性腺刺激ホルモン放出ホルモン

性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH)はFSHLH下垂体前葉から分泌させるペプチドホルモンである。これは視床下部で合成、分泌される。

GNRH1
識別子
記号GNRH1, GNRH, GRH, HH12, LHRH, LNRH, gonadotropin releasing hormone 1, Gonadotropin-Releasing Hormone
外部IDOMIM: 152760 MGI: 95789 HomoloGene: 641 GeneCards: GNRH1
遺伝子の位置 (ヒト)
8番染色体 (ヒト)
染色体8番染色体 (ヒト)[1]
8番染色体 (ヒト)
GNRH1遺伝子の位置
GNRH1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点25,419,258 bp[1]
終点25,424,654 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
14番染色体 (マウス)
染色体14番染色体 (マウス)[2]
14番染色体 (マウス)
GNRH1遺伝子の位置
GNRH1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点67,982,630 bp[2]
終点67,986,888 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 ホルモン活性
gonadotropin hormone-releasing hormone activity
gonadotropin-releasing hormone receptor binding
細胞の構成要素 axon terminus
細胞体
Golgi-associated vesicle
細胞外領域
neurosecretory vesicle
樹状突起
ミトコンドリア
neuron projection
cytoplasmic side of rough endoplasmic reticulum membrane
細胞外空間
生物学的プロセス negative regulation of immature T cell proliferation
response to prolactin
negative regulation of neuron migration
response to potassium ion
有機環状化合物への反応
response to testosterone
発情周期
female pregnancy
細胞間シグナル伝達
ステロイドホルモンへの反応
老化
response to peptide hormone
negative regulation of apoptotic process
male sex determination
多細胞個体の発生
response to prostaglandin E
リポ多糖への反応
コルチコステロイドへの反応
遺伝子発現調節
ovulation cycle
response to ethanol
regulation of ovarian follicle development
シグナル伝達
negative regulation of cell population proliferation
regulation of signaling receptor activity
Gタンパク質共役受容体シグナル伝達経路
生殖
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001083111
NM_000825

NM_008145

RefSeq
(タンパク質)

NP_000816
NP_001076580

NP_032171

場所
(UCSC)
Chr 8: 25.42 – 25.42 MbChr 8: 67.98 – 67.99 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

遺伝子 編集

GnRH前駆体の遺伝子は第8番染色体に位置する。この前駆体は92のアミノ酸からなり、デカペプチド(10のアミノ酸)のGnRHへ加工される。

構造 編集

GnRHの姿は1977年ノーベル賞受賞者のロジェ・ギルマンアンドリュー・ウィクター・シャリーにより次の様に明らかにされた:pyroGlu-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly CONH2.

神経ホルモンとしてのGnRH 編集

GnRHは特定の神経細胞で産生され、その神経末端から放出される神経ホルモンと考えられている。視床下部のGnRHの産生の主要エリアは視索前野で、そこに殆どのGnRH分泌ニューロンが含まれている。GnRHは正中隆起の高さで門脈血流へ分泌され、性腺刺激ホルモン産生細胞の膜上にある受容体を活性化させる。GnRHはタンパク質分解によって数分の内に分解される。

FSHとLHのコントロール 編集

下垂体ではGnRHはFSHとLHの合成と分泌を刺激し、その過程はGnRHパルスの頻度と強さ、それからアンドロゲンエストロゲンフィードバックである。GnRH分泌には性差が存在し、男性ではGnRHは一定の頻度で分泌されるのに対し、女性では月経周期によってその頻度が異なり、排卵前にGnRHが急激に高まる。GnRHの拍動性は全ての脊椎動物において見られ、正しい生殖機能を確実にするのに不可欠である。従ってではホルモンであるGnRHが単独で卵胞成長、排卵黄体の保持という複合した過程、そしてでは精子形成をコントロールする。

活性 編集

GnRHの活性は子供のうちは非常に低い。繁殖年齢ではパルス活性は複数のフィードバックによりコントロールされた順調な繁殖機能へ重大な意味をもつ。しかしながら、妊娠するとGnRH活性は要求されなくなる。パルス活性は視床下部・下垂体どちらかでの不全(即ち視床下部抑制)または器官の傷害(外傷腫瘍)により乱される。プロラクチンの上昇によりGnRH活性は低下する。対照的に高インスリン血症ではパルス活性を上昇させ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で見られる様なLHとFSHの活性の障害へ導く。GnRHの形成はカルマン症候群では先天的に存在しない。ドーパミンはGnRH活性を低下させるらしい。

他の器官でのGnRH 編集

GnRHは視床下部と下垂体以外の例えば胎盤性腺にも見られ、そこでの役割はよく判っていない。

処方 編集

GnRHはゴナドレリン塩酸塩(Factrel)として注射して使われる。研究によって、これが注入ポンプシステムを通して視床下部性性腺機能低下症の患者へ排卵を誘発させる事が明らかになった。

アゴニスト(作用薬)とアンタゴニスト(拮抗薬) 編集

GnRHが合成され手に入るようになった一方で、短い半減期の所為でそれを医療へ用いるには注入ポンプを要する。GnRHのデカペプチド構造の改変により性腺刺激ホルモンへ刺激(GnRHアゴニスト)または抑制(GnRHアンタゴニスト)の作用をする類似体の薬物に行き着いた。重要なことに、ダウンレギュレーションを通してアゴニストはまた延長された抑制効果を行使することができる。

脚注 編集

  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000147437 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000015812 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference: