が可能になる(ただし、五分割はできない)。他のN進法との連関では、1/3 である 0.4(12)六進法の 0.2(6) や十八進法の 0.6(18)と同値になり、1/4 である 0.3(12)二十進法の 0.5(20) と同値になる。

8倍と0.8
  • 十二を掛ける:(76)12 × (10)12 = (760)12(十進法:90の 12倍 は1080。六進法:230 × 20 = 5000)
  • 8を掛ける: (76)12 × (8)12 = (500)12(十進法:90の 8倍 は720。六進法:230 × 12 = 3200)
  • 0.8を掛ける:(760)12 × (0.8)12 = (500)12(十進法:1080の 2/3 は720。六進法:5000 × 0.4 = 3200)
除算と一桁小数
  • 除算:(76)12 ÷ (3)12 = (26)12(十進法:90 ÷ 3 = 30。六進法:230 ÷ 3 = 50)
    • 一桁小数を掛ける:(76)12 × (0.4)12 = (26)12(十進法:90の 1/3 は30。六進法:230 ×0.2 = 50)
    • 一桁小数を掛ける:(76)12 × (0.8)12 = (50)12(十進法:90の 2/3 は60。六進法:230 ×0.4 = 140)
  • 除算:(760)12 ÷ (4)12 = (1A6)12(十進法:1080 ÷ 4 = 270。二十進法:2E0 ÷ 4 = DA)
    • 一桁小数を掛ける:(760)12 × (0.3)12 = (1A6)12(十進法:1080の 1/4 は270。二十進法:2E0 × 0.5 = DA)
    • 一桁小数を掛ける:(760)12 × (0.9)12 = (576)12(十進法:1080の 3/4 は810。二十進法:2E0 × 0.F = 20A)

小数との置換表 編集

以下の表に、十二進法の小数と、それに相当する分数や商を掲載する。割り切れない小数の循環部分は下線で表す。十二はと四では割り切れるがでは割り切れないため、五で割った際に循環小数になって割り切れない例が多数発生する。五が対応できなくても四と三が対応できることから、十二進法は「小から大へ」の分割法を採っているのが特徴である。

可分性が最も上がる例は、「5の倍数」が被除数になるパターンである。このパターンでは、7の倍数とB(十一)の倍数を除いてほぼ割り切れる。「3で割り切れるが、2と5と9では割り切れない数」が被除数になるパターンでは、16(12)18(10)までの3の倍数のうち、割り切れない数は13(12)15(10)だけとなる。

また、六進法は「10 - 1」が5になり、1/5の小数が0.1111…となって1111(6)259(10)(=(37×7)(10))の倍数となって循環し、5-2 = (m/41)6 = (m/25)10の小数は 0.01235… となって1235(6)311(10)の倍数五桁が循環する。これに対して、十二進法は「10 - 1」がB(十進法の11)で5の倍数ではないので、1/5の循環小数は 0.2497…で四桁になり、これに最も近い37(10)の倍数は 2494(12)(=31104(6)=4144(10)=(37×7×16)(10)となる。

そして、5-2 = (m/21)12の小数は、循環節が「05915 343A0 B62A6 8781B」の二十桁と長く、先頭五桁が05915となるが、これは十進法に直すと9953 (= 311×32 + 1)(10))となる。十二進法における5-nの循環節は 4×5n-1 となり、5-1が四桁、5-2が二十桁、5-3が百桁になる。逆に、六進法では 5-2 = 0.01235…で五桁、十八進法でも5-2 = 0.0CH5…で四桁となる。

十二進法の小数と除算
除数 2 3 4 5 6 7 8 9 A B 10
被除数が1 0.6 0.4 0.3 0.2497 0.2 0.186A35 0.16 0.14 0.12497 0.111… 0.1
被除数が5 2.6 1.8 1.3 1 0.A 0.86A351 0.76 0.68 0.6 0.555… 0.5
被除数が8 4 2.8 2 1.7249 1.4 1.186A35 1 0.A8 0.9724 0.888… 0.8
被除数がA
(十進法の10)
5 3.4 2.6 2 1.8 1.5186A3 1.3 1.14 1 0.AAA… 0.A
被除数が10
(十進法の12)
6 4 3 2.4972 2 1.86A351 1.6 1.4 1.2497 1.111… 1
被除数が15
(十進法の17)
8.6 5.8 4.3 3.4972 2.A 2.5186A3 2.16 1.A8 1.84972 1.666… 1.5
被除数が26
(十進法の30)
13 A 7.6 6 5 4.35186A 3.9 3.4 3 2.888… 2.6
被除数が50
(十進法の60)
26 18 13 10 A 8.6A3518 7.6 6.8 6 5.555… 5
被除数が84
(十進法の100)
42 29.4 21 18 14.8 12.35186A 10.6 B.14 A 9.111… 8.4
被除数が93
(十進法の111)
47.6 31 23.9 1A.2497 16.6 13.A35186 11.A6 10.4 B.12497 A.111… 9.3
被除数が100
(十進法の144)
60 40 30 24.9724 20 18.6A3518 16 14 12.4972 11.111… 10
被除数が194
(十進法の256)
A8 71.4 54 43.2497 36.8 30.6A3518 28 24.54 21.7249 1B.333… 19.4
被除数が294
(十進法の400)
148 B1.4 84 68 56.8 49.186A35 42 38.54 34 30.444… 29.4
被除数が441
(十進法の625)
220.6 154.4 110.3 A5 88.2 75.35186A 66.16 59.54 52.6 48.999… 44.1
被除数が6B4
(十進法の1000)
358 239.4 18A 148 11A.8 BA.A35186 A5 93.14 84 76.AAA… 6B.4
十二進法の小数と分数(五分割まで)
分数 1/2 (= 2/4) 1/3 2/3 1/4 3/4 1/5 2/5 3/5 4/5
被除数が1 0.6 0.4 0.8 0.3 0.9 0.2497 0.4972 0.7249 0.9724
被除数が3 1.6 1 2 0.9 2.3 0.7249 1.2497 1.9724 2.4972
被除数が5 2.6 1.8 3.4 1.3 3.9 1 2 3 4
被除数が8 4 2.8 5.4 2 6 1.7249 3.2497 4.9724 6.4972
被除数が9 4.6 3 6 2.3 6.9 1.9724 3.7249 5.4972 7.2497
被除数が10
(十進法の12)
6 4 8 3 9 2.4972 4.9724 7.2497 9.7249
被除数が15
(十進法の17)
8.6 5.8 B.4 4.3 10.9 3.4972 6.9724 A.2497 11.7249
被除数が26
(十進法の30)
13 A 18 7.6 1A.6 6 10 16 20
被除数が50
(十進法の60)
26 18 34 13 39 10 20 30 40
被除数が76
(十進法の90)
39 26 50 1A.6 57.6 16 30 46 60
被除数が260
(十進法の360)
130 A0 180 76 1A6 60 100 160 200
無理数の換算表
主な無理数 十二進法 六進法 十進法 二十進法
円周率 3.184809 493B86… 3.050330 051415 1235… 3.141592 653589… 3.2GCEG9 GBHB74…
2の平方根 1.4B7917 0A07B7… 1.225245 314205 5233… 1.414213 562373… 1.85DE37 JGEJA8…
3の平方根 1.894B97 BB967B… 1.422042 321254 5451… 1.732050 807568… 1.ECG82B DDEG68…
5の平方根 2.29BB13 254051… 2.122553 553151 3031… 2.236067 977499… 2.4E8AHA B3J9F4…
黄金比 1.74BB67 728022… 1.341254 554353 4312… 1.618033 988749… 1.C7458F 5BJ9F4…

計算表 編集

ここでは、(10)10を A 、(11)10を B と表記する。

十二進法は「3×4=10」となる「奇数の四倍」進法なので、六進法(3×2=10)や十進法(5×2=10)といった「冪指数が一対一」のN進法とは異なる要素を持っている。十二進法の乗算を覚える要領として、以下の点が挙げられる。次の「奇数の四倍」進法となる二十進法(5×4=10)や、底が「九の二倍」となる十八進法(9×2=10)は、この応用編となる。

主要の段
  • 半数は6の段。
  • m/4 となる奇数39)は、4の倍数を掛けると、一の位が0になる。1/4となる3の段は一の位が3→6→9→0→3で循環し、3/4となる9の段は一の位が9→6→3→0→9で循環する。
  • 4の倍数(48)は、3の倍数を掛けると、一の位が0になる。1/3となる4の段は一の位が4→8→0→4で循環し、2/3となる8の段は一の位が8→4→0→8で循環する。
その他の段
  • 他の段は、3の倍数を掛けると、一の位が3, 6, 9, 0のどれかになる。
  • 他の段は、4の倍数を掛けると、一の位が4, 8, 0のどれかになる。
  • 末尾となるB十一)の段は、一の位と十二の位の和がBになる。
  • 10-2となるA)の段は、一の位は2ずつ減る。一の位はA→8→6→4→2→0の順に変化する。
  • 5の段は、偶数を掛けると、一の位の数は2ずつ減る。そして、4の倍数を掛けると、一の位は8→4→0の順に変化する。
  • 7の段は、偶数を掛けると、十二の位は一の位の数の半分になる(例:(12)12=(14)10)。そして、4の倍数を掛けると、一の位は4→8→0の順に変化する。
加算表
+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B
0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B
1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B 10
2 2 3 4 5 6 7 8 9 A B 10 11
3 3 4 5 6 7 8 9 A B 10 11 12
4 4 5 6 7 8 9 A B 10 11 12 13
5 5 6 7 8 9 A B 10 11 12 13 14
6 6 7 8 9 A B 10 11 12 13 14 15
7 7 8 9 A B 10 11 12 13 14 15 16
8 8 9 A B 10 11 12 13 14 15 16 17
9 9 A B 10 11 12 13 14 15 16 17 18
A A B 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
B B 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 1A
乗算表
× 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B
2 0 2 4 6 8 A 10 12 14 16 18 1A
3 0 3 6 9 10 13 16 19 20 23 26 29
4 0 4 8 10 14 18 20 24 28 30 34 38
5 0 5 A 13 18 21 26 2B 34 39 42 47
6 0 6 10 16 20 26 30 36 40 46 50 56
7 0 7 12 19 24 2B 36 41 48 53 5A 65
8 0 8 14 20 28 34 40 48 54 60 68 74
9 0 9 16 23 30 39 46 53 60 69 76 83
A 0 A 18 26 34 42 50 5A 68 76 84 92
B 0 B 1A 29 38 47 56 65 74 83 92 A1
倍数表
乗数 101 101の十進表記 102 102の十進表記 103 103の十進表記
1 10 12 100 144 1000 1728
2 20 24 200 288 2000 3456
3 30 36 300 432 3000 5184
4 40 48 400 576 4000 6912
5 50 60 500 720 5000 8640
6 60 72 600 864 6000 10368
7 70 84 700 1008 7000 12096
8 80 96 800 1152 8000 13824
9 90 108 900 1296 9000 15552
A A0 120 A00 1440 A000 17280
B B0 132 B00 1584 B000 19008

命数法 編集

十二進命数法とは、12 を底とする命数法である。

数詞 編集

自然言語で十二進命数法の数詞を持つものは少ない。ナイジェリアのジャンジ語[1] (Janji)、ビリ・ニラグ語[2] (Gbiri-Niragu)、グワンダラ語ニンビア方言[3] (Nimbia)、ピティ語[4] (Piti) などが十二進命数法のグループを作り[5]、またネパールのチェパン語[6] (Chepang) も十二進命数法を用いている[7]

以下にグワンダラ語ニンビア方言の数詞を示す[5]

十二進表記 十進表記 数詞
1 1 da
2 2 bi
3 3 ugu
4 4 furu
5 5 biyar
6 6 shide
7 7 bo'o
8 8 tager
9 9 tanran
A 10 gwom
B 11 kwada
10 12 tuni
11 13 tuni mbe da
20 24 gume bi
21 25 gume bi ni da
BB 143 gume kwada ni kwada
100 144 wo

ゲルマン語派の数詞は、十二以下と十三以降とで構成が異なる。以下に英語ドイツ語スウェーデン語の数詞を示す。

十二進表記 十進表記 英語 ドイツ語 スウェーデン語
A 10 ten zehn tio
B 11 eleven elf elva
10 12 twelve zwölf tolv
11 13 thirteen dreizehn tretton
12 14 fourteen vierzehn fjorton

十一と十二の数詞の語源はそれぞれ 1 余り、2 余りを意味する *ainlif, *twalif であり、十三以降の数詞は十進法に基づく数詞だが、十二以下と十三以降で構成が異なるのを十二進法の影響とする説がある。

英語の hundred など、現在「百」「十二進数84」を意味する語は、中世までは「百二十」「十二進数A0」を意味することがあった(en:Long hundred を参照)。ロジバンは十, 十一, 十二に個別の数詞があり、十二進法に対応している(実際には十六進法にまで対応する)。

単位系 編集

現在、十二進法はもっぱら単位系で使われている。数は十進記数法で 9, 10, 11 と表し、12144 に至ると桁ではなく単位を繰り上げる。すなわち、記数法と単位が一致していない。

単位の十二進法は、言語の数詞とは無関係に発生したと考えられる。1 年がほぼ 12 かであること(360 ÷ 30 = 12。満月新月の回数がほぼ 12 回)に因むとされる。メソポタミア文明ではこれが 1 年を 12 か月とする暦法となり、12 は 30 と同様に主に時間を示す際の基数となった。1 日 24 時間の 24 は 12 の 2 倍であり、六十進法60 は 12 と 30 の最小公倍数である。黄道十二宮はこれに基づく。中国十二支も黄道十二宮と同じように、循環する十二進法である。

また、 12 は 4×3 であり、1 とその数以外の約数2, 3, 4, 6 の 計 4 個と多く、4 までの全てで割り切れる点も、十二進法の単位が用いられる一因となった。十進法10 は、1 とその数以外の約数が、2 と 5 の 計 2 個しかない。六進法の 6 は、1 とその数以外の約数が 2 と 3 の計 2 個で便利であるが、4 分割ができず、4 分割は 2 倍 の 12 か、平方数36 まで待たねばならない。

例えば、通貨を3単位×4の十二進法にすると、1728 (= 123) の貨幣を 12 (= 121) と 36 (= 121×3、122÷4) と 144 (= 122) と 432 (= 122×3、123÷4) の四種類の貨幣に分けて、「432の貨幣が2枚」で二分割(1728÷2 = 864)したり、「432の貨幣が1枚 + 144の貨幣が1枚」で三分割(1728÷3 = 576)したり、「432の貨幣が1枚」で四分割(1728÷4 = 432)したり、「144の貨幣が1枚 + 36の貨幣が2枚」で八分割(1728÷8=216)したり、「144の貨幣が1枚 + 36の貨幣が1枚 + 12の貨幣が1枚」で九分割(1728÷9=192)したりすることが可能になる。後述のペンス通貨やアス通貨が、このような三分割と四分割を考慮した単位に該当する。

日本では、12 ヶ月を 1 年というのに対して、144 ヶ月 (= 12 年) を 1 回りという。

物の数を表すダース (12)、グロス (144 = 122)、グレートグロス (1728 = 123)、スモールグロス (120 = 12×10) という単位があり、西洋で用いられる。1971年2月15日まで、イギリスポンドは、1 ポンドは 240 ペンスであり、12 ペンスが 1 シリング、20 シリングが 1 ポンドであった。

この他にも、ヤード・ポンド法は十二進法が主流であり、長さの 1 フィート = 12 インチ = 144 ライン = 1728 ポイントである。同じく、1 トロイポンド = 12 トロイオンス = 144 スカラプル = 1728 シードである。プラモデルの縮尺に 1/144 (= 12-2) が多いのも、12 フィートすなわち 144 インチを逆数にしたサイズが由来である。

また、ローマ帝国の数詞や単位は十進法が通例であったが、アス (as) 通貨は異例で十二進法を想定した単位を設定した。アス通貨の下部単位として、1/2 アスのセミス (semis)、1/3 アスのトリエンス (triens)、2/3 アスのベス (bes)、1/4 アスのクォドランス (quadrans)、3/4 アスのドドランス (dodrans)、1/6 アスのセクスタンス (sextans)、1/12 アスのウンシア (uncia)、5/12 アスのクインクンクス (quincunx) が使用されており、中でも semis は「半」を意味する接頭辞 "semi-" の語源にもなっている。しかし、1/144 アス (= 1/12 ウンシア) や 12 アス (= 144 ウンシア) の単位は設定されず、1/24 アスのセミウンシア (semiuncia) と 2 アス (= 24 ウンシア)のドゥポンディウス (dupondius) のみであった。

他の単位との関連 編集

六進法との関連

十二進法で百分率千分率と同じ冪数分率を作ると、「百四十四分率」「千七百二十八分率」「二万七百三十六分率」となる。ここで問題になる点は、3-p つまり「三分割をp回」した際の小数の分子・分母の大きさである。1/9=3-2六進法と十二進法の両方とも小数第二位となり、六進法は「三十六分率」、十二進法は「百四十四分率」でほぼ互角となる。百四十四分率は(1/16)10=2-4まで収容できるが、3-3以後が大きく変わり、十二進法では(1/27)10=3-3の小数が千七百二十八分率となり、(1/81)10=3-4の小数が二万七百三十六分率まで膨れる。

一方で、六進法は2-pと3-pの冪指数が同じなので、1728(10)=12000(6)=1000(12)1/8である「二百十六分率」{216(10)=1000(6)=160(12)}で1/8と(1/27)10の両方が収容可能で、1000(12)6/8である「千二百九十六分率」{1296(10)=10000(6)=900(12)}で(1/16)10と(1/81)10の両方(つまり2と3の両方で四回分割)まで収容可能となり、いずれも1000(12)に満たない。別の言い方をすると、六進法は「四分割は36(10)まで待たねばならない」が「八分割と二十七分割は216(10)まで待てばよい」のに対して、十二進法は「二十七分割は1728(10)まで待たねばならない」。

(m/27)10の小数は、六進法では 12(6)8=23の倍数だが、十二進法では 54(12)64(10)=26の倍数になる。そして、(m/81)10の小数は、六進法では 24(6)=16(10)の倍数だが、十二進法では 194(12)256(10)の倍数まで膨れてしまう。

このため、除数が「指数が大きい3の冪数」となる割り算では、十二進法は開きが大きくなりやすい。例として、被除数を 28 = 194(12) = 1104(6) = 256(10) とする。

  • 28 ÷ 3
    • 十二進法:194 ÷ 3 = 71.4 → 十進帯分数で「85と4/12」=「85と1/3」
    • 六進法:1104 ÷ 3 = 221.2 → 十進帯分数で「85と2/6」=「85と1/3」
  • 28 ÷ 32
    • 十二進法:194 ÷ 9 = 24.54 → 十進帯分数で「28と64/144」=「28と4/9」
    • 六進法:1104 ÷ 13 = 44.24 → 十進帯分数で「28と16/36」=「28と4/9」
  • 28 ÷ 33
    • 十二進法:194 ÷ 23 = 9.594 → 十進帯分数で「9と832/1728」=「9と13/27」
    • 六進法:1104 ÷ 43 = 13.252 → 十進帯分数で「9と104/216」=「9と13/27」
  • 28 ÷ 34
    • 十二進法:194 ÷ 69 = 3.1B14 → 十進帯分数で「3と3328/20736」=「3と13/81」
    • 六進法:1104 ÷ 213 = 3.0544 → 十進帯分数で「3と208/1296」=「3と13/81」
  • 逆数が28
    • 十二進法:194 ÷ 69 = 3.1B14 → 十進帯分数で「3と3328/20736」=「3と13/81」
    • 六進法:1104 ÷ 50213 = 0.01223224 → 十進分数で「65536/1679616」「256/6561」「28/38

2454(12) = 30544(6) = 4096(10) であり、31B14(12) = 1223224(6) = 65536(10) であり、38 = 3969(12) = 50213(6) = 6561(10) である。
小数点を消すと、六進法の場合 30544 ÷ 13252 = 2(十進換算:4096 ÷ 2048 = 2)で2倍の開きであるが、十二進法の場合 31B14 ÷ 9594 = 4(十進換算:65536 ÷ 16384 = 4)で4倍の開きになる。同じく、34で割った商を、3で割った商で割ると、六進法の場合 30544 ÷ 2212 = 12 で8倍の開き(経過した3の冪指数も、商となる2の冪指数も3で同じ)だが、十二進法の場合 31B14 ÷ 714 = 54 で 64(10)倍の開き(経過した3の冪指数は3だが、商となる2の冪指数が6)になってしまう。

以下の表に示す通り、商の小数点を消した数値も、十二進法では33(27(10)=23(12))で割ると被除数の26倍=64(10)倍=54(12)倍になり、36(729(10)=509(12))で割ると被除数の(210)12倍=4096(10)倍=2454(12)倍まで膨れてしまう。これに対して、六進法では36(729(10)=3213(6))で割ると被除数の26倍=64(10)倍=144(6)倍の数値になる。

3の冪数の逆数(分子・分母は十進換算値)
冪指数 -1 (1/3) -2 (1/9) -3 (1/27) -4 (1/81) -5
(1/243)
-6
(1/729)
-7
(1/2187)
-8
(1/6561)
十二進小数 0.4 0.14 0.054 0.0194 0.00714 0.002454 0.0009594 0.00031B14
六進小数 0.2 0.04 0.012 0.0024 0.00052 0.000144 0.0000332 0.00001104
十二進小数の分子 4 16 64 256 1024 4096 16384 65536
六進小数の分子 2 4 8 16 32 64 128 256
十二進小数の分母 12 144 1728 20736 248832 2985984 35831808 429981696
六進小数の分母 6 36 216 1296 7776 46656 279936 1679616
2の冪数の逆数(分子・分母は十進換算値)
冪指数 -1 (1/2) -2 (1/4) -3 (1/8) -4 (1/16) -5 (1/32) -6 (1/64) -7 (1/128) -8 (1/256)
十二進小数 0.6 0.3 0.16 0.09 0.046 0.023 0.0116 0.0069
六進小数 0.3 0.13 0.043 0.0213 0.01043 0.003213 0.0014043 0.00050213
十二進小数の分子 6 3 18 9 54 27 162 81
六進小数の分子 3 9 27 81 243 729 2187 6561
十二進小数の分母 12 12 144 144 1728 1728 20736 20736
六進小数の分母 6 36 216 1296 7776 46656 279936 1679616

このように、十二進法の小数は、「一桁で四分割」「二桁で八分割と九分割」ができる長所を持つ一方で、「3の冪指数が大きい割り算の分子・分母」が膨大になってしまうという短所も持っている。

指数え 編集

 
十二進法の指数え

十二進法の指数えは、同じ3で割り切れる六進法とは様相が異なる。十二進法の指数えは、親指が指標となり、各指の3つの指骨(末節骨 ・中節骨・基節骨)を小指から数える。片手を十二(10(12))までの数、もう片手を十二の倍数として、片手で十二まで数えて、もう一方の手に繰り上げて百四十四(100(12))まで数える [8][9] 。(実際は十三進法を用いて百六十八まで数えられるが、一般的ではない)

架空の世界での使用 編集

SF作品でも、人類と異なる文明が十二進法を使っているとする設定はよく見られるものである[10]

H・G・ウェルズは『冬眠二百年』(When the Sleeper Wakes, 1899年)や『モダンユートピア』(A Modern Utopia, 1905年)で十二進法を使用し、12 = dozen, 144 (=122) = gross, 1728 (=123) = dozand, 20736 (=124) = myriad としている。

J・R・R・トールキンによる人工言語エルフ語 (Elvish) の数詞は十二進法である(→クウェンヤ)。

十二進法の推進 編集

英米では、十二進法を採用するよう主張する人々がいる[11][12]。人間の手指の数に由来する、原始的で、2と5でしか割り切れない十進法ではなく、3でも4でも割り切れる十二進法の方が理に適っているとされるためである。これらの人々は、十二進法を表す語として、英語で通常使われる duodecimal を「十のおまけ」という言い方だとして嫌い、dozenal を使う。なお、dozenal に相当するスペイン語は、doce(十二)を形容詞化した docenal である。十一を意味する数字には AB を用いず、十 を T または X 、十一 を E で、或いはその変形で表したり、十 を * で、十一を # で表したりする。これらの十二進法推進団体は、百分率(パーセント:記号は「%」)に代わって百四十四分率(パーグロス:記号は"per gross"を縮めた「p/g」)の使用を主張したり、周角の360度(十二進法で260度)から144度(十二進法で100度)または720度(十二進法で500度)への変更も主張している[13]

なお、十進法以外を採用しようという主張は、近年ではコンピュータ二進法との相性から八進法十六進法についても主張されている。しかし、八進法や十六進法は「2の冪数」進法なので、2でしか割り切れない。つまり、1/31/5といった奇数分割ができない[14]。また、「3の倍数」進法を採用しようという立場から、十二進法以外では六進法三十進法についても主張されており、それぞれの長短も議論されている[15]。「5の倍数」に囚われない指数えの方法として、十二進法での指の「関節」で数える方法[16]、六進法での「もう片手は六の位」とする方法[17] が提案されている。

Unicode 8.0 では、十二進法のための10 (  = U+218A, 180度回転した2)と 11(  = U+218B, 180度回転した3)の2つの数字が符号位置を与えられた[18]。この2つの数字はアイザック・ピットマンの考案による。

脚注 編集

  1. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed. (2005), “Janji”, Ethnologue: Languages of the World (15 ed.), http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=jni 2008年3月15日閲覧。 
  2. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed. (2005), “Gbiri-Niragu”, Ethnologue: Languages of the World (15 ed.), http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=grh 2008年3月15日閲覧。 
  3. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed. (2005), “Gwandara”, Ethnologue: Languages of the World (15 ed.), http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=gwn 2008年3月15日閲覧。 
  4. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed. (2005), “Piti”, Ethnologue: Languages of the World (15 ed.), http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=pcn 2008年3月15日閲覧。 
  5. ^ a b Matsushita, Shuji (1998), “Decimal vs. Duodecimal: An interaction between two systems of numeration”, 2nd Meeting of the AFLANG, October 1998, Tokyo, オリジナルの2008年10月5日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20081005230737/http://www3.aa.tufs.ac.jp/~P_aflang/TEXTS/oct98/decimal.html 2007年12月16日閲覧。 
  6. ^ Gordon, Raymond G., Jr., ed. (2005), “Chepang”, Ethnologue: Languages of the World (15 ed.), http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=cdm 2008年3月15日閲覧。 
  7. ^ Mazaudon, Martine (2002), “Les principes de construction du nombre dans les langues tibéto-birmanes”, in François, Jacques, La Pluralité, Leuven: Peeters, pp. 91-119, ISBN 9042912952, http://halshs.archives-ouvertes.fr/docs/00/16/68/91/PDF/numerationTB_SLP.pdf 
  8. ^ Ifrah, Georges (2000), The Universal History of Numbers: From prehistory to the invention of the computer., John Wiley and Sons, p. 48, ISBN 0-471-39340-1 
  9. ^ Macey, Samuel L. (1989). The Dynamics of Progress: Time, Method, and Measure. Atlanta, Georgia: University of Georgia Press. pp. 92. ISBN 978-0-8203-3796-8. https://books.google.co.jp/books?id=xlzCWmXguwsC&pg=PA92&lpg=PA92&redir_esc=y&hl=ja 
  10. ^ 日本の小説では広瀬正の『マイナス・ゼロ』に登場するタイムマシンが十二進法を使っていて、登場人物が、進んだ文明の産物であろうかと推測している。
  11. ^ Dozenal Society of America, http://www.dozenal.org/ 2007年12月16日閲覧。 
  12. ^ Dozenal Society of Great Britain, http://www.dozenalsociety.org.uk/ 2007年12月16日閲覧。 
  13. ^ 米国 Dozenal.org のFAQ 13頁に周角の144度への変更が掲載されている。
  14. ^ Dozensonline 六進法か十二進法か このコラムでも、 八進法は素因数が2だけで、2の冪数以外は蔑視され、可分性が六進法(素因数が2と3)や十進法(素因数が2と5)より劣る点を問題視している。
  15. ^ Dozensonline 六進法と「素因数が2と3」のN進法についての議論
  16. ^ 数学的に美しいのは「十二進法」なのに、私たちが「十進法」を使っている理由
  17. ^ 六進法旋風 0から55(十進法35)まで数える方法
  18. ^ Number Forms”. The Unicode Consortium (2015年6月17日). 2015年8月31日閲覧。

関連項目 編集