夜の会議[1][2](よるのかいぎ、古希: νυκτερινὸς σύλλογος: nocturnal council)とは、プラトンが最後の対話篇である『法律』の末尾で提示した、哲人王に代わる国制法律の保全策としての機構。夜間会議(やかんかいぎ)とも[3]

『法律』10巻の908Aと909Aで初めて言及され、最終巻である12巻の951D-952D、及び961A以降で詳細にその内容が述べられる。

名称 編集

名称に関わる時間帯についての記述は、10巻の908Aと909A、12巻の951D、961B、962C、968Aの計6箇所にあり、951Dと961Bで「早朝・夜明け前(ὄρθρος)」と言及される以外は、全て単に「夜(に/の)」と言及されている。

そこで岩波書店の「プラトン全集」やその文庫版(岩波文庫)などでは、951D・961Bの記述を基に、「夜明け前」という表現に翻訳を統一し、「夜明け前の会議」という呼称を用いている。

構成員と資格 編集

『法律』12巻(951D-E, 961A-B)において、「夜の会議」の構成員は以下のように説明される。

  • 護法官の中の最年長者10名
  • 監査官 (神官) 全員
  • (教育監全員 (※951D-Eにおける記述のみ))
  • 外国視察員の内、他の会員による審査で認定された者
  • 各会員がそれぞれ1人同伴できる、事前に他の会員の承認を得た、30歳以上の適格な若者


また彼らは、『国家』における「哲人王」と同じく、幾何学天文学を含む数学諸学科などの予備学を修めた上で、雑多なものから一なる形相(イデア)を導き出していく能力を養われ、また、諸天体が神々の「最善の魂」の知性(ヌース)によって動かされていることを理解して「敬神」の心を持ちつつ、国制・法律の目的である徳・善を追求・護持していける者であることが求められる[4]


彼らは、公私の用事から解放される夜(早朝・夜明け前)に会議を持つので、これを「夜の会議」と呼ぶ。そして、この会議が国家全体の「」(いかり)として投じられていれば、それが必要な条件を満たしている限りは、国制・法律を安全に保ってくれると述べられる[5]

脚注 編集

  1. ^ 「夜の会議」と法の支配 (PDF) 丸橋裕 ギリシャ哲学セミナー
  2. ^ ヴェルサンジェアンヌ・ガブリエル, 榊原健太郎, 下山大助「プラトン対話篇『法律』における≪音楽≫」『帝京科学大学紀要』第10巻、帝京科学大学、2014年、215-226頁、ISSN 1880-0580NAID 110009910981 
  3. ^ 篠原資明<論文>無常と絶対無 - 田辺元の哲学 -」『あいだ/生成』第5号、あいだ哲学会(京都大学大学院人間・環境学研究科篠原資明研究室)、2015年、1-13頁、ISSN 2185-9515NAID 120005595897 
  4. ^ 『法律』963B-968E
  5. ^ 『法律』961C

関連項目 編集