嗅覚受容体(きゅうかくじゅようたい、Olfactory receptors)は嗅細胞嗅覚受容神経)にあるGタンパク質結合受容体の一種である。脊椎動物ではこのタンパク質嗅上皮に、昆虫では触角に位置する。精細胞(精子)も匂い受容体を持ち、卵子を見つけるための走化性に関連すると考えられている。

ほとんどの受容体と同じく、特有のリガンドに結合するというよりも、嗅覚受容体は匂い分子の構造へ結合する。匂い物質が受容体へ結合すると、付いていた細胞内のGタンパク質を活性化する。次に、Gタンパク質がアデニル酸シクラーゼ活性してATP環状AMP(cAMP)へ変換する。cAMPはイオンチャネルを開き、ナトリウムイオンが細胞内へ入る。すると脱分極化が細胞へ起きてその活動電位へと情報を送る。

嗅覚受容体にはゲノムレベルでの差異が数多くみられ、哺乳類のゲノムにはそれが1,000ほどもある。嗅覚受容体遺伝子はゲノム中の全遺伝子の4~5%を占めている。ヒトゲノム計画での解析によると、ヒトは396の機能する嗅覚受容体の遺伝子(機能しない偽遺伝子を含めると821)を持っている。これは396種類の匂いのみを区別できるという意味ではない。それぞれの嗅覚受容体はただ一つの匂いに反応するのではなく、多くの類似した構造に反応する。また、ほとんどの匂いは一つ以上の受容体を刺激する。つまり嗅覚受容体の反応は膨大なバリエーションが存在していることを意味する。それまで遭遇したことのない分子にも複数の受容体が反応し、そのパターンを区別することで匂いを特徴づけることが可能になる。つまりヒトは396種類の嗅覚受容体を使って可能な限り多くの違った匂いをかぎ分けていることになる。このことは、さまざまな病原体分子を検知して区別する免疫システムと非常によく似ている。

2004年リンダ・B・バックリチャード・アクセルノーベル生理学・医学賞を嗅覚受容体に関する研究で受賞した。

2014年7月に東京大学の新村芳人の研究チームが発表した研究によると、調査した動物の中で最も嗅覚受容体の種類が多かったのは、アフリカゾウであり、その機能遺伝子数は1948個と、ヒトの396個、イヌの811個、マウスの1130個を大きく上回っている[1][2]

参考文献 編集

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