幸運は勇者を好む

ラテン語の句

幸運は勇者を好む(こううんはゆうしゃをこのむ、ラテン語: Audaces fortuna iuvat英語: Fortune favours the bold)は、ラテン語由来の成句。英語の場合に勇者に相当する "bold" の部分は、"brave" や "strong" の場合もある。歴史的に英語圏の軍関係者に用いられており、現在においても個々の家系の紋章にも使用されている。

『Allegory of Fortune(幸運の寓意)』。ローマ神話の幸運の女神フォルトゥナを題材としたサルヴァトル・ローザの1658年の作品。

語源・由来 編集

「幸運は勇者を好む(Fortune favours the bold)」は、ラテン語の成句に由来し、多少、言葉は異なるがほぼ同じ意味として "ラテン語: audentes Fortuna adiuvat"、"Fortuna audaces iuvat" "audentis Fortuna iuvat"[1]などがある。特に最後のものは、ウェルギリウスの『アエネーイス』の敵役であるトゥルヌスが用いている[2]。 "Fortuna" は運、もしくはそれを司るローマ神話の女神フォルトゥナを指す。

この成句の別のバリエーションとして、テレンティウスの紀元前151年の喜劇「ポルミオ英語版」の第203行目に「ラテン語: fortes Fortuna adiuvat」が登場する[3]オウィディウスの『恋の技法(アルス・アマトリア英語版)』では、この言葉を流用した "audentem Forsque Venusque iuvat" (ヴィーナス(愛と美の女神)はフォルトゥナ(幸運の女神)のように勇者を好む)が用いられている。

小プリニウスの記録によれば、紀元79年のヴェスヴィオ山の噴火に際して、叔父の大プリニウスは、友人ポンポニアヌス(Pomponianus)の救出及び火山調査のため、艦隊を率いて同地に向かうことを決めた時、「'Fortes' inquit 'fortuna iuvat: Pomponianum pete.'(「幸運は」と彼は言った。「勇敢な者を好む。ポンポニアヌスの下に行くぞ」)」と引用している[4][5]。 大プリニウスと彼の部下たちは、最終的にこの遠征中に亡くなった。

ラテン語の「Fortuna Eruditis Favet(幸運は用意周到な精神を好む)」という言葉も使われている。フランスの細菌学者ルイ・パスツールはこんな言葉を残している。「Dans les champs de l'observation le hasard ne favorise que les esprits prepares(観察の場において、好機は用意周到な精神のみを好む)」。

元は「大胆さは行動の始まりだが、その終わり方は幸運が支配する(古代ギリシア語: Τόλμα πρήξιος αρχή, τύχη δε τέλεος κυρίη、ローマ字:Tolma prexios arche, tuche de teleos kurie)」というデモクリトスの言葉を言い換えたものの可能性がある。

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ "Audentes fortuna juvat". Merriam-Webster Dictionary. 2021年12月30日閲覧
  2. ^ P. Vergilius Maro, Aeneid” (ラテン語). 2022年6月12日閲覧。 “Audentis Fortuna iuvat, Fortune will help the brave, Fortune befriends the bold”
  3. ^ P. Terentius Afer (Terence), Phormios” (ラテン語). 2022年6月12日閲覧。 “Fortes fortuna adiuvat, fortune helps the brave”
  4. ^ Pliny the Younger, Letters” (ラテン語). 2022年6月12日閲覧。
  5. ^ Translating Pliny's letters about Vesuvius, pt. 6. Fortune Favors the Brave” (2013年1月1日). 2022年6月12日閲覧。