少数総合的言語(しょうすうそうごうてきげんご、oligosynthetic language)、または少数総合型言語[1]:254とは、ベンジャミン・ウォーフが主張した言語の類型で、その言語の語彙を構成するほとんど全ての単語が、極めて少数の語根あるいは形態素に還元できるような言語である[1]:256f.。ウォーフは、ナワトル語マヤ語が少数総合型言語であると主張した[1]:257

ウォーフは、1928年9月の第32回アメリカニスト国際会議で、“Aztec linguistics”(アズテク言語学)と題する発表を行ない、アズテク語(ナワトル語)が少数総合型であり、その語彙は35個の語根に還元できると主張した[1]:254。また、1929年12月のアメリカ言語学会では、“Stem series in Maya”(マヤ語における語幹系列)という発表で、マヤ語も少数総合型であると主張した[1]:258。ウォーフは、1931年エドワード・サピアからイェール大学言語学の授業を受ける機会を得ているが、これ以降「少数総合型」という考え方は修正されたと見られ、書き物の中でこの概念が直接言及されることはなくなった[1]:263

上記の “Aztec linguistics” の中で、少数総合型言語の単語を構成する少数の要素について、ウォーフは次のように述べている。

これら要素はすべて、第一に、きわめて単純な一個の発音行為であり、そして第二には、この一個の発音行為に伴う一個の広い概念またはたがいに関連する概念のまとまりである。[中略]ここで注意すべきことは、この少数総合型という現象は言語心理というまだ開拓の進んでいない分野に新しい領域を開くということである。そこにわれわれが見るのは、一つの言語の概念分野全域が約三十五の基本的概念の間で分割され、共有されているということで、その結果、概念の現実の領域に関する地図ないし見取り図といったものが初めて得られるのである。概念というものをいくつかの範疇に配分するというような従来のやり方では、これら範疇は誰か哲学者の内省の結果得られたものであったが、ここで行なっている言語の概念地図はそのようなものではない。われわれは自然界の事実に達するのと同じようなやり方でそれに達するのであり、そのまだ漠然としか見て取れない構成はわれわれに実験的、機能的方法によってそれを調べようという気持ちを起こさせるのである。[1]:279f.

この考え方について、ジョン・B・キャロル(John B. Carroll)は、音象徴の考え方と、言語相対論の前触れを見て取っている[1]:280

参考文献 編集

  1. ^ a b c d e f g h i Carroll, John B. (ed.) 1956 Language, thought, and reality: Selected Writings of Benjamin Lee Whorf.(B・L・ウォーフ、池上嘉彦訳 1993『言語・思考・現実』講談社講談社学術文庫〉)