成層圏プラットフォーム

成層圏プラットフォーム(せいそうけんプラットフォーム)とは、成層圏飛行船ソーラープレーンなどの航空機を利用して、成層圏にあたる高度約20キロメートルの高さに常駐する通信用空中プラットフォームである。主に通信放送への活用を目的に研究開発が行われている。

概要 編集

今日の無線局は地上の設備もしくは人工衛星に搭載する形で設置されている。地上に設置した場合は周辺の障害物の影響を受けやすくサービスの提供できる範囲が限られてしまい全国に膨大な数の中継局を設置する必要があるという欠点があり、人工衛星を利用した場合は電波強度が非常に小さくなりパラボラアンテナなど比較的大型な受信設備が必要になる、遠距離との通信である為にタイムラグが生じるという欠点を抱えているが、成層圏プラットフォームを用いた場合には高度20キロメートル程度の上空に無線局を設置するため、サービスの提供範囲を半径数十キロメートルから百数十キロメートル程度確保しつつ電波強度を十分確保できるため簡便な受信装置でサービスを提供することができるという利点がある[1]

日本では、1998年から2005年まで気球を用いた形式での開発が行われ、1999年からはミレニアム・プロジェクトのひとつとなり総務省情報通信研究機構)、文部科学省航空宇宙技術研究所海洋研究開発機構)などの組織を横断しての研究開発がおこなわれた。JAXAおよびNICTで2種類の試験機が開発され、2003年には高度16キロメートルまでの上昇、2004年には全長68メートルの試験機で高度4キロメートルでの定点滞空を実証したものの、同時期に地上通信網が整備されたため通信基地および中継基地としての可能性が極めて低いと判断されプロジェクトは終了した。[2]

一方で2019年にはソフトバンクから航空機型の成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」の事業化が発表されており[3]、国内の成層圏プラットフォーム事業の流れは完全に途切れたわけではない。また海外でもアメリカルーン社によって気球を用いたインターネット提供事業が展開されている[1]他、韓国中国でも研究が始まっており[4]成層圏の利用は拡大傾向にある。

2021年1月21日、気球を利用した通信プラットフォームの構築を進めていたアメリカ、アルファベット傘下のルーンLCCは企業の解散を発表した。同社は「商業的実用化までの道のりが予想よりもはるかに長く、リスクが高いことが証明されたため」としている[5]。これまでの研究成果はアルファベットが行っている光線による通信網の構築を行うプロジェクト「Taara」などに引き継がれてゆく[6]

脚注 編集

  1. ^ a b ソフトバンクが成層圏に挑戦する理由 − 無人飛行機で成層圏に基地局を。「HAPS」”. ソフトバンクニュース (2019年8月26日). 2020年2月16日閲覧。
  2. ^ 平成29年度版日本の航空宇宙工業” (PDF). 一般社団法人日本航空宇宙工業会. pp. 152-153 (2017年3月31日). 2018年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月24日閲覧。
  3. ^ ソフトバンク、成層圏から通信ネットワークを提供する航空機を開発 - ソフトバンク
  4. ^ 三浦龍; 大堂雅之「成層圏プラットフォームを用いた無線通信システム」(PDF)『通信総合研究所季報』第47巻、第4号、情報通信研究機構、42-43頁、2001年12月。ISSN 09149279NCID AN10098304https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/kihou-vol47no4/toku3-2-1.pdf2020年2月16日閲覧 
  5. ^ Alphabet傘下の気球ネット企業Loon、解散”. ITmedia NEWS (2021年1月22日). 2021年3月27日閲覧。
  6. ^ Alphabetが成層圏気球によるインターネット接続プロジェクトLoonを閉鎖”. TechCrunch Japan (2021年1月23日). 2021年3月27日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集