喧嘩笠」(けんかがさ)は、1966年4月15日に ビクターより発売された橋幸夫の79枚目のシングル(SV-387)で、吉永小百合との最後のデュエット曲「夢みる港」と2枚同時発売された[1]。「喧嘩笠」、B面の「紅萌ゆる」とも橋の歌舞伎座公演に合わせて制作、発売されたものである(後述)。

喧嘩笠
橋幸夫シングル
B面 紅萌ゆる
リリース
ジャンル 歌謡曲
時間
レーベル ビクター(SV-387)
作詞・作曲 佐伯孝夫(作詞)
吉田正(作曲)
橋幸夫 シングル 年表
夢見る港
(1966年4月15日)
喧嘩笠
(1966年)
汐風の中の二人
(1966年6月15日)
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概要 編集

  • 橋のシングルは、1964年8月リリースの「恋をするなら」以降、リズム歌謡や青春歌謡など現代調の楽曲の比重が増した。65年に入っても「雨の中の二人」や「夢見る港」など、現代調の楽曲が続くなかでリリースした股旅ものが本楽曲である。
  • 楽曲制作のきっかけは。3月の歌舞伎座特別公演にある。前年8月大阪新歌舞伎座での1ヶ月公演が、連日満員で成功したのを背景に、歌舞伎座特別公演が企画され、演目として「喧嘩笠」「紅萌ゆる」が制作されたことによる。
  • 「喧嘩笠」は村上元三作で、橋は大前田英五郎親分の息子になり、女から振られても追っかけ回す役どころ、「紅萌ゆる」は依田義賢作で、大正の中ごろの京都を舞台に、橋の三高生と舞妓の純愛が結ばれずに終わる悲恋メロドラマ[2]
  • 村上はこれまで小説や映画の脚本で「喧嘩笠」を書いているが、「こんどは、はじめから橋君をはめて新しく書き下ろした脚本で、小説とも映画とも違っている」と冒頭に書いている。[3]
  • この公演に合わせ、佐伯孝夫作詞、吉田正作曲で楽曲が制作された。このため、本シングルは股旅ものと現代ものとの組み合わせとなっている。
  • ジャケットには歌舞伎座公演記念と明記されている。

収録曲 編集

  1. 喧嘩笠
    作詞: 佐伯孝夫、作・編曲:吉田正
  2. 紅萌ゆる
    作詞: 佐伯孝夫、作・編曲:吉田正

歌舞伎座・橋幸夫特別公演(1965年3月1日~28日) 編集

  • 昼の部
    「舞妓哀詩 紅萌ゆる」2幕5場
    依田義賢作、巌谷槙一演出
    橋幸夫、倍賞千恵子曾我廼家明蝶霧立のぼる、坂東吉弥他
    他に橋幸夫「花のヒットパレード」、「峠ざくら」
  • 夜の部
    「喧嘩笠」3幕6場
    村上元三作・演出
    橋幸夫、三沢あけみ、市川八百蔵岩井半四郎、曾我廼家明蝶他
    他に橋幸夫「夢のヒットパレード」、「江戸っ娘気質」
  • 『日本演劇史第3巻』で「橋幸夫の歌舞伎座進出」を取り上げている。
    「橋幸夫が芝居の公演で歌舞伎座の客席を満員にさせている。橋が花道に出てくると、孫がいそうなおばあさんが夢中で手をたたき、若い女の子たちがキャーツと騒ぐ。そんなに人気があっても橋は鼻にかけたいや味がなく、演技もすなおで好感が持てる。芝居は前向きとはいえないが、娯楽作品として一応まとまっている。」「出演者はざっと百二十人、かぶきの下級俳優を惜しみなく登場させて失業救済か」としている。[4]

出典 編集

  1. ^ 「シングルレコード・ディスコグラフィティ」橋幸夫・小野善太郎共著『橋幸夫歌謡魂』ISBN 4-948735-16-7 ワイズ出版(東京)1993/6 168-209頁参照
  2. ^ 歌舞伎座宣伝部『橋幸夫特別公演』松竹演劇部(東京)1966年3月刊
  3. ^ 村上元三「橋君の芝居」『橋幸夫特別公演』前掲 1頁
  4. ^ 「橋幸夫の歌舞伎座進出」『新日本現代演劇史3巻』ISBN 978-4-12-400164-8 中央公論新社(東京)2009年10月 640頁