屋上庭園(おくじょうていえん、英語: roof garden)は、建築物の上層部、すなわち屋上ベランダなどといった地表から離れた高所に造られた庭園のことである。

古代の屋上庭園
『バビロンの空中庭園』
16世紀オランダ人画家マルティン・ファン・ヘームスケルク油彩画新バビロニアの王都バビロンを描いた想像画であり、空中庭園を近景、バベルの塔を遠景として描いている。
近現代の屋上庭園
キューバサンティアーゴ・デ・クーバにあるカーサ・グランデ・ホテルの屋上庭園
21世紀の屋上庭園、大名古屋ビルヂング名古屋市

古くは、世界の七不思議の一つに数えられた、古代メソポタミア新バビロニア王国における「バビロンの空中庭園」が有名であるが、現代の比較的規模の大きい屋上庭園の場合、この有名な「空中庭園(英語:hanging garden)」になぞらえて「空中庭園」と雅称されることも少なくはない[1]。ただし、「屋上庭園」と違って「空中庭園」は定義されることのない名称であり、庭園の定義に適う設備を持たない空中庭園も存在する(後述)。

概要 編集

ビルなど屋根が平で屋上を持つ建築物の空間癒やしや潤いを求めて緑を置くケースは増えてきたが、従来[いつ?][どこ?]鉢植えプランターを置くだけであった。このようなものも屋上庭園であるが、さらに推し進めて、客土によって人工地盤を造り、植栽を施して造園することも珍しいケースではなくなってきた。例えば21世紀初期の日本首都圏など都市部では、ヒートアイランド現象解消の切り札としても注目を集めている。日本では1915年竣工の旧秋田商会ビルの屋上庭園が最古である。

現代の屋上庭園 編集

荷重対策 編集

建物の上に植物を植えるのに加えて、客土を加えるため、どれだけの重さが建物にかかるかを計算して植栽計画を立てる必要がある。目安としては以下のものがある。植栽当時小さくても成長した場合はこれらの人工土壌の条件は変更できないので十分な計画が必要である。

  • 地被植物(例:芝生)の場合、客土の厚さは15cm以上。必要重量は300kg/m2
  • 低木(50cm以上、2m未満の樹木など。例:ツツジサツキ)の場合、客土の厚さは30cm以上。必要重量は500kg/m2
  • 中木(2m以上、3m未満の樹木など)の場合、客土の厚さは40cm以上。必要重量は700kg/m2
  • 高木(3m以上の樹木など)の場合、客土の厚さは60cm以上。必要重量は1,000kg/m2以上。

土壌改良 編集

荷重対策の一環として比較的軽い土を使用する。また通気性、排水性、保水性などと水素イオン指数 (ph) を考慮に入れて土壌を作る。 2から4割ほど土壌改良材を入れるようにする。土壌改良材にはバーミキュライトピートモスなどがある。

_時代[いつ?]頃から、土以外の素材に根を張らせるための技術が開発されている。その例として、緑化コンクリート、吸水性ポリマーなどがある。緑化コンクリートは壁面緑化などにも使われており、吸水性ポリマーについては、屋上緑化以外にも、砂漠化対策や農業などの分野に使われている。

防水対策 編集

植物には水が不可欠であるがコンクリートが水に腐食しないように注意を払う必要がある。スラブと呼ばれる、屋根の地の部分にモルタルを塗り、防水シートを敷くなどの方法が考えられる。

給水設備 編集

給水管を埋設し、タイマーによる水遣りやスプリンクラーを使用することが考えられる。

排水処理 編集

人工地盤のため、水がたまりやすく、植物の根を腐らせる虞が高い。余分な水が速やかに排出されるように配慮が必要である。 その方法には以下のものがある。

  • 勾配をつける。
  • 排水層を設ける。
  • 排水管を埋設する。

風圧対策 編集

高木を植えた場合、土壌が軽いことや、根が浅いことから台風などの強風で抜けてしまうことが考えられる。対策としては、単一の植樹はせずに、ある程度寄せて植えることが考えられる。

屋上庭園の一覧 編集

ここでは、著名もしくは重要な屋上庭園を、時代順もしくは地域別で列記する。

近世以前の屋上庭園 編集

近現代の屋上庭園 編集

日本国外 編集

 
シンガポールにある、シティハーベストチャーチの屋上庭園
 
ニューヨークにあった、アスターホテルの屋上庭園

日本国内 編集

≪丸の内・日本橋エリア≫
≪汐留・築地・晴海エリア≫
≪赤坂・六本木エリア≫
≪浅草・上野エリア≫
≪新宿エリア≫
≪渋谷・恵比寿・表参道エリア≫
≪池袋・文京エリア≫
≪23 区その他のエリア≫

屋上庭園でない空中庭園 編集

日本の東京都にある代々木ゼミナール本部校代ゼミタワーの空中庭園[22]大阪市にある梅田スカイビルの空中庭園展望台などは空中庭園を謳ってはいるが、庭園という定義に適うような緑化空間は存在せず、「空中のやすらぎ空間」といったようなコンセプトの施設である。アクロス福岡 ステップガーデン(福岡市)や静岡文化芸術大学「創造の丘」のような屋上緑化なども存在する。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 換気所とは、換気に必要な送風機などの設備を納める施設のことで、当地では1棟のビルになっている。

出典 編集

  1. ^ 「空中庭園」『美の壺』 NHKテレビ
  2. ^ a b c 大都会の屋上で想像を膨らませる北海道の草原情景 - 空のガーデン”. (公式ウェブサイト). 札幌市 (2011年10月4日). 2012年10月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e 屋上緑化部門:屋上緑化大賞(国土交通省大臣賞)” (PDF). (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年3月). 2012年10月26日閲覧。
  4. ^ a b c 東京 屋上物語 第1回 松屋浅草”. まだある昭和ナビ(ウェブサイト). 大空出版. 2012年10月26日閲覧。
  5. ^ a b c d 屋上緑化部門:国土交通省大臣賞” (PDF). (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年4月3日). 2012年10月26日閲覧。
  6. ^ a b “三井住友海上、東京・千代田区の環境性能ビル「駿河台新館」の使用開始 都内トップクラスの環境性能ビル、三井住友海上駿河台新館が完成”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2012年5月2日). http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=308842&lindID=3 2012年10月26日閲覧。 
  7. ^ a b c 駿河台ビル・新館の緑地”. (公式ウェブサイト). 三井住友海上. 2012年10月26日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 既存建築物屋上緑化事例集 (PDF) 東京都
  9. ^ 「霞ヶ関合同庁舎3号館屋上庭園」の公開について”. (公式ウェブサイト). 国土交通省 (2012年). 2012年10月26日閲覧。
  10. ^ a b 国土交通省屋上庭園”. (公式ウェブサイト). 国土交通省. 2012年10月26日閲覧。
  11. ^ a b 松屋の沿革”. (公式ウェブサイト). 松屋. 2012年10月26日閲覧。
  12. ^ 社史編集委員会編 編『松屋百年史』株式会社松屋、1969年11月。 
  13. ^ a b 進化する、東京ドームシティ。進化させる、ミーツポート。” (PDF). (公式ウェブサイト). 株式会社東京ドーム (2007年6月). 2012年10月26日閲覧。
  14. ^ 大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  15. ^ まちと一体化する大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  16. ^ 大橋ジャンクションでつながる”. 東京SMOOTH(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  17. ^ 平成24年10月20日(土曜日) 目黒天空庭園見学会 全国初! ジャンクションの屋上に憩いの公園! - 目黒区報道ニュース”. (公式ウェブサイト). 目黒区 (2012年10月20日). 2012年11月9日閲覧。
  18. ^ 大橋“グリーン”ジャンクション”. 首都高エコ通信(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  19. ^ 相鉄グループ100年史』 相鉄ホールディングス、2018年12月、156ページ
  20. ^ 「SHOP GUIDE ジョイナスの森彫刻公園」『ジョイナス』 相鉄ビルマネジメント
  21. ^ 環境への基本姿勢”. (公式ウェブサイト). 京都機械工具株式会社 (KTC). 2012年10月26日閲覧。
  22. ^ 代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー オベリスク” (PDF). (公式ウェブサイト). 社団法人 日本建築業連合会 (2008年12月). 2012年10月26日閲覧。

参考文献 編集

関連項目 編集