寧海(ニンハイ、Ning Hai)は、中華民国海軍水上偵察機。正式名称は辛式一型水上偵察機寧海號[1]。本項では不採用となった日本製の試作機「AB-3」についても述べる。

AB-3

AB-3 編集

1928年昭和3年)、中国海軍から日本に発注された巡洋艦「寧海」の艦載機として、愛知時計電機航空機部(のちの愛知航空機)に対して瓦斯電神風」エンジンを搭載した単座複葉の水上偵察機の開発が発注された。愛知は社内名称「AB-3」として、併行して開発されていたAB-2水上偵察機を参考にしつつ三木鉄夫技師を設計主務者として開発を進め、1932年(昭和7年)1月に試作機1機が完成した。木金混合骨組みに羽布張り双フロート、ハインケル系の設計によるAB-3は、試験飛行の結果良好な性能を発揮したが、中国海軍には制式採用されず、制作された試作機はサンプルとして中国に輸出された。なお、AB-3は愛知が初めて自主的に開発した機体だった。

寧海 編集

中華民国海軍航空工廠は、輸入したAB-3と前作である水上偵察機江鶴などの開発経験を参考にして、1934年(昭和9年)にT・T・マール技師の設計による国産水上偵察機を制作。艦載される巡洋艦「寧海」の名を取り、これも「寧海」と命名された。機体は木製骨組みに羽布張り双フロートの保守的な設計の複葉機で、エンジンはAB-3と同様に「神風」を装備。エンジンが低出力なため武装は施されていない。当初はカタパルト射出による運用を目指していたが、機体強度が不足していたためにカタパルト射出ができず、デリックを用いて水面に機を降ろしてから離水する方式が取られていた。

諸元 編集

寧海
  • 全長:7.00 m
  • 全幅:9.20 m
  • 全高:2.96 m
  • 自重:645 kg
  • 全備重量:817 kg
  • エンジン:瓦斯電 神風 空冷星型7気筒(最大150 hp) × 1
  • 最大速度:177 km/h
  • 実用上昇限度:3,700 m
  • 航続距離:673 km
  • 乗員:1名
AB-3
  • 全長:6.60 m
  • 全幅:9.00 m
  • 全高:2.88 m
  • 主翼面積:19.5 m2
  • 自重:575 kg
  • 全備重量:790 kg
  • エンジン:瓦斯電 神風 空冷星型7気筒(最大150 hp) × 1
  • 最大速度:194 km/h
  • 巡航速度:137 km/h
  • 実用上昇限度:4,300 m
  • 航続距離:702 km
  • 乗員:1名

参考文献 編集

  1. ^ 姜長英 原『中國航空史』中國之翼出版社、1993年、53,54頁。ISBN 978-9578628076 

関連項目 編集