少年時代 (井上陽水の曲)

1990年の井上陽水のシングル

少年時代」(しょうねんじだい)は、日本シンガーソングライターである井上陽水の楽曲。1990年9月21日に、自身の29枚目のシングルとしてフォーライフ・レコードからリリースされた。

少年時代
井上陽水シングル
初出アルバム『ハンサムボーイ
B面 荒ワシの歌
リリース
規格
ジャンル J-POP
時間
レーベル フォーライフ・レコード
作詞 井上陽水
作曲
ゴールドディスク
チャート最高順位
  • 週間4位(オリコン
  • 1991年度年間25位(オリコン)
  • 1992年度年間46位(オリコン)
  • 井上陽水 シングル 年表
    最後のニュース
    1989年
    少年時代
    1990年
    Tokyo
    1991年
    テンプレートを表示

    井上陽水の最大のヒット曲で、代表曲の一つに挙げられることがあり[1]1994年以降の中学校・高等学校の音楽教科書に何度も掲載されている[2]

    2008年7月16日に、原盤の内容をそのまま採用したマキシシングルがリリースされた。

    背景 編集

    制作 編集

    当初は荻野目洋子に提供したシングル「ギャラリー」のB面曲になる予定であったが、B面にしてはとても良い出来であったことと、同時期に同名映画の主題歌の話が来たため、この曲は陽水自らが歌うこととし、シングルでリリースすることになった経緯がある[3][4]。なお、荻野目のシングルのB面となったのは陽水が代わりに書き下ろした「ON BED」である[3]

    本楽曲の作曲は、飲み仲間であった藤子不二雄Ⓐから直接依頼された[3]。藤子Ⓐは「ラララ…君と出会い君と笑い」というハミングと共に始まる自作の詩を作成し[注 1]陽水に作曲を依頼したが、当初なかなかできあがって来ず、ついには映画のポスターの印刷にも間に合わない事態となった[1]。映画関係者からは矢のような催促がなされたが、藤子Ⓐは「漫画家と同じで催促されるのは嫌だろう」と陽水に対して一切催促を行わなかった[1]。そのかいもあり、陽水から上がってきたデモテープは、藤子Ⓐが事前に抱いていたイメージ通りの素晴らしい楽曲となった(ただし、藤子Ⓐが提供した歌詞は1行も使われていなかった。陽水は「安孫子さん[注 2]の心をもらった」とコメントしている。)[1]。藤子Ⓐが映画関係者からの催促を止めていた間、実は陽水は全国ツアーをキャンセルし3週間スタジオにこもって作曲を行っていた[1]

    本作を共作した作曲家の平井夏美こと川原伸司によると、本作はもともと『少年時代』として作ったわけではなく、陽水がハミングした曲をもとに15分ほどで完成していた作品に対し、川原が「あの映画のテーマはこういう曲だよね」と陽水に提案したことで採用されたという[5]

    歌詞 編集

    本楽曲の歌詞の中の季節は曲の進行によって変化し、夏を過ぎた秋のはじめの歌い出しで始まった後、2番では盛夏に戻り、最後は夏を過ぎた頃に戻る[3]。 曲中に「風あざみ」という言葉が出てくるが、これは陽水による造語で、植物のアザミが直接関係がある訳でもない。風あざみという品種は存在せず、「アザミ」は元々春の季語でもある(2番の歌詞で同じ箇所に出てくる「宵かがり」も同様に陽水による造語である)[3]。これについて陽水本人はNHKの番組(LIFE・2009年放送)で「オニアザミという言葉がふと浮かんだ時に、オニアザミがあればきっとカゼアザミもあるんだろうなと思った。もしそれが無かったとしても良い。辞書に無い言葉を歌詞に使ってはいけないという法律も無いのだから」と語っている。陽水の作品にはそのような「造語」が散見されており、教育学者斎藤孝も陽水の歌詞について、「高い音で伸ばすときは、多少詞が変になっても、ウよりもイで終わる言葉の方が、聴いている方は気持ち良い」と指摘している[6]

    パフォーマンス 編集

    ピアノは、陽水とは旧知の仲でもある来生たかおが演奏している。依頼した理由として陽水は、この曲の「どこか未完成でまだまだ上達する余地のある少年」というイメージにぴったりだったからと述べ、実際、望み通りのピアノになったと自らコメントしている[7]。1999年9月24日に行われた陽水のシークレットライヴにおいて、初めて同曲での共演が実現した。

    チャート成績 編集

    発売当初はオリコンの週間シングルチャートでも最高20位程度であったが、発売から1年経った1991年に、ソニーハンディカムCCD-TR105』のCM曲に採用されて、最高4位まで上り詰めた。その後もロングヒットとなり、1997年7月には日本レコード協会からミリオンセラーに認定された[8]。累計売上(出荷)は136万枚[5]

    フェイス・ワンダワークスが2015年に発表した、GIGAエンタメロディで15年間で最も多くダウンロードされた着信メロディを集計した「着信メロディ15年間ランキング」において20位にランクインされた[9]

    収録曲 編集

    8cmCD
    全作曲: 井上陽水平井夏美
    #タイトル作詞作曲・編曲編曲ストリングスアレンジ時間
    1.少年時代井上陽水井上陽水平井夏美
    • 井上陽水
    • 平井夏美
    星勝
    2.荒ワシの歌
    井上陽水平井夏美
     
    合計時間:

    メディアでの使用 編集

    # 曲名 タイアップ 時期 備考 出典
    1 少年時代 東宝映画『少年時代』主題歌 1990年 [10]
    ソニー『ハンディカム105』CF曲 1991年
    キリンビールCF曲 2008年 CM起用を受け、同年6月11日から「レコード会社直営♪」各サイトで(「mobile FORLIFE」は6月13日から)着うた、着うたフル、メロディーコール/待ちうたが配信された。 [11]
    健康家族 にんにく物語「土との出会い」篇CF曲 2014年 高倉健の生涯最後のCM出演であり、高倉が同年11月に亡くなって以降も高倉の所属事務所の意向で当面の間このCMが放映された。 [12]
    マクドナルド『家族といっしょに。「ピクルスのリレー」篇』CF曲 2022年 [13]
    2 荒ワシの歌 YAHATA「EAGLES」のテーマ 1990年

    収録アルバム 編集

    その他 編集

    カバー 編集

    収録作品は初出のもののみ記載する。

    脚注 編集

    注釈 編集

    1. ^ この歌詞の全文は2012年に中央公論新社から刊行された『78歳いまだまんが道を…』P.178-180に掲載されており、藤子Ⓐはこの作詞に2ヶ月を費やしたと語っている。1995年7月初版の中公文庫コミック版『少年時代』第1巻ISBN 4-12-202383-1巻末にもこの歌詞が収録されている。
    2. ^ 藤子Ⓐの本名。
    3. ^ 参加メンバーは、諏訪部順一松風雅也内田夕夜井上和彦置鮎龍太郎野島健児古谷徹KENN

    出典 編集

    1. ^ a b c d e 藤子不二雄A:「78歳いまだまんが道を…」、P.180、中央公論新社、ISBN 978-4-12-004391-8(2012年8月24日)
    2. ^ 『歌い継がれる名曲案内 音楽教科書掲載作品10000』日本アソシエイツ、2011年、70頁、593頁。ISBN 978-4816922916
    3. ^ a b c d e 小貫信昭. “言葉の魔法:第7回 井上陽水「少年時代」”. 歌ネット. 2019年7月15日閲覧。
    4. ^ 荻野目洋子のアルバム『KNOCK ON MY DOOR』のブックレットにも記載。
    5. ^ a b 作曲家の川原伸司さん「少年時代」は15分でできた日刊スポーツ、2019年4月12日11時1分。
    6. ^ 「軽くて深い井上陽水の言葉」 - Weeklyぴあ 1999年8月2日号。
    7. ^ BS2特番『スーパースターライブ「日本で一番、憂鬱でハッピーな一日」―井上陽水シークレットライブ―』(1999年12月10日放送)、NHK特番『井上陽水 secret Live 遊んであげる 今日だけ』(1999年12月26日放送)
    8. ^ 日刊スポーツ』2007年12月15日付。
    9. ^ スマホ時代に着信メロディ復活元年 GIGAエンタメロディ「着信メロディ15年間ランキング」発表 歴代No.1アーティストはEXILE、PRTIMES(株式会社フェイス・ワンダワークス)、2015年1月20日。
    10. ^ 映画 少年時代 (1990)”. allcinema. 株式会社スティングレイ. 2022年6月17日閲覧。
    11. ^ “井上陽水「少年時代」が初配信!”. CDジャーナル (音楽出版社). (2008年6月11日). https://www.cdjournal.com/main/news/inoue-yosui/19434 2022年6月17日閲覧。 
    12. ^ 高倉 健が出演する「健康家族」CM曲は?”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2014年4月23日). 2022年6月17日閲覧。
    13. ^ “マック新CM「ピクルスのリレー」に共感の声「私も母に渡してた」「リレーできず紙に包んでた」”. iza(イザ!) (産経デジタル). (2022年8月9日). https://www.iza.ne.jp/article/20220809-7E3WJQO3VRFLXP3H6XR35NVF6E/ 2022年8月10日閲覧。 
    14. ^ 「井上陽水公園」3月開園…高校時代まで住んだ福岡 - ZAKZAK、2006年2月18日
    15. ^ “柴咲コウ「続こううたう」で星野源、GAO、マイラバ、陽水ら名曲カバー”. 音楽ナタリー. (2016年6月10日). https://natalie.mu/music/news/190333 2016年6月10日閲覧。 
    16. ^ 「ヨルシカ」suisが井上陽水の名曲「少年時代」をカバー 「あの夏のルカ」日本版エンドソングに : 映画ニュース”. 映画.com. 2021年6月28日閲覧。

    外部リンク 編集

    • 井上陽水 オフィシャルサイトによる紹介ページ