南から来た男」(みなみからきたおとこ、原題:Man from the South)は、ロアルド・ダールによる短編小説。ダールの短編集『あなたに似た人』(日本版:ハヤカワ文庫田村隆一訳)に収録されている。リゾートで恐怖に遭遇した男を描いている。

スティーブ・マックイーンニール・アダムス ヒッチコック劇場「指」(1960年)の一場面。

あらすじ 編集

「私」は、ジャマイカのプールサイドで小柄な老人と若い男に出会う。老人は若い男に奇妙な賭けを持ちかけた。男の持つライターを10回連続で着火し、一度も失敗しなければ自分の持つ高級車を譲るが、失敗した場合は左手の小指をよこせというのだ。若い男は迷ったすえ賭けに挑戦することを決め、「私」も審判役をこなすことになる。 ホテルの老人の部屋で、彼は肉切り包丁を借りてくるようメイドに頼み、慣れた手付きで若い男の左手を固定する。すぐにでも指を切り落とせる準備が整うと、若い男が着火の挑戦を始める。

8回まで成功したところで、女性が部屋にやってきて老人に詰め寄った。彼女は、老人は今までに47本の指を集め、11台の車を失い、精神病院かどこかに入れられかけたのだという。 彼女の前で生気を失った老人を前に、女はこの男は賭けるものなど何も持っていないが、かつての興奮だけを忘れられないのだと語る。車も彼女のものだというので、「私」が車のキーを渡すと、女性は長い時間をかけて老人からすべてを取り上げたのだと語る。 キーを取った女性の手には、親指ともう一本しか指がなかった。

登場人物 編集

  • 語り手。目前で行われる奇妙な賭けの立会人として巻き込まれる。
  • 若い男
    自分のライターの確実性を自慢し、逡巡したうえで老人の誘いに乗る。
  • 若い女
    男の連れ。その場に居合わせたことから、賭けに立ち会うことになる。
  • 老人
    南米なまりのある男。若い男との勝負にキャデラック(ヒッチコック劇場ではスポーツカー)を賭ける。
  • 老人の妻
    最後に登場し、衝撃の事実を語る。

映像化 編集

アンソロジーのミステリーテレビドラマで複数回ドラマ化されている。いずれも老人を往年の名優が演じる一方で、「私」は省略されている。

評価 編集

  • 1959年度エミー賞ノミネート(上記ヒッチコック劇場版)。
  • ミステリ小説オールタイム・ベスト 短編部門第1位(『ミステリ・マガジン』2007年3月号)
  • また、都筑道夫も自身が選ぶ「奇妙な味」の短編ベスト5の一本に挙げている。

参考文献 編集

  • ロアルド・ダール『あなたに似た人』(ハヤカワ文庫)