少林寺』(しょうりんじ 中国語: 少林寺; 拼音: Shàolínsì)は、1982年公開の中国香港映画。中国武術の代表格として名高い少林寺を舞台にした作品で、中国本土と当時はイギリスの植民地だった香港が初めて共同制作した映画の1つとされる[2]

少林寺
タイトル表記
繁体字 少林寺
簡体字 少林寺
拼音 Shàolínsì
(シャオリンスー)
粤語拼音 Siu3 Lam4 Zi2
英題 The Shaolin Temple
各種情報
監督 チャン・シン・イエン
脚本 シー・ホウ
ルー・シャウ・チャン
製作 チャン・マン(陳文)、梁廣建、黃應章、陳霖
製作総指揮 リェー・イェット・ユエン
出演者 リー・リンチェイ
ティン・ナン
フー・チェン・チャン
ユュー・チェンフィ
ユエ・ハイ
音楽 ファン・リ・ピン
主題歌 『少林少林』
撮影 劉鳳林
チャウ・パク・リン
編集 張鑫炎、黃庭、李毓槐、顧志慧
アクション指導 マー・シァン・ター(馬賢達)
ユエ・ハイ
パン・チン・フー(潘清福)
ワン・チェン・ハイ(王常凱)
衣装 王季平、唐乙鳳
美術 黃學年
製作会社 中原電影
配給 香港の旗 中原電影
日本の旗 東宝東和
公開 香港の旗 1982年1月21日
中華人民共和国の旗 1982年10月
日本の旗 1982年11月3日(地方は10月30日先行公開)
上映時間 100分
製作国 中華人民共和国の旗 中国
香港の旗 イギリス領香港
言語 中国語
広東語
興行収入 世界の旗 US$5,000,000
日本の旗 16億5000万円(配給収入)[1]
次作 少林寺2
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少林寺
各種表記
繁体字 少林寺
簡体字 少林寺
拼音 Shàolínsì
注音符号 ㄕㄠˋㄌㄧㄣˊㄙˋ
発音: シャオリンスー
広東語拼音 Siu3 Lam4 Zi2
英文 Shaolin Temple
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監督は張鑫炎(チャン・シン・イエン)、主演はリー・リンチェイ(現:ジェット・リー)。5年連続中国武術大会で総合チャンピオンに輝いた経歴を持つリー・リンチェイ(現:ジェット・リー)の映画デビュー作である。リンチェイの他にも、ユエ・ハイ(于海)やフー・チェン・チャン(胡堅強)などの本物の武術家を使い、すべてスタント無しで撮影された。

日本シンガポールなどでも同年に公開され、中国や香港はもとより、日本などでも少林寺・少林拳ブームを巻き起こした[3][4]

ストーリー 編集

中国・隋朝の末期、東都(現:河南省洛陽市)に帝王・王仁則将軍が、暴政の限りを尽くしていた。武術家として名高い「神腿張」は捕らわれながらも、同じく捕らわれている仲間たちを助けようとするが、逆に王将軍の返り討ちにあう。

神腿張の息子である「小虎」も父を助けようとして重傷を負いながら命からがら少林寺まで逃げのびる。少林寺の門前で力尽きた小虎は少林武僧らやタン師匠に介抱される。徐々に体力を取り戻した小虎は、水汲みを手伝っている最中に、お転婆な一人の少女と出会う。その少女は、タン師匠の娘・白無瑕だった。

少林寺では少年僧らが毎日武術の稽古に励んでいた。その様子を塀の上から覗き見していた小虎は自分もそれらの技を会得したいと考える。父親の敵を討つため、小虎も少林拳門下の弟子入りをして名を「覚遠」に変え、タン師匠(師父)の元で少林拳の修行を積んでいく。だが王将軍への復讐心が強いことから、つい力が入りすぎて練習相手を怪我させる寸前までいき和尚に注意され謹慎をくらうこともあり、ふてくされた覚遠は寺を飛び出して山の方に歩いていく。

そんな覚遠を心配そうに見上げる白無瑕の近くに乱暴な王将軍の配下たちがやってきて羊たちを殺し、怒って戦いを挑んだ白無瑕をさらっていく。城で王将軍に手ごめにされそうになっている白無瑕は危ういところを覚遠に助けられた。最初の頃は、自分の飼い犬を覚遠が間違って死なせてその犬を丸焼きにして食べたことに怒って反発していた白無瑕だったが、助けられたこともあって覚遠に恋心を抱くようになる。

再び寺に戻って山で鍛練をしていた覚遠は、王将軍の配下に追われて逃げている一人の男を救った。前にもこの男を見かけ手助けしたことがあったが、この男こそ、のちにの太宗となる李世民将軍だった。王将軍と配下たちは李将軍と覚遠をしつこく追うがまかれる。覚遠と白無瑕は李将軍を逃がすために新婚の夫婦に変装し、李将軍はお付きの女官に女装して関門を通り過ぎるが、結局気づかれてしまい、川を渡ろうとしているところで攻撃に遭う。

白無瑕と李将軍を小舟で逃がした覚遠が一人で戦っていると、少林寺の他の仲間と師父が加勢にやってくる。少林拳で敵を次々と撃退させるが、王将軍に知らせようと馬に乗って去ろうとする者を覚遠は投げ槍で殺してしまう。禁止されている殺生を行なったという名目で、師父はあえて覚遠に破門を言い渡して寺に戻ることを許さず、他の少年僧とともに寺に帰っていった。それは、少林寺に覚遠を戻せば覚遠は王将軍に捉えられ殺されてしまうと考えた師父の慈悲であった。

自分が寺にいなければ、師父たちが責められてしまうことを容易に予想がついた覚遠は責任を取ろうと、彼らのすぐ後を追って少林寺に強引に戻る。しかし、寺はやがて危うくなるため、ゆくゆくは自分の娘と覚遠を一緒にさせようと思っていた師父は、覚遠にそのことを告げて白無瑕を連れて寺からすぐに逃げるように命ずる。

覚遠と白無瑕が寺から去った後、王将軍一行らが少林寺内に強引に侵入し、李将軍をかくまって逃がした罪として攻め寄せる。管長は寺を守るために自身一人を犠牲に火あぶりの刑に処せられるが、卑劣な王将軍はそれだけでは許さずに寺の者すべてを攻撃し始めた。憤った少年僧や師父や和尚たちは、悪辣な王将軍らの殺生やむなく猛反撃を展開する。しかしすでに死んだ少年僧もあり、師父も何本もの弓矢に刺された。覚遠と白無瑕が駆け戻った時に師父は息を引き取り、今際の際に正義と少林寺を守ることを覚遠に託す。

少林寺をさらに攻めようとする王将軍の耳に李将軍の軍勢が王の城に攻め入ったという一報が入り、あわてて引返していった。師父の敵を討つため覚遠は、少林寺の仲間らと立ち上がり、城に向う王将軍を追っていく。覚遠らは李将軍の援軍も得て、死闘の末に王将軍を倒す。その後、唐が国を統一して東都に平和が戻った。

覚遠は本格的に仏門に入ることを決意し、女と交わること(白無瑕と夫婦になること)を諦める。最後に白無瑕からもらった翡翠のペンダントヘッドを大切にしながら覚遠はこれからも少林寺を守り続けることを心に誓い、頭部に6つの焼印を受ける。李将軍は13人の少年僧たちに紫の袈裟と茶器一式と領地をそれぞれ与え、僧兵を組むことも許可した。彼らは少林拳の修行を続けてその武術は広まり、後世には日本に少林寺拳法として引き継がれるなど世界に広まっていく。

キャスト 編集

役名 俳優 日本語吹替
日本テレビ DVD版
チュエン(覚遠) / ショーホ(小虎) リー・リンチェイ (李連杰) 水島裕 森久保祥太郎
タン師匠(曇宗師父) ユエ・ハイ(于海) 小林勝彦 佐々木勝彦
ワン将軍(王仁則) ユュー・チェンフィ (于承恵) 坂口芳貞 大塚芳忠
パイ(白無瑕) ティン・ナン(丁嵐) 勝生真沙子 村井かずさ
リ・シーミン将軍(李世民) ワン・クァン・チュアン(王光權) 佐々木功 堀内賢雄
ジェン和尚(僧值) イェン・ディ・ホア(閻滌華) 小松方正 池田勝
管長(方丈) ジャン・ジェン・ウェン(張建文) 松村彦次郎 大塚周夫
フサン(悟空) フー・チェン・チャン(胡堅強 池田秀一 宮本充
スーコン(色空) スン・ジェン・クイ(孫建魁) 石丸博也 松本保典
バンコン(半空) ワン・ジュ(王珏) 喜多川拓郎 置鮎龍太郎
了空 リウ・ハイ・リャン(劉懐良) 塩屋翼 伊藤健太郎
亀空 吉村よう 咲野俊介
禿鷹 チィ・チュアンホワ(計春華) 玄田哲章 相沢正輝
ヒゲ(王將) パン・チン・フー(潘清福) 蟹江栄司 飯島肇
囚人チェン(神腿張) リウ・ハイ・リャン(劉懐良) 寺田誠 山野井仁
志操 潘漢光
慧能 ヘンリー・フォン(方平)
慧因 蔣洪波
惠瑒 山崎博通
ナレーション 小林清志(劇場公開版) 納谷悟朗 千葉真一
  • 日本テレビ版:初回放送1984年10月3日「水曜ロードショー/秋の超大作 少林寺 爆発する神秘の中国武術!すべてが本物の迫力アクション巨編!!」(アルティメット・エディションDVD収録)
  • DVD版吹き替え:2005年8月3日発売のアルティメット・エディションDVD収録

その他 編集

  • 「小虎」役のリー・リンチェイを始め、ほとんどの出演者が本物の武術家でスタント無しで全篇撮影した。
  • 当時18歳のリー・リンチェイは、4年後の3作目の『阿羅漢』(1986年)の頃からフィリピンなど中国国外で上映される際、ジェット・リーという英語名をつけられ、ハリウッド映画進出以降にその英語名がグローバル・ネームとなった[4]
  • 少林僧が額につけている6つの円(戒疤)は、の時代から中国仏教に出家した者の額に焼印を施すもので、の時代には存在しない習慣である。
  • 少林拳とは違う、日本の少林寺拳法からも現・専門学校禅林学園校長の山崎博通が「恵瑒」役として出演しており、オープニングのクレジットタイトルでその名が表示されているほか、高段者がエキストラとして派遣され参加している。
  • 日本公開ではイメージソング「少林拳」が作られた(作曲:キース・モリソン)。
  • 1999年に張鑫炎監督自身の手により『新・少林寺』としてテレビドラマ化されている(ユエン・ウーピン、張之亮、鞠覚亮との共同監督)。
  • 2011年に時代を変えての新解釈でアンディ・ラウ主演、ジャッキー・チェン特別出演の映画『新少林寺/SHAOLIN』も作られた。
  • 2022年には製作40周年記念として4Kリマスター版で劇場上演された。

脚注 編集

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)410頁
  2. ^ Mannikker, Eleanor. “The Shaolin Temple”. allMovie. 2012年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月21日閲覧。
  3. ^ 「ジェット・リー・スペシャル――中国の至宝から世界のHEROへ」(ジェット・リー 2003, pp. 3–34)
  4. ^ a b 高瀬由美子「02 LIFE STORY」(デラックス 2006, pp. 31–44)

参考文献 編集

  • 浦川留; 岡本敦史; 夏目深雪 編『激闘! アジアン・アクション映画大進撃』洋泉社〈洋泉社mook 映画秘宝ex〉、2017年4月。ISBN 978-4800312020 
  • 『ジェット・リー&世界にはばたいたドラゴンたち』(Screen特編版)近代映画社、2003年10月。ISBN 978-4764881051 
  • 『ジェット・リー』近代映画社〈スクリーン・デラックス〉、2006年3月。ISBN 978-4764820678 

外部リンク 編集