引き回し(ひきまわし)は、BDSMプレイの一種で、パートナーが緊縛などを施した相手を強引に連行し、屋内や屋外をむりやり歩かせる行為。

概要 編集

責め手が自由を奪った相手に、厳しい言葉での恫喝や鞭などの道具を用いた威嚇とともに命令を下し、心身双方の意味で支配下に置きながら、囚人(女囚)のように責め手が望む方法や場所へと歩かせる行為である。これによって責め手は性的な支配感、征服感、優越感などを満喫できる。一方、ある種の被虐者にとっては、そんな状況にあって自由を奪われた当人のやりきれなさや屈辱感、羞恥心などが性的な快感へと転化していく。被虐者を囚人や奴隷に見立てた、イメージプレイの趣も大きい。

さらに引き回しの大きな興趣のひとつは、日常的な空間、あるいは未知の場へマゾヒストがサディストによって強引に連れ込まれるというもので、これは前者と後者では大きく意味合いが異なる。

前者の場合は、たとえば緊縛された丸裸の女性が、家族が留守中の自宅の各部屋へと引き回されることで、日常の生活の場が、かなり特殊な性行為の場へと実質的に変化するという緊張感と背徳感などがそこに芽生える。一方、未知の場で引き回される後者の場合は、それまで被虐者がいまだ足を踏み入れたことのないプレイルームやラブホテルなどの中に強引に連行されることでの不安や恐怖が生じ、それが転じて性的な興奮やある種類の快楽に転じる場合もある。

屋内での引き回し 編集

被虐側の自宅などの場合 編集

前述通り、責め手、被虐者ともに、日常の場が非日常的な性行為の場に変わるという刺激的な興趣が生じる。

例えば不倫中のマゾヒストの人妻が、家族の留守中、自宅でサディストの恋人と本プレイを実践する場合など、丸裸を緊縛された不自由な姿で居間、台所、夫の書斎、子供部屋などといった通常は性行為とまったく無縁の場に順々に引き回される例がある。この場合は、日常空間との対照を意識した非日常的な緊張感、また被虐者の家族たちへの罪悪感や家庭への冒涜の念などが、責め手と被虐者双方にとっての背徳的な性的興奮へと転化されていく。また上記のような条件の中で、被虐側が、きわめてプライベートな場である夫婦の寝室や、トイレバスルームなどへ連れ込まれる場合には、さらに違った種類の背徳感が生じる。

なおこうした日常空間での引き回しは、被虐者の自宅などに限らず、当人の勤務先の会社あるいは在籍する学校・塾といった場などでも、同様あるいはそれ以上の性的な快楽・興趣が生じるを場合もある。ただし他者が管理・所有する空間への無断侵入は犯罪であるので、現実には慎まなければならない。

外部の施設内などの場合 編集

複数の部屋を利用できるラブホテルの室内、あるいは被虐側が連れ込まれた責め手の自宅や専用プレイルームなどでも引き回しは行える。こちらは被虐者当人の日常の場を冒涜する意味での背徳感は薄いが、該当する外部の施設や屋内に初めて連れ込まれたときや、新規のSM設備を準備した空間に連衡させられるシチュエーションなどでは、未知の場や運命のなかに引きずり込まれる被虐者の不安や恐怖が、責め手と被虐者双方にとって、性的な興奮に通ずる場合もある。

屋外での引き回し 編集

深夜などに、山間の路上や人気のない海岸といった屋外を引き回すもの。羞恥プレイの趣が強くなるものである。漫画などの二次元作品では人気のある街中の場合もある。

関連項目 編集

  • 被虐の契り(ヒロインの女子大生:が、放課後、サディストの恋人によって、彼がそれまで秘密にしていたSMプレイルームであるマンションの複数の部屋の中を、丸裸を緊縛された姿で悶え泣きながら引き回される。千草忠夫の中篇SM小説。)
  • けんぷファー(紅音:主人公の男子ナツルを変態だと勝手に認定。ナツルが別のメインヒロイン・雫を素っ裸にして緊縛し、夜の公演を引き回し、ビデオ撮影まですると主張する。雫はそう聞いてちょっと動じるものの、すぐに、ナツルがそう望むなら自宅の近くの静かな公園でやりましょう、と応じようとする。築地俊彦ライトノベル
  • 茶濁(深川 夏帆、麦倉 智花:気が強く曲がったことは許せない性格の夏帆は不良に平然と食ってかかり報復として智花と共に路地裏で衣服を全て没収され赤いハイレグ水着姿で街中を引き廻される。智花は夏帆と共に下校中に巻き添えで衣服を没収される。しかし水着を一人分しか用意していなかった不良達は夏帆への見せしめとして無関係の智花を全裸で引き回す事に決定した。 )